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作品名 | 闇夜の時代劇 老ノ坂/正体を見る |
作品名 (ひらがな) | やみよのじだいげき おいのさか/しょうたいをみる |
Title (英語表記) | HISTORICAL DRAMA IN A MOONLESS NIGHT |
放送開始 | 1995年2月19日 |
話数 | 全2話 |
スタジオ | 新規事業部 |
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キャスト
〈老ノ坂〉
明智光秀/廣田行生
煕子/唐沢 潤
織田信長/井上倫宏
酒呑童子/佐々木 敏
ナレーション/有川 博
〈正体を見る〉
下忍/佐々木 敏
半蔵/井上倫宏
女中/唐沢 潤
家康/廣田行生 -
スタッフ
企画/三島由春(日本テレビ)
井上 健(日本テレビ)
植田益朗(サンライズ)
音響/浦上靖夫
音楽/工藤 隆
プロデューサー/初川則夫(日本テレビ)
前田伸一郎(日本テレビ)
指田英司(サンライズ)
〈老ノ坂〉
作画/塩山紀生
脚本・演出/今西隆志
〈正体を見る〉
キャラクターデザイン/そえたかずひろ
美術/古谷 彰
色指定/佐藤美由紀
作監/菱沼義仁
編集/鶴渕友彰
脚本・演出/富野由悠季
深夜アニメならではの異色実験作
【ストーリー】
〈老ノ坂〉
戦国時代の天正10 年(1582年)。織田信長の命で羽柴秀吉の援軍のため西国に向かう明智光秀は、道中の老ノ坂で、かつて彼の先祖に退治された鬼、酒呑童子の亡霊と出会う。
〈正体を見る〉
織田信長が明智光秀に討たれた後、徳川家康は伊賀の里に現れた。信長に恨みを抱く伊賀の名もない下忍は、信長の忠臣だった家康を討とうとする。
【解説】
日本テレビの深夜番組「ネオ・ハイパー・キッズ」の枠内で放送された、単発のTVスペシャル作品。サンライズ作品としては初の本格的な時代劇となる。放映当時は、深夜アニメはまだ黎明期であったうえ、撮影や処理に当時はまだ珍しかったデジタル技術を導入した点で、先駆的な実験作であった。15分のピソード2本からなり、いずれも戦国時代の「本能寺の変」の前後を舞台としているが、それぞれ独立した内容である。
「歴史のif」を描いた時代劇として、史実を題材としながらも大胆なアレンジが加えられ、独自のキャラクターが生み出された。
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明智光秀
織田信長に仕える武将。長年の間、信長に忠義を尽くしてきたが、冷遇されているため、心の底に迷いを抱えている。
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煕子
6年前に病で死んだはずの光秀の妻。老ノ坂に現れ、光秀に信長への謀反を唆す。実は酒呑童子が化けた姿だった。
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酒呑童子
平安時代に、光秀の遠い先祖である源頼光によって退治された鬼。丹波と京の間にある老ノ坂の首塚に眠っていた。
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下忍
伊賀の里の名もない下忍。徳川家康の暗殺を謀る。忍術の腕には自信を持っているが、上忍には認められていない。
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服部半蔵
下忍を翻弄する謎の若侍で、実は女。その正体は伊賀の上忍の服部半蔵。織田信長の死後、徳川家康と盟約関係を結ぶ。
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徳川家康
織田信長と同盟関係にあった三河の武将。伊賀の里を密かに訪れ、謎の若侍、すなわち服部半蔵と会談していた。
〈老ノ坂〉は全編モノクロを基調として幽玄な雰囲気に。〈正体を見る〉では、モノクロを基調としたパートカラーで、独自の効果を演出。
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羽柴秀吉を支援するための出征の前、明智光秀の部下たちは、本能寺にいる織田信長に反旗を翻すことを具申する。だが、光秀はそれをかたくなに断り、部下たちを一喝した。
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光秀の前に死んだはずの煕子が現れ、信長の光秀に対する非情な所業の数々を語りだした。それを聞く光秀の心は揺れる。
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煕子の正体は酒呑童子だった。一刀のもとに鬼を斬り伏せる光秀。しかし、鬼の言葉は、光秀に謀反の意志を固めさせる。
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家康暗殺のため屋敷に忍び込んだ下忍は、くノ一の化けた女中とすれ違い、殺気を気取られながらもやり過ごす。
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下忍は、温泉に浸る家康に襲いかかろうとするが、屋敷で家康をもてなしていた謎の若侍がその前に立ちふさがる。
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家康をかばって下忍の前に立ちはだかった若侍の正体は、女であった。女が衣服を翻すと、無数の蝶が飛び出して下忍を翻弄する。この女こそ、伊賀の上忍、服部半蔵だった。
各話15分の短編作品ながら、カット割り、美術、色彩、質感など、当時の通常のアニメ作品にはない複雑なテクニックが意欲的に導入された。
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明智光秀の行軍。通常のアニメでは3~5フレームで終わるところを、15フレーム以上もの長いカットで表現した。
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平安時代の酒呑童子の伝説を描いた絵巻物。コンピュータ上のエアブラシで彩色し、さらに和紙のテクスチャを合成して表現している。
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屋敷の床下に忍び込んだ下忍。屋敷の構造、使う小道具などの綿密な考証から、場面と物語が逆算されている。
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下忍の口へ入りそうになる毒薬の滴。〈正体を見る〉では、モノクロを基調としつつ、重要な場面ではカラーが効果的に使用された。
深夜の特別番組枠ならではの実験性と時代考証
1990年代後半から、アニメ業界では、彩色などでデジタル処理の導入が急速に普及した。この『闇夜の時代劇』は、そうしたデジタル処理が本格的に普及するまさに前夜という時期に作られた作品だった。市販化された本作品のビデオでは、メイキングの裏話も収録されており、アニメ制作がデジタル化される移行期の、歴史的資料といえる側面を持つ。また、本作品のもうひとつの特徴は、大人の視聴者を意識した時代劇作品として、リアルな考証性を重視した点だ。特に〈老ノ坂〉では、京都近郊にある酒呑童子の首塚の現地取材が行なわれ、劇中でのイメージの参考にされている。〈正体を見る〉では、忍者の小道具や術、忍者屋敷の構造などに徹底した時代考証が行なわれている。