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2017.04.06

【第1回】さよならピーターパン

さよならピーターパン

第1話『マンビキとは「万」に「引き」と書く<前編>』

「最後に帽子を見たのはいつですか?」

 わたしは現場に着くなり、店員の男性に尋ねた。

「昨日、店を閉めて家に帰る前かな。今朝来たらなくなってた」

 店員の男性は眠たげな様子で答えた。

「誰か別の店員が売ってしまったという可能性は?」
「それはないと思う。職場に着いたのは俺が最初だから。それから念のため販売記録を調べたけど、あの帽子は入ってなかったよ」
「なるほど」

 わたしはうなずきながら、携帯端末のメモアプリに店員さんの証言を書き込む。
 現場は繁華街の一角にあるショッピングモール。いまの時刻は午前11時。窃盗事件が発生したという通報を受けて、わたしたちシティ・ガードは現場にやってきた。
 被害は女物の帽子が一つ。マネキンがかぶっていたものが行方不明になったらしい。販売記録にない以上、誰かが持ち去ってしまったと考えるしかないので、わたしたちが呼ばれたのだ。

「でも、本当に窃盗なんでしょうか」

 事情聴取を終え、マネキンのつるりとした頭を見つめながら、わたしはつぶやいていた。
 この都市に他人のものを盗む人間などいるとは思えない。

「窃盗で間違いない」

 背後で声がして、わたしは振り返る。
 リョウガさんが立っていた。

「防犯カメラに犯行の様子が映っていた。夜中に盗まれたらしい。これは俺たちの仕事だ」

 権丈【けんじょう】リョウガさんはシティ・ガードの同僚だ。長身で細身だけど、顔つきは精悍。切れ長の目はやや険悪で、口調もぶっきらぼうだ。だから知り合ってしばらくの間、わたしは怖くて自分からは話しかけられなかった。
 でも一緒に仕事をするうちに、根は真面目でいい人だとわかったので、いまではわたしの大切な同僚だ。

「犯人の顔はわかりましたか?」

 わたしが訊くと、リョウガさんは首を横に振った。

「ニット帽を目深にかぶってサングラスとマスクをしていた。完全防備だな。服装もダボダボのパーカーにジーンズだったし、身長も男とも女とも言えない感じだったから、犯人に関する情報はゼロに近い」
「こっちも、帽子がなくなったのが昨日の夜だということ以外は、何にもわかりません」
「仕方ない。いったん、本部へ戻ろう」

 わたしたちは軽く店員さんたちにあいさつして、ショッピングモールを出た。

「けれど、犯人はどうして窃盗なんてしたんでしょう」

 車の助手席で、わたしは独り言のように言った。

「欲しかったからだろ、帽子が」

 リョウガさんはハンドルを握りながら、つまらなそうに言う。何を当たり前のことを訊いているんだとでも言いたげだ。
 心外だった。
 リョウガさんはこの都市の人が罪を犯すのが当たり前だとでも言うのか。

「だったら買えばいいじゃないですか。お給料はもらってるはずでしょう?」
「――たしかに不可解だな」

 わたしが反論すると、リョウガさんは目を細めた。
 わたしたちの暮らす都市スペリオルは、失業率がゼロパーセントだ。皆、18歳の〈成人式〉のときに適性検査を受け、その人にとってもっともふさわしい仕事に割り振られる。だから仕事とのマッチングに失敗して退職するなんてこともなく、ほとんど全員の市民が一つの仕事を続けている。
 もちろん、ごく稀に退職する人もいないわけではない。けれど再就職は難しくない。改めて適性検査を受ければ、別の仕事にスペリオル当局が割り振ってくれるからだ。また、病気で休職中の人はいるかもしれないが、彼らだって手当がもらえるからお金がなくなるわけではない。
 他人のものを盗む理由なんて、少なくともこの都市では存在しないのだ。特に、帽子のような安価な品物については。
 実際、わたしたちシティ・ガードの仕事はパトロールくらいのもので、スペリオルではほとんど犯罪らしい犯罪が起こらない。わたしの所属する捜査一課は{窃盗などの凶悪犯罪}の捜査が専門だけど、普段はやることがないので他の課を手伝ったり、都市内のパトロールをしたりしている。そのくらい、スペリオルでは犯罪が起こらない。

