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2021.11.10

サンライズフェスティバル2021 REGENERATION『ドキュメント太陽の牙ダグラム』『チョロQダグラム』『ザブングルグラフィティ』上映回トークイベントレポート

サンライズとバンダイナムコピクチャーズの上映イベント「サンライズフェスティバル2021 REGENERATION」(サンフェス2021)が開催され、10月23日(土)にはグランドシネマサンシャインにて、『ドキュメント 太陽の牙ダグラム』、『チョロQダグラム』、『ザブングルグラフィティ』が上映され、38年前に「三本立て」として上映された当時と同じ形での一挙上映が行われた。


上映前にはトークイベントが開催。ゲストには『太陽の牙ダグラム(以下、ダグラム)』の原作・監督の高橋良輔さんと『戦闘メカ ザブングル(以下、ザブングル)』の企画、『ダグラム』で設定制作などを担当した井上幸一さんが登壇。当初は、メカデザイナーの大河原邦男さんがゲストとして登壇予定だったが、体調不良のために大事をとって欠席。大河原さんから指名される形で、当時の制作状況を良く知る井上さんが登壇する形となった。

トークイベントは、サンライズの内田智子さんが司会を担当。来年で40周年を迎える『ダグラム』の制作当時の話で盛り上がったイベントの様子をレポートしていこう。

登壇の挨拶に続いて、当時の3作品一挙上映の際の舞台挨拶の思い出からトークイベントがスタート。


高橋監督は「舞台挨拶は新宿でありました。駅から映画館に向けて歩いていると、スーツケースを持って歩く富野(由悠季)さんとバッタリお会いして。会った時は普通の格好だったんですが、舞台挨拶の時には上下白のスーツに身を包んで颯爽という感じで登壇されて。「ああ、慣れているんだな」と思いましたね。ちなみに、僕は舞台挨拶が初めてでした。それから、『ザブングル』のオープニングが始まると「ウワッ!」って劇場内が沸き立ったんですが、『ダグラム』の主題歌が流れるとシーンと重苦しい雰囲気になって。そんな幕開けでしたね」と当時を振り返る。


続いて話題は、制作開始当初の話へ。高橋監督は井上さんの登壇に関しては「大河原さん以外で『ダグラム』のことをよく知っている人となると、井上君しかいないんですよ。ライターの星山博之さん、共同監督として後半部分を全部監督してくれた神田武幸さんももういらっしゃらない。キャラクターや作画監督チーフの塩山(紀生)さんも残念なことになってしまって。『ダグラム』に関しては、作った本人は結構細かいところを忘れていて、それをフォローしてくれるのが井上君なので。今日はもう、井上君におんぶに抱っこで、忘れたことを全部フォローしてもらおうと思っています」と井上さんを頼もしく思っていると発言。ここから高橋監督と井上さんは、当時を思い出したやりとりを語り始めた。

井上さんは、「高橋監督のオーダーを聞いて、大河原さんのところに行ったことがあまりないんですよね。どちらかと言うと神田さんが現場で画作りをされていたので、神田さんからのオーダーで大河原さんのところに行っては怒られたり、「オーダーの意味がわからない」と言われたこともありました。神田さんはミリタリーなんかが詳しいので、それで共同監督をお願いしたんですよね?」と話し、神田監督の参加した理由を高橋監督に聞く。高橋監督は、「そうです。僕はミリタリーはむしろ弱いと言っていいくらいのなので、そういうところはまた神田さんにおんぶに抱っこで。だいたい、何にしてもおんぶに抱っこなんですよ(笑)」と答えた。


