特集
SPECIAL
- コラム
【第2回】高橋良輔の言っちゃなんだけど
『言っちゃなんだけど……その2』
最近…、
「肩書は何にしましょう?」
と聞かれることが多くなった。
(えっ、あたしらアニメの監督じゃねえの)
と最初は思ったが、『ペールゼン』から10年『幻影編』から7年『孤影再び』からだって6年もたっている。2015年に『ヤングブラックジャック』があるが、あれはシリーズ構成だけだからなあ。
「肩書、大学の教員でいいですね」
とも言われるが、教員生活も今年で11年目に入ったから、それも専任だから本職じゃないよとも言えないしなあ。ま、ある意味仕方ないか。そんなことを意識したのもここんとこ『文化庁』関連の事業のお手伝いをやらされることが続いたからなのだが。ああ言ったことは肩書が結構問題なんだ。
しかしだ。改めて、
「あんた何者?」
と、真面目に聞かれたら、ホントはどう答えよう。過去を振り返ってみると、
「職業は、髙橋良輔…かなあ」
なんて冗談めかして言ったこともある。……冗談? いやいやあながち冗談ともいえないものがあって、言いたかないけどあたしら“アニメ作品の監督”ってことにからきし自信がない。なんだかんだ言っても監督の仕事の本筋は演出でしょう。実をいうとあたしらまったく自分の演出能力に信をおいていない。演出ということの本質は正味のところ(関西ながくなったもんで)技術だと思う。言っちゃなんだけどあたしらアニメにおける技術の諸々にまったく裏付けがない。この業界に入って数十年、ただただ見様見真似でその場をごまかし切り抜けてきた。近しい仲間にそのことを白状すると、
「冗談ポックリ!」
とかはぐらかされるが、これ本当のことなんだ。
「そんなことでこの業界通用すんの? 実は何か、ヒケツと言うかヒミツと言うかウラワザと言うか、そんなのがあるんじゃないの?」
(ハハ…言っちゃなんだけど、ないわけないじゃん!)
てなわけで次回はそのあたりのことを。