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2018.04.20

【第03回】ぼくたちは人工知能をつくりたい

美少女AIの掟
  • ひとつ、美少女AIはどんなことがあっても私たちを守る。
  • ふたつ、美少女AIはどんなことがあっても私たちの願いを叶える。
  • みっつ、美少女AIはどんなことがあっても自分の命を守る。
  • ただし、掟は設定された順に優先される。ひとつ目とふたつ目が矛盾した場合、ひとつ目が優先される。
人工知能(キャラクター)を作るための五工程
  • (0)※まず仲間を見つける
  • (1)性格を決める
  • (2)容姿をデザインする
  • (3)CGモデルを作る
  • (4)「学習プログラム」と「人格生成プログラム」の実装
  • (5)ロボットのAIとキャラコン部オリジナルのAI、人間の連動訓練

第3回:始動~

 顔がにやけるのを抑えられなかった。思いがけないところから、泥沼を抜け出すチャンスがやってきた。しかもそのチャンスをもたらしてくれたのがとんでもない美少女だなんて! 俺の灰色の高校生活は一夜にして薔薇色に輝いた。颯太とゲームをして過ごした日々も悪くはなかった。だが、今はいい思い出。これからはAI作りに没頭する未来が待っている!
 意気揚々と部室の扉を開けると、そこには無駄にイケメンの眼鏡が机で頭を抱えていた。

「どうした、腹でもくだしたか」
「違うわ」

 俺の軽口に、イケメンは顔をしかめた。

「俺は自分を見失っていたようだ。俺たちはキャラコン部……にもかかわらず、金髪美少女の『AIに興味がありませんか?』のたったひと言で、何かもうAI作らなきゃいけないみたいな気になっていた。あの女の罠にまんまとハマるところだった。何という愚かさ。自分が情けない!」
「罠って……AIを作るのが俺たちの本来の活動だから」
「それが罠だと言っているのだ。理想のAIなどと言われたら、おちょくりたくなるのが人の性。『へーそんなのどこがいいの~』とか『そんなのが好きなんだ~』とか上から目線でバカにしたくなるものだろう」
「それはお前の人格に問題があるだけだ」
「しかし罠はそれだけではなかった。あの娘の考える理想のAIは、よく練りあげられていた。あれほどの『キャラクター』がもしもこの世に顕現けんげんしたら……この世の男は、その魂を奪われてしまうかもしれん……」

 そう言って、颯太は身震いした。

「魂が奪われるかどうかは知らないけれど、あの美少女AIがつくれたらいいよな」

 颯太はギロリと睨んだ。

「ハル。お前まさかとは思うが、あの美少女AIを自らの手で生み出せると思っているのではあるまいな」
「お……思ってないし」
「思っていただろう」

 図星である。

「甘い考えは捨てろ。何度も言っているように熱意、アイデア、技術。この三つがなければAIを完成させることはできない」
「心配いりません。ふたりなら絶対できます!」

 がらりと扉が開いた。そこには風に揺れる金色の長い髪、透き通るような白い肌の美少女、美作美雨が立っていた。

「聞いてたのかよ」
「人聞きの悪いこと言わないでください。そんなに大きな声で話していれば、外まで丸聞こえです」

 美作は口をぷうと膨らませる。美少女というものは怒った顔もかわいらしい。そのせいで、俺はほっこりとしてしまう。美作は、自分の怒りが正しく伝わっていないことに気づき、ますます頬を膨らませる。

「買いかぶるな。昨日も言った通り、俺たちにはAIを作る熱意もアイデアも技術もない。俺はここにゲームをするためにきている」
「何を堂々と宣言しているんだ」

 どんなに馬鹿げた内容でも決然たる態度で宣言されると、説得力を感じてしまうのは俺だけか。

「ああ……おふたりがそういうなら、しかたありません……」と美作は芝居がかった調子で大げさに嘆いてみせた。
「いや、俺は言ってないけど」
「私ひとりでもAIを作ります。作りたいんです。だから、この部屋を間借りさせてください」
「別に間借りじゃなくていいから。間借りというなら、むしろ颯太の方だろ」
「貴様、裏切るか!」