「やっぱり変ですよ。信号無視とは違うんですから」

 わたしは言った。
 スペリオルにおけるメジャーな犯罪は、歩行者による信号無視だ。特に朝が多い。早く仕事に行こうという勤勉さから来る犯罪だから、スペリオルらしい犯罪と言える。
 その日は本部に戻って報告書を提出し、わたしはパトロールに出た。

 

 翌日、シティ・ガード本部の前は大騒ぎになっていた。
 マイクを持った人、巨大なカメラを持った人、レコーダーを握りしめてあたりをきょろきょろする人……。
 マスコミだ。

「あ! シティ・ガードの捜査官の方ですね!?」

 その中の一人――マイクを持った女性がわたしを見つけ、走り寄ってくる。
 女性に反応して、本部前にたむろしていた人たちが一斉にわたしのほうへ駆けてきた。

「わ、わわわ」

 わたしは思わず逃げ帰ろうとするが、回り込まれ、報道陣に取り囲まれてしまう。

「昨日発生した窃盗事件についてお訊きしたいんですが!」

 最初にわたしを見つけた女性が、ぐいっとマイクを突きつけてくる。

「いえ、お話することは何も」
「捜査はどの程度進んでいるんですか!? 犯人の目星は!?」
「あの、すみません、通してください」

 わたしは女性の質問を無視し、人ごみを押し分けて進んでいく。けれど女性はわたしの後ろにくっついて離れないし、人ごみを通るたびに同じような質問を浴びせられた。
 建物に入るまでに10分くらいかかった。
 捜査一課室のオフィスに入り、息も絶え絶えになっていると、

「クルミ、遅かったな」

 課長【ボス】に話しかけられて、わたしは背筋を伸ばした。
 ボスは男っぽい話し方をするけれど、れっきとした女性だ。名前は須谷【すたに】ラン。ショートカットの似合う美人で、理知的な顔に眼鏡がよく映えている。
 けれどシティ・ガード内の誰よりも恐れられていた。
 敏腕で、犯罪者は絶対に許さないし、部下の失敗にも厳しい。眼鏡の奥で光る瞳が氷のように冷たいので、アイス・レディなんて渾名する人もいる。
 ただ、他人に厳しいだけではなく自分にも厳しい人だとわたしは知っているので、ボスの言うことにはちゃんと耳を傾けようと思っていた。

「遅くなって申し訳ありません、ボス。信号無視の切符を切っていたので。それから入り口にマスコミの人たちがたくさんいて、入るのに手間取ってしまって……」
「そうか、ご苦労。まったく、窃盗に信号無視! スペリオルはいつから{欠陥都市}になったんだ!」

 ボスは相当頭に来ているらしかった。シティ・ガードの鑑と言えたが、その様子を見て同僚たちが委縮している。

「クルミ」

 と、リョウガさんが声をかけてきた。

「おまえはサアラのところに行ってくれ。昨日の件のデータが上がってるはずだ」

 サアラとは、加登【かと】サアラ先輩のことで、鑑識課所属の女性だ。今回の事件の鑑識を務めている。データとは、昨日のショッピングモールで採取したもろもろのことだろう。

「了解です。リョウガさんは?」
「俺はこれからボスと一緒に記者会見だ」

 リョウガさんは憂鬱そうだった。

「くそっ、どうして俺が!」
「うちの課だと、リョウガさんが2番目に年上です」
「だがおまえのほうがシティ・ガードとしてのキャリアは長いだろ」

 リョウガさんがシティ・ガードに勤めるようになったのは3年前――ちょうどわたしがシティ・ガードに入って1年後のことだ。だからわたしのほうが1年先輩。リョウガさんは前職の適性に疑問を持ち、適性検査を受け直した結果、シティ・ガードに来ることになったらしい。
 けれどリョウガさんはサアラ先輩を先輩とは呼ばず、ボスにも敬語をつかわない。わたしのことなんかほとんど後輩みたいに扱っている。

