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メゾン・ド・アームズ バシレイオン【第9回】
前回のあらすじ
昼のバイト、スーパーの惣菜コーナーで静香はまたも主任とパートリーダーにイビられていた。主任の発注ミスでできた大量のトンカツなのに、売れ残ったら買い取れと。屈辱に耐えるしかない静香が見たものは、トンカツを大量買いして去っていく真世の姿だった! ⇒ 第8回へ
フレンドリーマートのバックヤード兼事務所の奥、使わなくなった什器や何年も前から置きっ放しにされている販促グッズ等が押し込まれた倉庫の、更に奥の片隅に、人目から隠れてその空間はあった。両手を広げれば左右の壁に届くほどの中に事務机が置かれ、年代物のライトスタンドの灯だけが仄暗く辺りを照らしている。机の上には大小のハサミ、カッターに定規、記事が切り抜かれ紙面に窓の開いたムック本や週刊誌や新聞。切り抜かれた側は、どうやら片隅のキャビネットの、インデックスのついた棚に分類し保管されているらしく、更に一面の壁に目を移せば、特にピックアップされたとおぼしきおびただしい数の紙片が、『人類養畜計画』との大見出しを取り囲み、隙間なく貼られている。
所々に下線が引かれたそれらの記事は、独自のルールによっていくつかのグループにカテゴライズされていて、グループとグループとが実線や破線、はたまた色分けされたマーカーで結ばれており、その中のひとグループ――『三〇〇人委員会』『連邦準備制度』『次期アメリカ大統領選』『ベルギー王室』『アレン・ダレス』『スエズ水資源管理評議会』『ブラジル代表、ワールドカップボイコット』『世界気象操作クラブ』『アイドル総選挙規制』『EU解体』『児童売買取引ネットワーク』『エリマキトカゲブーム再来』……それらに関する切り抜き記事が集められている中に、草永は新たな一枚を貼り付けた。本当ならそのスペースには、昨晩、商品の配達に遅れた静香に品出しを押しつけてでも初日封切に足を運ぶ予定だった、日仏同時単館公開映画『限界エロチック~やわらかいとなりのお姉さん~』、その編集技法に巧みに隠蔽された、全能の悪魔ヘレル・ベン・サハルを讃える啓蒙コードに関しての、自分なりの考察メモを掲げるはずだったが、それを押しのけて彼は、今朝の朝刊から切り抜いたばかりの『謎の巨人起立』の記事を貼り込むと、一歩下がって壁全体を眺めた。
「思った通りだ、あの巨人……奴らが、全世界に暗躍し人類を家畜として支配しようと目論む邪悪な膿の正体を暴き出し粛正すべく、奮闘している私の事を嗅ぎつけ、抹殺しようと仕向けたという訳だな……やはり露島研究所は、ネオイリュミナティの……」
一人呟く草永の表情には、しかし、巨人との対峙を恐怖し憂うどころか、誇らしげな満悦すら浮かんでいる。
「これまで我を侮り、尻目に懸けていた愚かな輩どもよ、己の炯眼のなさを大いに恥じ入るがいい。世界を牛耳ろうと企む強大な邪悪がいま、この私を恐れ刮目しているのだ」
草永は傍らに置かれている鏡に向いた。
ニヒルに笑む自分がいる。
魅入るように自身に告げた。
「遂に訪れたのだ、立ち上がる時が……」
そこで彼は、自分の背後に映っている部屋の入口の奥の暗い中に、ぼんやりと人影が立っている事にようやく気づいた。「うわっ!」思わず声を出して振り返り、腰を抜かすように大きく退くと、弾みで机にしこたま背中を打ちつけ、次いで「うおっ!」と悲鳴を上げた。
「いやぁ、見事な解析ですなぁ!」
人影が大股で一歩、室内へと歩み入ってくる。三着で二着の価格をキャッチフレーズにする量販店のスーツに、質実なシャツとネクタイ、髪を短く刈り込んだその大柄な男は、大いに感心した様子で壁一面の切り抜きを眺めた。