 そう叫んだ颯太は大仰なポーズで俺を指差した。何でふたりともそんなに芝居がかっているのだ。

「いや別に裏切ってない。AI制作の方が本来の活動ってだけ」
「ならば俺はこの部を脱退し、ゲーム研究会を設立せねばなるまい」
「そっちの方が正しい姿かもしれないけど。お前、生徒会との折衝とかそういうの嫌いじゃなかったっけ」
「それはハル、お前がやるのだ」
「何で俺がゲーム研究会に入ることになってんだ。いいだろ別に今のままでも。俺たち三人はキャラコン部ってことで」
「だが、後からやってきた新参者に我が物顔されるのは虫が好かん」
「ですから私が間借りします」
「ややこしい。どっちが間借りとか、どうでもいい。全員キャラコン部。それで決定!」
「むぅ……ハルがそう泣いて頼むのなら、仕方あるまい」
「泣いていない」
「部長がそう言ってくださるなら」

 とりあえずではあったけれど、こうして我々キャラコン部は新たな一歩を踏み出すことになったのである。

「さて、そうと決まれば早速活動開始です、ハルさん、颯太さん。キャラコン部には熱意、アイデア、技術。この三つが足りないとおっしゃっていましたよね。昨日の会議でアイデアは固まりました。この胸に燃える情熱がある限り、熱意は問題ありません。残るは技術です」

 その通り。どんな美少女AIを作りたいか、そのビジョンはなんとなく見えている。だが、技術は一朝一夕でなんとかなるものではない。俺と美作のにわかな知識では、到底AIなど作れそうになかった。

「ここはハルさんのお姉さんのアドバイスに従って、新たな仲間を探すことにしましょう」
「仲間」
「はい。プログラミングのできる優秀な仲間をスカウトするんです」
「誰か当てはあるのか?」

 三カ月をドブに捨てる覚悟がある。そんな奴が簡単に見つかるとは思えない。

「あります。これを見てください」

 美作はスマートフォンを差し出した。簡素なコンピュータルームでパソコンに向かう黒髪の女の子が写っていた。

直島渚なおしまなぎささん、通称NAGIちゃんです。この子をスカウトすれば、万事解決です!」

 その写真には「直島渚/天才エンジニア!」と、美作の手書きの文字が書き込まれていた。

 

 直島渚は俺たちの通う藤蔓高校の二年生。俺たちの同級生だ。「美作美雨による調査報告書」――美作自身がそのタイトルをつけていた――によれば、直島渚は、大島学だいとうまなぶという世界的に有名なメディア・アーティストの率いるパフォーマンス集団「NEXRAMネクサラム」の一員らしい。アートに明るくない俺でもその名を知っているくらいなので、大島学はかなりの有名人であることは間違いない。
 しかし、この藤蔓高校にそんな白眉が混じっているなど、聞いたことがなかった。転校してきたばかりの美作は一体どこからその情報を入手したのであろうか。情報の入手ルートを聞くと、

「私の調査能力を舐めてもらっては困ります。これくらい朝飯前です」などと答えるばかりである。特殊工作員か。

 俺と美作はふたりで直島渚との直接交渉に臨むことにした。颯太も誘ったけれど、きっぱりと断られた。

「俺はそんなことをしているほど暇ではない」

 要約すると、「俺は『ディストピア6』のトロフィー獲得に忙しい」という意味になる。俺と美作は、ふたりで直島渚のいる二年B組の教室に向かうことにした。

 

 昼休み。教室に直島の姿はなかった。一番前にいた人の良さそうな男子生徒を捕まえ、直島がどこにいるのか聞いてみると、昼休みはいつも教室にはいない、一度学食で見かけたことがある、という曖昧な答えが返ってきた。他に手がかりもないので、俺たちは学食に向かうことにした。
 廊下を歩いている間、美作はにまにまとしていた。

「なんだよ、気持ち悪いなぁ……」
「だって。新しい仲間を見つけるのって、なんだかRPGみたいじゃないですか」
「まだ仲間になるとは限らないだろ」
「もちろんです。でも、楽しくないですか?」

 たしかに、ちょっとわくわくしていた。
 道中、美作と他愛のない話をしていたのだけれど、その間に向けられる一般生徒たちの好奇の目を気にせずにはいられなかった。廊下ですれ違う生徒たちは明らかに美作に目を奪われていた。美作はただ廊下を歩いているだけで、人の心をさざめかせた。美作は自身に向けられるその視線の数々を気にする様子もなく、天真爛漫てんしんらんまんである。そんなものには慣れているということなのか。
 美作に、ずっと気になっていることを聞いてみた。

