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2022.01.20

クリエイターインタビュー 第8回  米たにヨシトモ<後編>

4回に渡ってお届けしてきた「勇者シリーズ」のインタビュー企画の最後を飾るのは、『勇者王ガオガイガー』の監督を務めた米たにヨシトモさん。後編では、『勇者王ガオガイガー』に込めたこだわり、その後『勇者王ガオガイガーFINAL』や『ベターマン』へと広がっていく「勇者王ユニバース」の誕生の経緯などについて語ってもらった。

 

――主人公の設定について伺いたいのですが、獅子王凱と天海護という、ヒーローと少年という組み合わせにしたというのも、これまでの勇者シリーズを意識した結果でしょうか?

米たに いろいろと紆余曲折はあったんですが、勇者と少年という形で落ち着きました。サイボーグは少年と同い年でコンビにするとか、ラーメン屋台がロボに変形してナルトパンチをかますとか、面白いアイデアも会議で飛び出しましたが、通らなかったですね(笑)。

――打ち合わせの中で出てくる、そういう細かいアイデアを検証して形作っていったのが『勇者王ガオガイガー(以下、ガオガイガー)』だったわけですね。

米たに 本当にいろんな方の意見が入りました。私も「これがやりたいんじゃ!」みたいなものをバーンと描いて。でも、理解されないネタもありました。例えば、ゴルディオンハンマーも初期段階ではダメでしたね。「トンカチは格好悪いから玩具では出せない」って言われました。今でこそアメコミ映画の『マイティ・ソー』などのおかげで立派な武器として認識されていますが、当時の常識では厳しかったです。そこで、「こうやって戦います!」というロボットの変形アイデア等のラフ画を提出して、ようやくタカラ(現:タカラトミー)さんが折れてくれて。あとは、黒いロボットもダメだと最初は言われましたね。子供向けだから、派手な色がついていないと売れないと。でも、試作品を作っていくと、格好良さが理解してもらえて、だんだんとタカラさんも乗り気になって歩み寄って貰えたという感じはありますね。

――1年かけたシリーズというのは、やはり作業的には大変でしたか?

米たに 『ガオガイガー』が終わった時は、もう心身ともにボロボロでしたね。当時のコンテに、自分の思いや勢いみたいなものが書いてあるんですよ。「この作品を自分の人生に捧ぐ」みたいなことが、筆でデカデカと。今見ると「バカすぎて最高」って思います(笑)。いえ、それくらい勇気だけを信じてバカ一直線で前進する気持ちがないとできなかったんです。毎日のように泊まり込んで作業して、本当に「俺の魂を聞け!」みたいな感じで。途中で制作スタッフが入院したりということもあったりと、楽しい反面、なかなかハードな環境でもありましたね。

――『ガオガイガー』で勇者シリーズは終わってしまいますが、ここから「勇者王シリーズ」というか「勇者王ユニバース」とも言える展開がスタートします。同じ世界観を共有する『勇者王ガオガイガーFINAL』、『ベターマン』や『まりんとメラン』などに関しては、いつ頃から構想されていたのでしょうか?


米たに 実はガオガイガーのTVシリーズを始めた頃から、その後に作りたいオリジナル作品の構想がたくさんありました。ただ、会社としては一応、『ガオガイガー』の後も、勇者シリーズをやめる気はないフリだけでもしようという空気があって。良輔さんを中心にフォトグラファーを主役にした勇者シリーズの新作企画を動かしたりもしていたんですが、やはり大人の事情でシリーズは終わりました。CG黎明期で予想以上に制作予算がかかった『ガオガイガー』は赤字となり、最終作の監督としても反省しきりでした。ただ、タカラの玩具はその後、再販されるほどに売れてくれて、フィギュアやレーザーディスクの売り上げも好調だったため、アニメでの赤字を取り返し、OVAで『ガオガイガーFINAL』を作るGOサインが出たんです。ただ、OVAはテレビシリーズのような制作スタッフのローテーションが組めないので、効率が悪くて予算もすごく掛かるんです。バンクもそんなに使えないですし。それをOVAにまだ慣れていなかった当時のサンライズも理解していなかったんでしょうね。当初は制作期間も1年で終わると思っていたんですが、全然終わらなくて3年以上も掛かってしまい…。全8話構成でスタートしたんですが、お話も入り切らず、最終回だけ尺を増やしてもらってなんとか終わらせることができたという感じで、またしても予算的には大赤字です。自分の考えでは、1回分の尺をもっと長くする予定でいたんですが、予算の問題で短くしなければならず。本当は、「覇界王」のエピソードも入れるはずだったんですが、全く入りませんでした。とはいえ尻切れトンボで終わらせるわけにもいかないため、ああいった形でFINALは幕を引くことになりました。

――世界観を共有する『ベターマン』の放送は『ガオガイガーFINAL』の前になりますが、どのような形で作業されていたのでしょうか?