「着眼点がおもしろい!」
「ちょ、ちょっとどうしてここに!?」
1週間ほど前から壊れていたドアの鍵をとっとと直して置くべきだったと後悔しつつ見れば、男の逞しい体躯の背後から、例の中年アルバイトが、部屋の中はどうなっているのかと興味津々に背伸びし覗き込んでいる。草永は打ちつけた腰の痛みを手で押さえ込みながら必死に立ち上がると、その身で、紙片で満たされている壁を隠した。
「ここには近づくなって言ってあるでしょう! それに、私がここにいる間は邪魔をするなとも!」
「す、すみません……ですが、こちらのお客さんが、どうしても店長に会いたいと……」
「こういう者です!」
言葉尻にいちいち「!」をつけるその男は、飾り気ない合皮の名刺入れから一枚を取り出すと、草永だけでも狭い空間に更に一歩踏み込み差し出した。草永が押しつけられるように受け取る。
「『夢・輝き・みらい庁』希望のかけ橋分室担当課長……の、大和田……さん?」
「お忙しいところお邪魔して恐縮です!」
通称『みらい庁』。現政権である柴山内閣が先の衆参同日選挙の際、専業主婦層や日和見社会派層の票の取り込みを画策し創設した、慰撫懐柔用のお飾り機関――と、世間から揶揄されている、内閣官房長官直隷の内閣府特別外局組織だ。
「どういった用件ですか?」
雇用動向調査、あるいは景気調査か何かだろうか? 何にせよお役所が入るなら、あらかじめ店のチェーン本部から連絡が来る筈だが。訝しげに問いつつ草永は、大和田に向かって一歩二歩と歩み出て、それとなく部屋から押し出そうとしたが、二人の距離が縮まるだけで、大和田は「少々お聞きしたい事がありまして!」と、退く気配がない。仕方なく草永は、いまだ興味深げに室内を覗き込んでいる中年アルバイトだけを、シッシッと手で追い払う。
「昨晩『マル巨』……失礼! 例のあの巨人が、こちらの店を攻撃しようとしたとうかがいまして! その件について少しお話を聞かせて頂きたいと!」
草永は心の中で「なるほど」とニヤリ笑んだ。そう、奴ら邪悪な世界的巨大陰謀結社は、この自分が秘める未知なる力に気付き、亡き者にしようとした。ひょっとしたら国家もようやく自分の重要性に……!? そうか、きっとそうに違いない! 遂に私の時代が来たか! 草永は思わずガッツポーズを取りそうになって、握った拳を必死にこらえると、正義のヒーロー然と努めて冷静を見せようとした……が、
「でも……どうして、『みらい庁』なんかが?」
「なにか!」
「い、いえ……なんでも……」
「で、ですね!」大和田は気に留めていない様子で続ける「その際、その巨人の攻撃を、身体を張って止めた少女がいたと!」
「……少女?」
一つ思案を巡らせた草永は、「!?」と思い至った。ひょっとして、いつも弁当や惣菜をトラックで配達して来るルート配送の、彼女の事か?
草永は、自分があの場から逃げたのち巨人が攻撃を辞めた理由を、暗殺対象である自分を見失った為とばかり考えていた。ところが……あの女が止めていた!?
「正確には『そう見えた』ということらしいのですが! 陸自の頭号師団、失礼! 第一師団の数名が確認したと!」
「はぁ……」
「で、昨晩の状況とか、彼女の事とか、ぜひとも詳しく教えて頂けたらと!」
「まぁ、構いませんが……」
大和田の注目が自分に向いていない事を知った草永の口調が、とたんに興味を失い萎れ、失望の反動で蔑みを滲ませる。これだから世間からお飾り官庁って言われるんだ。心の中で悪態をついた彼はふと、先ほどの疑問を再び抱いた。しかしどうして、みらい庁が?
