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- コラム
【第6回】高橋良輔の言っちゃなんだけど
『言っちゃなんだけど……その6』
前回職人話からいきなり結論に行ってしまい、何が何だかわからない、はしょり過ぎとの指摘を受けた。読み返してみてその通り、あたしにもわからない、まったくぅ!
技術の裏付けのない抜きがたいコンプレックスについては書いた。無いものは無いのだから仕方がない、今さら取り返しのつかないところまで年月が過ぎてしまったのだ。どうする? 本来ならこの辺で方向転換転職と言うことなのだが、困ったことにこの世界が好きになってしまった出来ることなら此処にいたい。自問自答する毎日、どうする? そんな折ウラハラにめったにないチャンスがやって来た。これは今までとは違う、前髪があって後ろ髪のない幸運、まさにラッキーチャンスだ。だが技術と言う背骨のないあたしらにはそれを受ける自信がない、受ければ――
失敗、挫折、ダメダメの烙印
――がちらついた。しかし人生にチャンスなんてそうあることじゃない。しゃーない! 確かな武器は無いけど覚悟を決めよう! 技術が頼りにならない分だけ自分が自分であることに徹しよう、勝負!
と言うことで先週書いた
多きに付かない
ハヤリを追わない
という枷をつけた。多きに付かない…はもちろん人の意見を聞かないということでなく聞いても大勢に流されないとすることであり、ハヤリを追わない…は無意味な競争を避けるためである。ハヤリ=ヒットは成功の証であるが、それ故に参入者は多く競争は激しくなるはずである。さらに言えばハヤリものに常に背を向けてきた自分に適しているはずがない。この二つを心に刻んだ。つまりは技術でもなくデータでもなく、自分自身の未熟な価値観が頼りである。この二つの裏でもう一つ心に言い聞かせた。けっして過大な結果は望まない。結果を望めば意志弱いあたしらはフラつくに決まっている。
で、ここまで九尺二間の良輔商店でやって来た。やってきたことは自分の影のようなもので付いて離れない。よく見ればやはり自分の写し絵である。