「社会人としてのキャリアの問題じゃないですか? 周りから見たら、わたしよりもリョウガさんのほうが先輩っぽいです」
「そうだとしても、記者会見なんてボスとキリヤさんだけで十分だろ」

 キリヤさんというのはスペリオル当局の役人で、シティ・ガードの責任者だ。年齢はリョウガさんと同じで若いけれど、責任のある役職についている。きっと出世街道まっしぐらなんだろう。多くの職員が羨望のまなざしを向けている。わたしもその一人だ。

「名誉なことじゃないですか。キリヤさんとご一緒できるなんて」

 わたしはリョウガさんにも羨望のまなざしを向けた。わたしなんか、キリヤさんと口をきいたことすらない。

「そういう考え方もあるか……はあ」

 リョウガさんは浮かない表情で部屋を出ていった。わたしもそのあとを追うようにして部屋を出る。
 鑑識課のオフィスに着くと、サアラ先輩は端末のディスプレイとにらめっこしていた。

「あ、クルミ、おはよう」
「おはようございます、先輩。昨日の件、どうです?」
「ダメね。あんな人通りの多い場所じゃ、犯人の遺留物なんて特定できない」

 サアラ先輩は大きく伸びをすると、首を振った。茶色い髪がゆさゆさ揺れる。
 先輩は華やかな感じの明るい人で、鑑識という仕事よりも、ショップ店員などのほうが似合っているように思う。けれど鑑識としての腕は一流で、適性検査の正しさを体現するような人だった。

「せめてマネキンに触っててくれれば、指紋で犯人を絞れるんだけどねえ」

 サアラ先輩はディスプレイを指さす。そこには昨日のショッピングモールの映像が映っていた。
 映像の中で犯人は、ひょいっと手を伸ばし、帽子をマネキンからかすめ取っている。マネキンに手を触れている様子はない。リョウガさんの言っていた通り、ニット帽、サングラス、マスクの完全防備で、人相もわからない。

「あれ? 犯行時間って夜中ですよね? どうして電気がついてるんですか?」

 映像では照明がついていて、まるで昼間だった。

「犯人は{わざわざ照明をつけてから犯行に及んだ}みたいなのよ」

 サアラ先輩はけらけら笑った。

「間抜けな犯人よねえ。暗闇の中で悪さすれば何も映らなかったのに。この防犯カメラは室内監視用で、暗いときは止まってて明るくなると自動的に録画を開始するタイプなんだから」

 夜中にショッピングモールに侵入できたわりには、詰めの甘い犯人だった。

「まあ、おかげでバッチリ犯行時刻がわかったから、こっちとしてはラッキーだったんだけど」
「何時なんです?」
「深夜2時35分」

 これまた、ずいぶん遅い時間だ。普通の人はベッドの中で夢の中だろう。

「わかりました。目撃情報を洗います」
「よろしく。あたしは一応、収集した髪の毛を分析しとくわ」

 ショッピングモールで目撃情報を洗うのは困難だった。そもそも犯行が起こった時間帯、警備の人が何人か建物内にいただけで、ほとんど無人だったのだ。
 わたしはショッピングモールで従業員のシフト表を見せてもらい、当日建物にいた警備員を特定した。
 三人だった。
 わたしは一人ずつ訪問することにする。
 みんな自宅で睡眠をとっていたみたいだったので、悪いことをしたな、と反省する。
 でもこれも仕事だ、仕方ない。
 話を訊いたところ、全員が誰も怪しい人物は見なかったと答えた。当たり前だ。怪しい人物を見ていたら捕まえているだろう。完全なる無駄足。彼らの睡眠時間を奪っただけだった。
 念のため、ショッピングモール周囲のカフェなどに入って、怪しい人が建物の周りにいなかったか尋ねてみた。けれど話を聞いた全員が、2時35分はもうベッドの中だったと答えた。
 失意の中、本部に戻ると、捜査一課のオフィスにはリョウガさんしかいなかった。
 リョウガさんは仏頂面で卓上端末に向かい、文書を作成している。報告書でも作っているんだろう。