「なあ、美作。なんでキャラコン部に入ろうと思ったんだ?」
「それはもちろん、美少女AIを作るためです」
「それは知ってる。けど、作りたいんだったら、キャラコン部に入る必要はなかったんじゃないか。最初からキャラコン部の現状を知っていたわけだし、直島がいるってことも分かってたんだろ。最初から直島のところに行って、ふたりで美少女AI部を作ればよかったんじゃないのか」

 金髪美少女と黒髪のクールビューティーによる美少女AI部。なかなか悪くない絵面だ。部員がたくさん入ってきそう。
 美作は俺の質問には答えず、こう問いかけた。

「じゃあ、ハルさんは、何でキャラコン部に入ったんですか」
「俺? 俺は……」

 キャラコンは、俺の憧れだったからだ。
 十年前、藤蔓高校キャラコン部は高校生キャラコンを制した。部長は浜松遥。遥は部の創立三年目で総合優勝という考えられない最高の結果を残した。チームマネジメント能力、知識と技術の獲得に対するあくなき執念、最高の栄誉を手にしたいという欲望、そしてそれを実行する圧倒的なバイタリティ。その全てを兼ね備えた姉は、チームを引っ張り、その栄誉を勝ち取ったのであった。
 俺は、大会会場でその様子を見ていた。その姿は今でも目に焼きついている。優勝を果たし、チームメイトと抱き合う姉の姿。その瞬間の姉は最高に輝いていた。
 あのチームに入るんだ。
 その時、心に決めた。
 合格ラインはギリギリだったけれど、幼い頃の憧れを力に変えて、なんとか藤蔓高校に滑り込んだ俺は、意気揚々と憧れのキャラコン部に入部した。だがキャラコン部は想像とは全く違うものだった。AIを作ることも作ろうともしない三年生の部員たちによって構成された、廃部寸前の部活動になっていたのである。最初は部を変えようとした。だが「無理だ」「やめよう」「なんでそんなことをしなくちゃならないんだ」というネガティブな声の力は恐ろしく強く、気がつくとそちら側に引きずり込まれていた。結果、夏の大会に参加することもなく、何となく学園祭を迎え、三年生は引退。五人いた一年生部員のうち三人が去り、とりあえず俺は部長に就任した。新歓シーズンに何人か見学に来てくれたけれど、結局、新入部員が入ることはなかった。

「……ハルさん?」

 黙り込んでしまった俺を、美作がちらりと見た。

「キャラコンに出たかったんだよ」

 と俺は答えた。

「今じゃこんな体たらくだけど、藤蔓は昔強かったんだ。そんなキャラコン部がかっこいいって思ったんだよ」

 きょとんとしていた美作の顔に、ぱっと笑顔が広がった。

「ハルさん、私もです!」
「え?」
「私、十年前、藤蔓が優勝したのを会場で見ていたんです。あの時のキャラコン部、とってもすてきだった。あれを見て、私も絶対この部に入るんだって誓いました」

 おいおい、まじで? と心の中で突っ込んだ。

「でも引っ越しとか色々あって、藤蔓からは離れることになっちゃったんです。そのあと、色々あって……そんな時に思い出したんです。キャラコンのこと。私のやるべきことは、藤蔓のキャラコン部にあるんだって。だから転入試験を受けてこの学校に入ったんです」
「じゃあ、キャラコン部があるっていうのが、美作が転校してきた理由?」
「じつは」

 美作は照れた様子でいう。

「あの時の藤蔓のキャラコン部員たちはみんなきらきらしていました。私もあの輪の中に入りたい。そう思ったんです」

 どうりでキャラコン部にこだわるわけである。
 美作は、俺と同じものを見ていた。そして同じ思いを胸に抱いた、いわば同志であった。俺が部長になったのも、その名前にこだわるのも、すべてはあのときの部が好きだからという一点に尽きる。あの輝きに目を焼かれた俺は、今でもそれを求め、無様にキャラコン部にしがみついている。
 今は無理だけど、いつかは。
 チャンスさえあれば。
 仲間さえいれば。
 自分にそんな言い訳をしながら、くすぶる日々を過ごしてきた。

