©かわぐちかいじ/講談社・サンライズ
作品名 | 沈黙の艦隊 |
作品名 (ひらがな) | ちんもくのかんたい |
Title (英語表記) | THE SILENT SERVICE |
放送日 | 1996年3月2日 |
話数 | 全1話 |
スタジオ | 第3スタジオ |
主題歌 | TS 「夢の渚-The Silent Service-」 歌/来生たかお |
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キャスト
海江田四郎/津嘉山正種
深町 洋/大塚明夫
デビット・ライアン/徳丸 完
山中栄治/麦人
速水健次/飛田展男
竹上登志男/阪 脩
海原 渉/若本規夫
ベネット/上田敏也
マードック/藤本 譲
ランシング/小林清志
スタイガー/大塚周夫 -
スタッフ
企画/中村重喜、矢立 肇
原作/かわぐちかいじ(講談社「週刊モーニング」連載)
脚本/吉川惣司
キャラクターデザイン・総作画監督/加藤 茂
メカニカルデザイン・作画監督補/山根公利
美術監督/池田繁美
色彩設計/加瀬結起
レイアウト作画監督/横山彰利
撮影監督/長谷川洋一
編集/鶴渕友彰
音響監督/浦上靖夫
音楽/千住 明
監督/高橋良輔
プロデューサー/植田益朗、望月真人
3000万部突破のコミックをアニメ化
平和と国防の意味を問う軍事サスペンス
【ストーリー】
極秘建造された日本初の原子力潜水艦シーバット。だが米海軍の所属となったこの艦が、試験航海中に突如反乱を起こし、核武装宣言と巧みな戦術を武器に、米第7艦隊の包囲網を突破してしまう。やがて単艦で独立国家「やまと」を名乗り、日本との友好条約を求めた海江田艦長の真意とは!?
【解説】
1988年から1996年まで「週刊モーニング」に連載され、全世界で3000万部を売り上げた同名コミックのアニメ化。「国家に属さない核武装原潜」をめぐる物語は、現代日本を取り巻く国防問題に鋭く切りこんでおり、TVで放映する意義の高い社会派作品を志向して製作されている。
たった1隻の原潜と核のカードを巧みに操り、安全保障の枠組みを問い直す海江田。彼の行動を受けた日米の男たちは、それぞれの立場から力と政治哲学をぶつけあう。
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海江田四郎
高い志と冷徹な政治センスを併せ持つ、独立国やまと元首。天才的な操艦技術を持つ潜水艦艦長で、演習では米軍空母を5回も仕留めた実績を誇る。
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シーバット(やまと)
極秘建造された日本初の原子力潜水艦。排水量9000トン、最大潜水深度1000メートル以上、水中速度40ノット以上という驚異的性能に加え、核弾頭を装備可能な魚雷とミサイルを搭載する。
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ベネット
アメリカ合衆国大統領。やまとの核保有宣言から日本に核開発疑惑を抱き、これを口実に日本の再占領という強硬解決を目論む。
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デビッド・ライアン
米側の代表としてシーバットに同乗していた海軍大佐。同艦の反乱後は監視下に置かれ、海江田の天才的策略を間近に目撃する。
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竹上登志雄
日本国内閣総理大臣。不戦の誓いを胸に、日米の開戦と核を保有するやまとの国際的孤立の回避に奔走する。
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深町洋
海上自衛隊の潜水艦たつなみ艦長。海江田のライバルだが性格は正反対で、やまとの行動にも反発を覚えている。
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たつなみ
海上自衛隊のディーゼル潜水艦。当初はやまとの拿捕に向かうが、米艦隊の攻撃を契機にその突破作戦を支援。深町艦長の大胆な戦術で任務を完遂した。
威嚇にしか使えない核の傘と、実効性が証明されたことのない日米安保条約。その虚飾を暴いた独立国やまとの行動が、日本の目覚めを促し、アメリカの焦りを誘う。
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国家機密である原潜のクルーとなるべく、艦を沈め事故死を装う海江田と部下たち。だがこの時、彼らは別の決意も固めていた。
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海江田艦が事故で発した音を分析し、深町は即座に偽装を看破。ソナー員の優秀な耳こそ、潜水艦乗りが唯一信じる「目」なのだ。
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出航直前のシーバットを仰ぎ見る海江田。この時、彼は固い決意をこめて、その船体にナイフで「やまと」の文字を刻んだ。
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やまとの反乱後、米軍はすぐさま対潜爆雷による攻撃を敢行。以降、護衛に回った自衛隊もろとも、武力で排除せんと攻撃してくる。
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やまと問題収拾のため、自衛隊艦へも攻撃を加えた米国政府。日本政府の反発をよそに、超大国は本音とエゴを叩きつけてくる。
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やまと護衛に向かった自衛隊艦は、米艦隊から攻撃されても耐えるしかなかった。「専守防衛」とは、事実上の交戦権放棄なのだ。
物語の舞台は、限りなく現実に近い架空の現代世界。ことに日本を取り巻く政治情勢は極めてリアリスティックで、日米安保や憲法九条問題などが、作品を貫くテーマとして大きくクローズアップされている。
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憲法九条への抵触を避けるため、シーバットも表向き米第7艦隊に所属。乗員も全員が事故によって死亡したと偽装されていた。
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米第7艦隊にも、シンボル的存在である空母エンタープライズをはじめ、実在艦が多数登場。物語に一層の迫真性を加えている。
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物語を牽引するのは、やまとをはじめとする各艦船同士の知略を尽くした戦い。潜水艦内部の描写も極めてリアルである。
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もう一つの縦糸が、日米両国における政治ドラマ。竹上首相と米政府の息詰まる会談なども、緊張感溢れる見どころとなっている。
放映当時の世相が生んだリアリティ
本作が放映された1996年といえば、1991年に勃発した湾岸戦争の記憶も新しかった頃。我が国においても、自衛隊のPKO派遣を皮切りに憲法九条問題が再燃し、国防議論の新局面が拓かれた時代だった。また、湾岸戦争以降は「世界の警察」を自認するアメリカのエゴを糾弾する声も強く、それだけに、TV放映された本作のテーマは、一層の重みを持っていたと言える。無論それは、21世紀に到るも何ら変わるものではない。