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- コラム
2022.09.15
【第7回】高橋良輔の言っちゃなんだけど
『言っちゃなんだけど……その7』
『こなから』って言葉がある。『小半』とも『二合半』とも書く。つまりは一升の半分の半分2合5勺ってこと。一升は1800CCだから四分の一の2合5勺は450CCとなる。語源とかを探ると色々面白いことがあるが、それはさておき、問題はその“こなから”が飲酒の適量であるらしいことである。
世の中にはイケる口の人とイケない口の人がいる。イケない人のことはおいといて、イケる人の問題としては“こなから”は問題である。何が問題か? 言葉の力である。大体が酒飲みなんてものはいろいろと言われやすい。ちょっと過ごせば健康に良くないとかいい歳して節度がないとかは耳にタコであるが、
「家でゆっくりこなからあたりがいいわよねえ」
とかカミさんに言われたり、
「まあサラっと、こなからくらいが粋だね。寝付きもいいし明日も楽だし」
とか血圧や通風を気にしている友達に言われると弱い。
「そうかな」
なんて思ってしまう、って思わないよー!
冗談じゃない!
酒なんてものは、こうチマチマ分量や体のことなんか気にして飲むもんじゃないだろうが。言っちゃなんだが、言っちゃなんだが、そのまあ言ってみれば非日常を味わうもんで、ワイワイしたりガチャガチャしたりドタバタしなきゃ面白くないじゃないか。身体に気をつけろとか大人になれとか、そこらあたりから衰えってものが始まるんじゃないのかい。あたしらイヤっと言うほど普通人を自認してるんで、酒の力でも借りないと想像力とか創造力とかやる気とかってものが湧いてこない。酒に後押しされた人生なんだから、もう少し酒のその方面の力を頼りにしたい。
言いたかないが……そう遠くないそのうちに、いやでも、
「こなからだよなぁ、やっぱり」
となるのは分かっているのだから。