「にしても!」
ハッと草間は我を戻した。大和田のギラギラした目がこちらを見つめていた。
「実に興味深い!」
無骨な彼の手が、壁で『徳川埋蔵金』『天皇の金塊』『マッカート資金』のゴシップ記事と『内閣官房機密費』のメモ書きとを結んでいる破線を、バン! と叩いた。
* * *
「やったじゃん露島、これでその家政婦のこと4週間は待てる計算? まぁ朝昼晩、連日トンカツパーティーになるみたいだけど」
馬鹿にするバシレイオンAIの声を聞きつつ、真世は「せめて、ほかの揚げ物もあったらよかったのに、なんでトンカツしかなかったんだろ……」と不思議に思い呟きつつ、決して大きくはない一人暮らし用の冷蔵庫の冷凍室と冷蔵室に、買ってきたトンカツをようやく押し込み終えた。
「凍らせる方はともかく」ふぅと息をつき、床に腰を降ろす。「冷蔵庫の分はそんなに持ちそうにないよね」
「冷凍庫のだってそんなに持たないと思うけど?」
「え? さっき4週間は、って」
「数だけならって話。揚げもんの痛みかた、舐めない方がいいよ」
「じゃ、実際どのくらい大丈夫なの?」
「そんなのちゃんとは知らないし」
「ネットで調べてよ」
「スタンドアロンだもん、あたし。サイバー攻撃されないように……って言うか、露島あんた自分で調べればいいじゃん」
言われて真世はPCに向かおうと一瞬立ち上がりかけたが、ふと動きを止め、長いため息をつき、再び床に座り直して、
「ホント、保存の事くらい考えろ、だよね……子供じゃないんだから」
そのまま身を投げ出すように、床に仰向けに転がった。
「ひきこもりになる以前も――」
遠くに昔の自分を見るように、天井のその先を見つめる。
「コンビニはともかく、一人でスーパーに買い物に行った経験なんて一度もなかったからさ」
「中学に入るまで?」
「うん、行くとしてもエステラと一緒だったから。それだって10年以上も昔の話だし、だから、右も左もなんにもわかんなくて……人はいっぱいいるし、なんだかみんな殺気立ってるし」
「お昼どきだったもんね、露島が行ったの」
「そっか、あれが聞きしに勝る、昼食争奪戦争か……」
「あのスーパーの周りはオフィスも多いし、跳弾も流れ弾も激しかったかもね。新兵の露島には厳しい前戦だったかも」
「心臓バクバクするし、頭の中アップアップだし、とにかく早く帰りたくて、最初に目に入ったの手当たり次第買い物カゴに詰め込んで、レジ終わらせて、店の外出て、ホッとして、気がついたら……トンカツまみれ……」
真世はぽつりと付け足した。
「……情けないよね」
「別にまみれてはなかったじゃん」
「……そっか」
PCの冷却ファンが微かに唸っている。
「母親とか父親とは行かなかったの? 買い物」
「うん、まったく」
「寂しくなかったの?」
「エステラがずっと側にいてくれたらね……ただ……」
真世は「そういえば」と思い返した。
「研究所からほとんど家に帰ってこない二人が、いったい何をしているのか知らなくって、それだけがずっと不思議で……」
その表情が、ふっと笑みをこぼす。
「そっか……ボクを護るために、バシレイオンを……君を、造ってくれてたんだ……」
お腹が鳴った。
「……トンカツ、駄目になる前に、食べられるだけ食べないと」
「なくなったらどうすんの?」
「……その時は、今度は海老フライでもめいっぱい買ってくるよ」
暫し沈黙の音がして、バシレイオンAIがクスクスと笑い出した。
「……だね、ホント情けない奴」
そう言う彼女の声は、なんだか暖かい。
「だから、あたしがいるんじゃん」
真世は床で仰向けになっている身体をおこした。
「よろしくお願いします……これから、ずっと」
