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- コラム
2022.09.15
【第4回】高橋良輔の言っちゃなんだけど
『言っちゃなんだけど……その4』
さてさて、プロフェッショナルとアマチュアの問題だった。プロかアマか、スポーツなんかだと比較的わかりやすいんだが……そう職人と言う言い方がある。職人とは一般にプロフェッショナルと同義語とされていると思う。あたしらこの職人と言う言葉にある種のあこがれを持っている。なにか潔さと頼もしさを同時に感じる。昔は手に職をつけるなんて言い方をされた時もある。とにかく世俗を生き抜いていくうえでの真っ当なライセンスを手にしている感じがある。で、
「あんたは職人か?」
と聞かれると、
「うーん」
と唸った後で、
「職人じゃないよな」
と答えざるを得ない。あたしらは職人じゃない? いやいやその前に職人ってなんだ。あたしらのイメージだけど、あくまであたしらだけのものだけど。職人とは修業時代を持った人というイメージが確乎としてある。では修業とは何か? これもあたしらの勝手なイメージなのだけど、先人の価値観の枠の中で何かを学び育つことである。先人の価値の枠内だからある時は窮屈だったり意味が分からなかったりするだろうが、とにもかくにも既にある価値観の中で学んだり、もがいたり、磨いたりすることである。その昔は修業を無理偏に拳骨なんて言った業種もあったそうな。つまりは理屈抜き訳なんか分からなくていいから言われた通りをなぞる馴れる。慣れてなぞれて初めてOK。やがてある時間を経て身体内に確かな技量を刻み込まれ、先人つまりは師匠や先輩からある種の鋳型にハマったのを確認され、
「まあまあ、一人前かな」
と言われて一本立ちした人、身に沁みついた技術を頼りに一人歩き始めた人を職人と呼ぶのではないかと、思っている。
さて職人のその後だが……この項まだ続きます。