「そうなんだ……」

 自分の気持ちを素直に吐露とろできる美作が心底羨ましくなった。
 俺の心を支えているのは、十年前のキャラコンであり、その意志を継いでいるという自負だった。それは俺だけのものであるはずだった。なのに、よりにもよってすべてを持って生まれてきたような美少女が、俺が俺であるよすがとなるものを、胸に秘めているなんて。美作を超えられるものなんて何ひとつ持っていない俺は、この世に存在する価値なんてあるのか? そう思わずにはいられなかった。
 俺は自分にはできないことをやすやすとやってのける美作に心底嫉妬していたのである。そんなもやもやした気分など分かるはずもない美作は、興奮気味にこう続けた。

「必ず高校生キャラコンをとりましょう。きっと私たちだって手が届きますよ。ね、ハルさん!」
「うん……」俺は力なく頷いた。
「どうしたんですか?」

 急に元気のなくなった俺を、美作は不思議そうな顔で覗き込んだが、俺は曖昧な返事をするのが精一杯だった。
 昼休みに直島渚を見つけることはできなかったのは、幸運だったかもしれない。ぐらぐらに揺らいだ心のまま、一緒に高校生キャラコンに出て欲しいと説得することはできなかっただろうから。
 美作と放課後に再アタックをすることを約束し、午後の授業に向かった。
 授業の間も、心のもやもやは晴れなかった。気がつくと俺は眠っていた。思考が答えのないままぐるぐると回り、脳の処理能力を超えたのかもしれない。
 目覚めると幾分スッキリしていた。

「この世は無情だな、颯太」

 休み時間、ぽつりと呟いた。

「何だ急に。気持ち悪い」

 颯太は怪訝な顔をした。

「自分はクソだ。そんな俺はこう思う。人生は不公平だと」

 そう言うと、颯太はこう答えた。

「持っている人はさらに与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているものまでも取り上げられる。それが世の中だ」
「まったくだ」

 

 放課後。チャイムが鳴ると同時に、俺はC組の教室を飛び出した。同じくA組から美作が飛び出す。俺の背後、颯太も飛び出したが、一目散に逆の方向に駆けていった。眼が据わっている。ゲームのことしか考えていないときの目だ。
 俺と美作の視線が交錯した。互いに頷きあう。左右からB組の教室前に突進する。
 直島渚スカウト作戦、決行。
 廊下の窓からB組の教室を覗く。ホームルームはまだ続いていた。何人かの生徒が俺たちに気づき、顔をあげた。その好奇の眼を肌に感じながら、直島渚の姿を探した。

「いました」

 美作が指をさす。窓側の後ろから二番目の席に直島渚は座っていた。背中まで伸びたまっすぐな黒髪に、ちょっと憂鬱そうな面差し。ほっそりとした白い首が印象に残る、理知的な顔立ちの眼鏡の女の子だった。

「あ」

 思わず声をあげた。

「どうしました?」
「直島、体験入部に来てた」

 直島は一年生の四月、キャラコン部に見学に来ていた。美作の持っていたのは、少し古い写真だったようだ。写った直島の顔はまだあどけなく、ショートカットで横向きの写真だったから、気づくことができなかった。
 直島がちらりとこちらを見た。たちまちその表情が硬くなった。明らかに動揺し、眼が泳いでいる。
 俺と美作はドアの下に身を隠した。

「みた?」
「見ました」
「なんか俺たちを見て、様子がおかしくなったけど」
「ですね。ハルさん、直島さんに何かしたんじゃないですか?」
「するわけないだろ。ていうか何かって何だよ」
「スカートめくったとか」
「小学生か」
「大人のスカートめくりです」
「大人ってつけるだけで急にヤバい響きになったな。ていうかめくってないからね」
「小学生のときに直島さんのスカートをめくったとか」
「してないよ。直島は小中一緒じゃないし。高校からの同級生だし」
「じゃあ、高校に入ってからということになりますね」
「濡れ衣だ!」