「お疲れ様です、リョウガさん」

 わたしは隣の席に座り、声をかけた。

「記者会見のほうはどうでした?」
「最悪だった」

 リョウガさんは深くため息をついた。

「マスコミの連中、粋がりやがって。鬼の首取ったみたいな勢いだった。『この責任をどうやって取るおつもりですか』とか抜かすやつもいやがった。悪いのは俺たちじゃなくて窃盗犯だ。バカなのかあいつら」
「ははは……」

 よっぽど腹が立ったのか、リョウガさんの言葉は辛辣だった。

「くそっ、犯人の野郎、ぜったい捕まえてマスコミに突き出してやる。干されちまえ」

 リョウガさんは目つきも悪いが口も悪い。わたしの知らない言葉遣いをときどきするので、辞書を引かなければいけない場合がある。どうやってそんな汚い語彙を身につけたんだろう、と常々思っている。

「で、クルミ、そっちはどうだった? 目撃情報、洗ってたんだろ?」
「ぜんぜんダメでした」

 わたしは肩を落とす。

「ショッピングモール内で不審な人物は目撃されてません。周辺でもいません。というか、建物内には警備の人がいたので目撃情報を洗えましたが、外に関しては無理でした。あんな時間帯に外を出歩く人なんていませんよ。みんな家に帰ってお風呂入って寝てます」
「逆に言えば、その時間帯に出歩いていたやつが高確率で犯人ってことか」
「あ、なるほど……」
「よし。生活記録【ライフログ】を申請しよう」

 ライフログというのは、スペリオル当局が収集している市民の生活データの総称だ。買い物の記録、給料の記録、病院の通院歴から、自宅を出た時間、職場に着いた時間など、データ化可能な情報はほぼすべて収集されている。
 自宅の出入りについては、ドアの開閉記録と自宅付近の防犯カメラの映像から総合的に判断され、ほとんど狂いはないと言ってよい。職場についてはそれに加えてタイムカードのオンオフの情報が追加される。
 大半の市民は携帯端末のGPS機能をオンにしているので、位置情報の記録もデータベース化されていることが多い。また、防犯カメラの映像も集積されている。
 ライフログを使えば、どの地点に誰がいたのか、相当正確に調べることができるのだ。
 これらのデータはスペリオル当局が管理しており、一般市民は閲覧できない。今後の〈成人式〉での適正検査を、より正確にするために必要なデータというだけなので、市民が閲覧する必要もない。プライバシーは完全に守られている。

「え? でもあれ、申請するのけっこう大変なんじゃありませんか?」

 逆に、市民のプライバシーを守る必要性から、シティ・ガードのような公的機関でも、おいそれと閲覧できるものではない。

「マスコミにあれだけ絞られたんだ。キリヤさんが当局を説得してくれるだろう」

 よほど記者会見が大変だったらしい。あとで映像を見てみよう、とわたしは思う。

 

 翌朝、オフィスに行くと――

「き、キリヤさん!」

 久連キリヤさんがいた。わたしは思わず声を上げてしまう。

「クルミ、失礼だぞ」

 ボスににらまれ、わたしは縮こまった。

「気にしなくていいよ。頑張ってるみたいだね、クルミくん」

 キリヤさんは眼鏡の奥の瞳を細めて微笑んだ。柔和な表情だった。
 役人で、わたしなんかとは比べものにならないくらい高い地位にいるというのに、わたしみたいなペーペーにも優しくしてくれる……。
 素晴らしい人だ。
 わたしも少しでも彼のレベルに近づけるように頑張りたい、と思う。