「しょうがないから護ってあげるし」
またお腹が鳴った。
「食べれば? トンカツ」
「……ありがとう」
「別にあたし何にもしてないじゃん」
「うん……でも、ありがとう」
「……情けないうえに、ヘンな奴」
真世は笑みを噛みしめると立ち上がり、冷蔵庫に押し込んだばかりのトンカツをとりあえず2枚、再び引っ張り出して、使い捨ての紙皿に乗せ、マルチレンジに入れてオートで揚げ物加熱し、ピピッと出来上がりを知らせるアラームを聞き、レンジの扉を開けようとして――「あ!」と何やら素っ頓狂な声を上げた。
「どうかしたの、露島?」
真世は、答える余裕もない様子でキッチンの棚をあちらこちらと覗き込み、ひょっとしたらとばかりに部屋中を見回して、その後、失意も顕わにガックリうなだれた。
「……ソース……」
* * *
「しくじった……」
静香はスーパーの従業員専用自転車置き場で、自身の年季の入った電動機付自転車に、バッテリーが装着されっぱなしになっているのを見ると、持っていたトートバックを呆然と落とし、ガックリと膝を崩して、突っ伏すようにサドルにもたれかかった。十年来使い倒しているロートルで、しかも静香のもとにやって来た時点で既に十数年物の中古だったその電動機付自転車は、バッテリーがもはやヨレヨレで、それこそ静香の自宅からパート先であるこのスーパーまでの片道だけで充電をすべて使い切ってしまう。なので通勤したら更衣室のコンセントを借りて充電せねば、帰りは単なる役に立たない死重と化してしまうのだった。
「……遅刻しそうだったから……焦っててうっかり忘れてた……」
加えて最近の型に比べモーターの重量も冗談かと思うくらいに重い。電力を失った静香の電動機付自転車はいま、いわば最強の脚力増強トレーニングマシーンと化していた。しかも――
「……次の夕方前のパート……ラブホテル清掃の現場までずっと……のぼり坂……」
夕方前の粘りある陽炎の中、汗だくになりながら、錆びて動かなくなった自転車を背負い、まるで永遠の登坂路を登る自分の姿がふと思い浮かんだ。なるほど、まるで私の人生そのものだ。
気づくと力いっぱい拳を握っていた、つめが深く手のひらに食い込んでいる。そんな自分の手に締め付られるかの様に胸が苦しくなった。なにをやっているんだ私は! ただでさえ足が届くか届かないかのエブリタイム立ちこぎ状態だというのに、自分で枷を増やしてどうするのよ! こんな気味の悪い私など誰も救ってくれないのに! 自分自身で護るしかないのに!
静香はサドルにもたれかかっていた体をギッと起こすと、沸騰した憤りの湯気が圧力釜を爆発させんばかりの勢いで、スカートから下着が覗くのも構わず思い切り高く片足を上げると、目の前で筋トレマシーンと化している自分の自転車を力の限り蹴りつけようとして――ハッとなった。
生きねば。
思い悩んでいる時間はない、次のパートは特に遅刻に厳しい現場なのだ、急がねば即クビになってしまう。
失うわけにはいかない。私を雇ってくれる職場などそうそうないのだから。ついでに言えば電車代を出す余裕もない。走るのと、重石と化した自転車をそれでも漕いで行くのと、どちらが早いか。
得も言われぬ選択を迫られた静香はふと、朽ちて見窄らしい自分の老耄自転車の隣に、色鮮やかで垢抜けた、買ったばかりと思わしきピチピチ最新型の自転車が駐めてあるのに気付いた。パートリーダーの愛車だった。
静香は暫し、その自転車を見つめた。
圧力釜が、圧力に屈した。