さらに、井上さんは当時のメカデザインの発注の様子について話を続ける。「新しいコンバットアーマーを作るたびに、神田さんからいろいろ発注がありましたね。アイアンフットなんかは、その話数の担当演出さんがイメージスケッチを書いてくれて、それを持って大河原さんのところに頼みに行って、大河原さんから「このメカはどういう風に使うの?」と聞かれても、神田さんは絵コンテができる前からそれを考えているので、「こう使います」と伝えたりもしていて。神田さんはコンバットアーマーの構造にもこだわっていたので、例えば2人乗りのコンバットアーマーのブロックヘッドのコックピットをデザインしてもらう時には、上に座っているのは戦車で言う車長だから、下に座るパイロットにタイミングを指示するのに蹴ることができる位置に座席を配置して欲しいとお願いしたり。そういう芝居作りのことを神田さんがいろいろとオーダーしてくれて、それを大河原さんが形にしてくれましたね」
その流れから、高橋監督を良く知る司会の内田さんが「高橋監督は、皆さんに「あとは任せた!」と言われているとのことですが、実際にそうなのですか?」と質問。
「本当にそうなんですよ(笑)。「あとは任せた!」、「これで98パーセントできた」とか、そうやってお任せする気持ちは強いです。最初のイメージを自分で作って、これを伝えればスタッフは多分、その路線でもっと工夫してくれるだろうということがありました。『ダグラム』は久しぶりに現場に戻ってきたという形だったので、現場作業に不安があったものですから、そこでも神田さんにはお世話になりました」と高橋監督は自分の仕事の向き合い方、そして盟友である神田監督についての思い出を振り返った。
「お任せ」するという高橋監督の仕事のスタイルを踏まえて、一緒に仕事をしてきた井上さんがその頃の高橋監督のことを振り返る。「高橋監督は、メインのロボットを作る時には、かなりのこだわりをみせるんですが、制作現場ではあまり細かいことを言わない人なんです。主人公メカのダグラムに関しても、デザインを確定に持っていくまでだいたい1年くらいの時間がかかっていますね」と、ダグラムのデザイン決定までの作業を振り返った。そして、変更が重なったデザインについて井上さんは「第1話に登場した、“朽ち果てたダグラム”にミサイルポッドを付けた方がいいと、ラフを描いたのは良輔さんですよね?」
井上さんの質問に対して「あれは僕がラフを描きました。ただ、ダグラム本体に関しては、仕事のオファーが来た時にはデザインのほとんどが出来ていたので、何も意見を言っていないというイメージですね」と語った。さらに高橋監督はその話に続けて、『ダグラム』の初期の作業についても振り返る。「『ダグラム』に関わったのは1981年。79年が『機動戦士ガンダム』で、当時のサンライズの役員で、企画部長だった山浦栄二さんがビデオを全巻持ってきて「とにかく、これを毎日観てくれ」と言ってきて。「今は、こういうものができる時代になったんだ」と。それで、僕は毎日観て、富野さんのガンダムの素晴らしさを身体で受け止めたんです。でも、同じことをやるわけにはいかないなと。シンプルに『ガンダム』では、ホワイトベースという戦艦が出てくるので、これは海軍的なものは入っているなと。そして、カタパルトからロボットが飛び出していくわけだから、空軍も入っている。安彦(良和)さんのデザインだと思うんですが、キャラクターの着る制服も格好良くて、海軍と空軍の格好良さを表現している。じゃあ、あとやれることは、汗とほこりにまみれる陸軍しか残っていないだろうと。そういうことを決めるのは僕がやりました。お話に関しては、全共闘世代だった星山博之さんが、デロイア7のキャラクターにエネルギーを吹き込んでくれたという思いがありますね」


そして、話は再び“朽ち果てたダグラム”のイメージが作られた原点へと戻り、高橋監督は「制作が始まって、『ダグラム』の第1話、後に第2話になる話が作られていく中で、自分としては作品を象徴する絵がまだ出来ていない気がしまして。会社からの願いは「ロボットを売ること」。他は全部任せるから、とにかくロボットを売って欲しいと言われていて。その時も、「これでロボットが売れるのかな?」というような思いがありまして。ロボットが物語の中で役目を果たすのも重要でしょうけれど、その前に観る人の何かを掴むものがないかと考えていまして。その時の、松本零士先生の『戦場マンガシリーズ』が目に止まりまして。「このスピリッツを『ダグラム』の中に入れられないだろうか?」といろんなスケッチをする中で、あの“朽ち果てたダグラム”に行き着きまして。『ダグラム』という作品に関して、自分の中で「これでいいだろう」という第一歩は、あの絵にあったと言えると思います」と語った。
そして、“朽ち果てたダグラム”について、井上さんがさらに詳しくフォロー。「お話としては、あの姿に持っていかないと終わらないのに、武装を付けるまで延々と時間がかかりましたね。おかげで話数は75本にもなってしまいました。その過程で、大河原さんには設定を何度か描き直してもらっています。まず、“朽ち果てたダグラム”は、リニアガンは背負っているけど、腕のチェーンガンが付いていないんですね。つまり、リニアガンが先に設定されて、チェーンガンは後から装備されました。頭のミサイルポッドも後から追加されたものです。こうした、どんどん変更が加わる要素も大河原さんは「そうしなくちゃならないんだよね」と全部描いてくださった。そういうところでご苦労をおかけしたなと思います」
その後も、当時の制作スタジオの様子に絡んだ高橋監督の日常や脚本陣とのやり取りなどの話題を経て、話題は再び“朽ち果てたダグラム”へ。井上さんから、「僕が一番忘れられないのは、第1話の作画打ち合わせの時にレイアウト用紙に「だいたいこういういうこと」というイメージを描いて、「絵コンテはない。ゴメン」と言ったことでした」と当時の話題が振られると、高橋監督も反応。「迷いに迷って、“朽ち果てたダグラム”に行き着くまで、予告的な第1話を作りたいと、当時の制作の要であるプロデューサーの岩崎正美さんに頭を下げて頼んだんです。「もう制作は進んでいるのに? じゃあ、どれくらいでできるの? シナリオもコンテも含めてここまでなら現場は待つから、責任を持ってそれをやってね」と言われたんですが、その期間にコンテも、シナリオも上がらなかった。出来たのは“朽ち果てたダグラム”の数カットだけ。それもコンテになるのではなく、僕の頭の中にあるだけですから。神田さんと集まった作画さんの前で、みんながコンテが出てくるんだろうと思ていたところに、“朽ち果てたダグラム”の全身と部分を描いて、それの説明を延々としている。その時に神田さんんが「これは、コンテはひとつも上がっていないんだな」って気付いて。僕の説明に青筋を立て始めた原画マンを前に、「じゃあ、だいたいイメージが固まったからここまで」と神田さんが収めてくれたから、打ち合わせで血を見ないで済んだという(笑)。僕は頼りにしていた星山さんや、頭を下げて「一緒にやってよ」と頼んだ神田さんをはじめとしたスタッフを前にして、3週間伸ばしてイメージしかできてなかった。あの時はみんな呆れて離れるんじゃないかと思っていたけど、そんなこともなく、最後までやることができたので、「ダグラム」のチームは良かったよね」と、作品始動時の苦労、そしてついてきてくれたスタッフへの感謝を口にした。告知タイムに入り、トークも終了の時間に。
締めの挨拶として、これから上映を観るファンに向けて、ゲストからメッセージが贈られた。井上さんは「今回の上映の中で、一番の見所となるのは、『チョロQダグラム』です。75本かけて作った話が、たった7分で終わります。それで全部わかりますので、この濃縮度をぜひ楽しんでください」と語った。