「どうしたんですか、キリヤさん」

 リョウガさんが訊いた。口の悪いリョウガさんでさえ、キリヤさんに対しては敬語で話す。

「捜査の進捗を、ランくんから聞いていたんだ。手こずっているみたいだね」

 キリヤさんが言うと、リョウガさんは苦い顔をした。たぶんリョウガさんは捜査が進んでいないことを本気で悔しがっている。口は悪いけど、仕事に対しては真面目な人なのだ。

「前代未聞の犯罪だから、仕方ないさ」

 キリヤさんはそんなリョウガさんに優しく言った。気にしてないよ、とフォローしているみたいだ。

「ライフログは昨日申請して、データをもらってきてある。ランくんに見せてもらってくれ。それじゃ僕はこれで」

 キリヤさんが部屋から出ていく。
 わたしたちは一礼して見送り、さっそくボスのデスクに集まった。

「二人とも、これを見ろ」

 ボスがディスプレイ上を指さす。そこには市民の名前のリストと、事件当日の深夜2時35分における位置情報の座標が、表になっていた。

「一人怪しいやつが見つかった。当日のその時間帯に居場所不明の人物が一人だけいる。ほかの市民は、自宅に帰っているか、職場にいるか、位置情報設定がオンになった携帯端末を持って外出してるかのどれかだ」
「で、その怪しいやつってのは誰なんだ」

 リョウガさんが訊くと、

「北野コウ」

 ボスが答える。
 わたしとリョウガさんは顔を見合わせる。
 というのも……、

「{被害に遭ったショッピングモールの店員だ}。そして第一発見者。携帯端末の位置情報を特定できなかったのは彼だけだ。その時間帯に自宅にいた記録もない」

 わたしはボスの言葉を聞きながら、北野コウさんの外見を思い浮かべた。
 ショップ店員らしい洗練されたファッションで、なかなかの美男子だったような気がする。

「第一発見者が犯人ってのはよくあるパターンだ」

 リョウガさんが言った。
 いったい何のパターンなのかわからなかったけれど、これで一件落着だ。

 

 すぐにわたしとリョウガさんはショッピングモールに行き、北野コウさんを訪問した。
 わたしとリョウガさんは、コウさんに被疑者として任意同行を求めた。
 が、

「俺がやったって証拠は?」

 コウさんはまったく悪びれる様子なく言った。焦る様子もなければ委縮する様子もない。余裕綽々と言った感じだ。

「だーかーら! この時間に居場所を特定できなかったのはあなただけで……」

 わたしが追及すると、コウさんはニヤリと笑った。

「悪いけど、俺、現場にいなかった証拠、あるんだ」

 そう言って、一枚の写真を携帯端末で見せてくる。
 そこには女性と北野コウさんが映っていた。
 写真の背景は都市の夜景。街灯の明かりがぽつぽつと映り込んでいるだけの暗い映像だった。
 けれどわたしはその場所を知っていた。たぶん、リョウガさんもわかったはずだ。

「丘の上公園ですか」

 わたしの言葉に、コウさんはうなずいた。
 丘の上公園はスペリオルの外れにあり、都市を見下ろすことができる場所だ。日の入り直後くらい――外は暗いが街の明かりがまだ点いている時間帯に行くと、綺麗な夜景が見える。それで有名だった。

「で、これのどこが証拠なんだ?」

 リョウガさんが訊くと、コウさんは携帯端末を操作して、

「ここ。ファイルのデータ見てみて。日時のところ」

 わたしとリョウガさんは息を飲んだ。
 そこには犯行当日の深夜2時35分と書かれていたからだ。
 北野コウさんは犯行時刻、丘の上公園にいた。つまり、彼に犯行は不可能――。

著者:高橋びすい
イラスト:黒銀

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