 影でこそこそと話をしていたら、B組のホームルームが終わったようで、生徒たちがぞろぞろと外に出てきた。俺たちは教室に入らず、直島が外に出てくるのを待つことにした。だがいつまで経っても出てこない。再びそっと教室を覗き込む。直島はまだ固まっていた。眼はさっきよりも激しく泳いでいる。

「まだ固まってる!?」
「完全にパニックになってますね。ハルさん一体何をしたんです?」
「だから完全な濡れ衣」

 廊下を歩く女子が疑ぐるような眼をこちらに向けた。それでなくとも美作は目立つ。あらぬ噂をたてられてはマズい。

「とにかく……話しかけてみよう」
「ついにハルさんの罪が暴かれてしまうんですねぇ」
「だから違うって言ってるだろ」

 人の少なくなったB組に入った。クラスには直島の他に、ちゃらちゃらした感じの男女五人組が残っているだけだった。

「あの、すみません……」
「は、はひ!」

 直島渚は上ずった声で返事をした。

「直島、渚さんですよね」

 直島はこくこくと、何度も頷く。

「聞きたいことがあるんですけど。直島さんて、このNAGIさんですよね」

 美作は例の写真を表示したスマートフォンを差し出した。

「!」直島の動揺が、さらに激しくなった。
「それに、この動画に映っているのも」

 美作はスマートフォンに大島学のドキュメンタリー番組を表示した。大島学は雑多にものが積まれたうす暗い部屋で、寝不足の目をこすりながら、ぼそぼそとインタビューに答えていた。

「いや、いつも綱渡りなんですけど。今回はNAGIちゃんのおかげで、何とかなりました。ね、NAGIちゃん」

 大島の背後。暗がりに、黒いTシャツを着た黒髪の女の子が映っていた。その子はチラとこちらを見て、軽く頭を下げ、すぐに作業に戻った。テレビカメラには興味がない、といったクールな態度である。

「ち、ちちちちちちちちちち」
「ち?」

 直島渚は一呼吸置いて、答えた。

「違います」

 動揺しすぎである。直島は顔を真っ赤にした。どうやら直島渚がその「NAGIちゃん」であることは間違いなそうだ。

「直島さんをNAGIちゃんと見込んでお願いがあります」
「なんだよNAGIちゃんと見込んでって」
「キャラコン部に協力してください!」美作は頭を下げた。
「ど……どういうこと?」

 直島は困惑した。

「唐突でごめん。まずは自己紹介をしたいんだけど……俺はキャラコン部の部長をしてる浜松晴」
「私は部員の美作美雨です」
「俺たち、色々あって、今年の高校生キャラコンに出ることになったんだ」
「高校生キャラコンって知ってますか?」

 直島はこくりと頷いた。

「なら話は早い。俺たち、AIを作りたいんだ」
「ただのAIじゃありませんよ。理想の美少女です。理想の!」

 美作は興奮気味に言った。

「理想の、美少女?」

 直島は首をひねった。

「落ち着け美作。あの、俺たちプログラムとかアルゴリズムとか全然でさ。直島が詳しいっていうのを聞いて、協力してくれないかと思って。まず、話だけでも聞いてもらえないかな」

 直島は何も答えず、潤んだ瞳で俺のことをじっと見つめた。その瞳が何を訴えようとしているのか、よく分からなかった。俺は手にしていた一冊のノートを差し出した。

「あの、これ、美作と俺たちが考えたAIのイメージ。取り留めもない感じなんだけど、一回読んでみてくれないか」

 それは「YOME NOTE」だった。ファミレスでの議論を受けて、加筆修正が加えられていた。開いて一ページ目には「美少女AIの掟」が書かれている。それに続いて、「美作美雨とハルさんと颯太さんの考える理想のAI美少女とは。どんな困難にも負けず、みんなの夢を叶える、健気で真っ直ぐな女の子!」という一文が加筆されていた。一夜のテンションで書いた恋文のような気恥ずかしさがあるが、直島に見せられるのはこれしかない。

「その……返事は後でいいから」

 照れながら言うと、直島はなぜか真っ赤になった。そして、ノートをぎゅっと胸に抱いた。

「金曜日の放課後、また来るから。そのときに話、させてもらってもいいかな」
「……はい」

 直島は、小さく頷いた。

(つづく)

著者:穂高正弘(ほだかまさひろ)

キャラクターデザイン:はねこと

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