高橋監督は、「今日観ていただく『ドキュメント 太陽の牙ダグラム』は、再編集したもので、それも相当わがままな再編集だったと、たまに見直して、自分でもそう思っています。その後もいろんなわがままをサンライズに聞いてもらえて、作品を作ってきました。それが、この『ダグラム』の再編集版は、少しジャーナリスティックな視点が入っていると思います。それは、その後も自分のテーマとして繋がっていて、『FLAG』という作品や、この間までやっていて企画でポシャってしまった作品もカメラマンを主役にしたものを作ろうとしていたりするのも、全てこの『ダグラム』の再編集版から出発しているなと思います。もうひとつは「父と子」というテーマ。『ダグラム』は自分のデビュー作だと思っているし、作り手というのはデビュー作を引きずるんだなと思って、自分のことを振り返っています。そうしたところも含めて、40年も経ったのに、まだこうした上映があるという幸せを感じています。今日は本当にありがとうございました」と、『太陽の牙ダグラム』が自身の原点であることを改めて語って、トークイベントは幕を閉じた。

 

トーク後には、高橋監督と井上さんの楽屋に伺い、本日のトークショーの感想を伺った。

「会場に皆さんが来ていただいて、嬉しかったなぁ。もっと少ないかと思っていたけど、たくさん来てくれて。今日の話の中で印象に残っているのは、山浦さんの言葉ですね。「とりあえず、ロボットを売ってくれ。あとは好きなことをやっていい」と。やっぱり、ものを作るということの基盤は経済ですよ。経済的な基盤があって初めて映像というお金がかかるものが作れる。そこを「大事だよ」と叩き込んでくれて、それでも作るということの自由度を最大限に与えてくれた山浦さんには感謝していますね。そしてサンライズの自由さ加減が、高橋良輔という作り手を形作ってくれたんだなと、『ダグラム』を観ながら思いだしましたね」(高橋)

「観客を見ていて、「やっぱりそうだね」という年齢層で、圧倒的に男性が多いというのは、まさに「高橋良輔節の世界」って感じでしたね。もちろん、ザブングルファンもいると思うんですが、今日は良輔さんファンが多かったのかなと。そういうところも含めて、サンライズフェスティバルは時々覗くと、「ああ、本当にありがたいな」とそういう気持ちになりますね。今のご時世だと、映像ソフトを持っていたり、ネットで観ることもできるんだけど、大画面で観る楽しさというのは絶対にあるので、今回のような機会があればぜひ観て欲しいですね。そして、今日のトークでは昔のネタを少し振ることができたのも良かったです」(井上)

10月31日で幕を閉じた「サンライズフェスティバル2021 REGENERATION」は、大阪会場での開催が決定。今回上映された『ドキュメント太陽の牙ダグラム』、『チョロQダグラム』、『ザブングルグラフィティ』の3本同時上映も行われる。東京会場に来ることができなかった大阪のファンは、ぜひ劇場に足を運んでみてほしい。
 

日時:2021年11月13日(土)18:00開映
上映劇場:TOHOシネマズ 梅田
(ゲストトークショーはありません)