彼女は一旦降ろした片足をもう一度、いっそう高々あげると、目の前にある自分の自転車を思い切り蹴りつけた。倒れたそれが隣のパートリーダーの自転車を倒し、それがまた隣を巻き込んで、それぞれに持ち主の営みの垢がついた10台ほどがガチャガチャと音を絡ませながら鈍いドミノ倒しとなり、やがてわだかまるようにグダグダと勢いを止めた。
静香は、自分の老醜のハンドルと絡まっているピチピチ最新型のそれを必死にほどくと車体を起こし、カゴに拾い上げた自分のトートバックを投げ込んだ。従業員専門の自転車置き場にはIDを持たない部外者は立ち入り出来ない。故に誰もが鍵を掛けるという習慣を持っていなかった。静香はつま先立ちでピチピチに跨がると、立ちこぎの姿勢で勢いよくペダルを漕ぎ出した。
耳に挟んだ噂では、中堅ゼネコンに勤める旦那と小学校に通う男の子との3人家族であるパートリーダーは、決して家計を助ける為ではなく、服飾や自身の趣味(旅行に加えて今はホットヨガに嵌まっているそうだ)の為にパートに出ているらしかった。そんな彼女も、あの巨人が現れ、帝都卸売市場移転予定地に設けられた分譲住宅地一体が立ち入り禁止区域とされたせいで、その一角に建つ自宅から退去しなければならなくなったらしい。しかもそれは、いつまで続くかわからない。
「いいきみだ」
錆を材料に組み立てた、ひとつ漕ぐごとに軋む静香のそれとは違い、上品なベージュ色の電動機付き自転車は、まるで滑るように道を駆け抜けた。歩行者の間を縫い、ジョギング中のランナーを追い越し、ペダルを踏む足が弾んだ、スピードがぐんぐん増す。まるでどこへでも行けそうだった。いま自分がいる場所から、どこへだって、どこまでだって。
行く手の先に交通量の多い大通りの交差点が見えた。横断歩道の信号が赤に変わる。静香は速度を落とそうとペダルを漕ぐ足を緩めて、そしてようやく気づいた。
「この自転車……勝手に進んでる!?」
先程のドミノ倒しのせいで壊れたのか、それとも粗悪な外国製だったからか。その電動機付き自転車は、静香の意思とは関係なく走り続け、それどころかドンドンと速度を増していく。静香は思い切りブレーキを掛けた。ブレーキワイヤがブツリと音を立てて切れた。
犬を散歩させている老人を必死によけ、小学生の集団を寸前でかわす。車行き交う交差点が迫ってくる。いっそ転んでしまった方が怪我は軽く済むのかもしれない、しかし踏ん切りがつかない。いまや自転車はバイクのように猛スピードで爆走している。彼女の脳裏に様々な記憶が浮かびはじめた。それは取り取りの思い出の筈なのに、どれもが、自分を見る奇異なる視線、掛けられる哀れみの声、その本心に透ける蔑み、一つ一つを見返し、一つ一つに感じた屈辱を思い返し、もはや諦めたと思っていたけれど、ならばなぜそれでも進まねばならないのかと自問し続け、答えは見つからず――。
いまや交差点はそこにまで迫っている。
そしてふと、彼女は踏ん切りをつけた。
何もかもを捨て、すべてから逃げ出し、すべてを終わらせられる方向に。
効かないブレーキのレバーを握っていた手が力を抜いた。視線が、行く手で激しく行き交っている車をぼんやりと見る。
歩道沿いのイレブンマーケットから、真世が静香の前に飛び出してきたのは、彼女が乗る自転車が車道に飛び出そうとした、まさにその直前だった。
「!」
二人は顔を見合わせた。今度はフレッシュマート前の横断歩道で急停止した冷蔵トラックの様にはいかなかった。真世は静香を受け止める格好で彼女と衝突し、二人は絡まるように派手に転んだ。真世の手からふっとんだトンカツソースが、静香の代わりに交差点を猛スピードで通り過ぎたトレーラーにはねられ、辺り一面に飛び散った。
著者:ジョージ クープマン
キャライラスト:中村嘉宏
メカイラスト:鈴木雅久