米たに 放送時期は前ですが、『ベターマン』や『BRIGADOONまりんとメラン』をやりながら『ガオガイガーFINAL』もやっていました。『ガオガイガーFINAL』は、監督が故・山口祐司さんで、私は総監督として適当に口だけ出していればいいと言われたんですが、山口さんは体調を崩されて早々に途中降板することになり、自分が監督の立場に戻ったこともあって、余力が全くなくなってしまって…。そういう意味では、尺の問題も含めて、当初自分がやりたいと思っていたことの半分くらいしかできなかった印象ですね。

――そうした状況だからこそ、『ガオガイガーFINAL』はより密度が詰まった構成になっているわけですね。

米たに いえ、全部のクオリティを上げる余力が無く、どう逃げながら戦うかみたいな感じでした。制作スタッフからは仕事が遅い監督と思われていましたが、意地になって畳一畳分くらいのデカいBG原図を描いたり、自らキャラやメカも描き直したりで、全然終わりが見えてこなくて…。たくさんのスタッフにも助けられましたがなかなか追い付かず。最終巻の頃は、家賃削減のために小さなスタジオに引っ越したんですが、それでも総作画監督の木村貴宏さんやメカ作画監督の中谷誠一さんらメインスタッフと三角形で席を並べて全力で作業できたので、超重量級映像のクオリティも何とか保てたという感じですね。

――その後、『ガオガイガーFINAL』が『勇者王ガオガイガーFINAL GRAND GLORIOUS GATHERING』として再編集されてテレビシリーズとして放送され、そこに『ベターマン』の要素が出てくることで、作品の繋がりがクローズアップされるようになりますね。

米たに 当時、サンライズ上層部に呼ばれて、他社のアニメの制作が遅れて放送枠が空くので『ガオガイガーFINAL』を再編集して放送できるようにしてくれというようなことを言われて。確か、私自身も『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に関わっていたタイミングで、滅茶苦茶忙しくて。それに、OVAをテレビシリーズに編集しなおすと言っても、8話しかない『ガオガイガーFINAL』を、12話分に延ばすよう言われ…。そこで、仕方無く『ベターマン』の要素を入れて、さらに旧テレビシリーズのバンクも持ってくるような形で構成を全部やり直しました。毎日、編集機をひとりでぎゅるぎゅる回しながらの作業で、ほとんど寝る余裕もなく、歩いていてもめまいがして、空がぎゅるぎゅる回っていました。

――『ベターマン』の時は、『ガオガイガー』と世界観が繋がっているのは、裏設定程度だったのでしょうか?


米たに 最初は『ガオガイガー』のキャラがチョイ役程度で出るくらいだったんです。手塚治虫先生がよくやっているスターシステムというやつですね。キャラクターを新しく作るのは大変だから使えるものは使っちゃえみたいな。最初はそういう脇役を埋める感じで進めていたんですが、事業部長が「もっとメインキャラも使っちゃえばいいんじゃないの? その方が売りやすくなる」とギラギラした感じで言ってきたので、上からOKが出たならやっちゃおうということで、どんどんリンクさせていったという感じです。

――そこからユニバース的に繋がっていったわけですね。

米たに 元々、どの作品も脚本家たちと時系列構成をしてきたので、細部に渡ってのコラボが実現できました。そして、「ゆくゆくは『ガオガイガー対ベターマン』をきちんとアニメ化したい」と当時から言っていました。そんなに細かくはないですが、シリーズ構成までできていたんです。ただ、なかなか企画が通らず、ようやくやれそうな機会もあったんですが、結局は立ち消えてしまいました。

――その後、『ガオガイガー』シリーズの脚本を担当していた竹田裕一郎さん著の小説という形で、『覇界王〜ガオガイガー対ベターマン』が発表されましたね。

米たに サンライズで矢立文庫というサイトの立ち上げのタイミングで、竹田さんの方から小説でFINALの続きを書きたいという要望をもらいまして。それで実現したという形ですね。私も原案監修として二人三脚で作り上げていきましたが、連載が思った以上に長くなって完結するまでに5年かかってしまって。ある意味共作的なものですが、きちんと終わらせることができてホッとしています。アニメとしての映像化はされませんでしたが、ゲームの『スーパーロボット大戦30』で使っていただいて。そちらも設定や映像、声優レコーディング等も一部監修をさせてもらいました。

――結果的には長く愛される長期シリーズになったわけですが、感慨などはありますか?

米たに やはり嬉しいですね。小説での5年間はほぼ儲からなかったんですが、お金に換えられない経験を積めました。今現在、『覇界王~ガオガイガー対ベターマン~』は、藤沢真行氏によるコミカライズがウェブにて無料連載中で、監修作業でそれなりに忙しい状況なんですが、4巻まで発売中のコミックスも売り上げ好調です。作品は、裏の事情など関係なく辛辣に批判され叩かれることもありますが、結果的にこれだけ長く愛されるシリーズになれたのは、ありがたいことだと素直に感謝しています。

――『ガオガイガー』を手掛けたことで、その後の仕事には何か影響はありますか?

米たに あまり実感は無いです。ただ、私よりもプロデューサーが営業する際に「米たにが関わっています」と言うと、協力してくれるフリースタッフさんが多いと聞きますね。なんか、「ガオガイガーの監督がどんな人なのか見たかった」と言ってくれる方が結構いるようで、そういう意味では助けられていますね。

――『ガオガイガー』は米たにさんのパーソナリティ的な部分が反映されている作品だろうと、観ている側はすごく感じるがゆえに、どんな方が監督したのか知りたくなるんでしょうね。

米たに 当時子供だった人たちが業界に入って、昨今の作品のメインスタッフポジションについているということもあり、自分が一昔前の良輔さんのような、そういう巡り合わせの順番が回ってきたのかと思うとありがたいですね。あとちょっとしたら「古臭い昔の監督」とか言われるんだろうけど(笑)。こちらも業界全体に恩返ししたい、という気持ちもあります。そうやって、世の中は回っていくんだろうと思うので、後続の若手に魂を引き継いでいって貰えたら嬉しいなと思いますね。

――ファンとしては、米たにさんによる『覇界王』の映像化に期待している部分もあると思いますが、それに対するお気持ちはいかがですか?

米たに 若い頃だったらできると思って企画を出したんですが、自分が歳を取ったらやはりスタッフやキャストも歳をとるし、関わった方で鬼籍に入られてしまった方もいらっしゃる。とっとと作りたかったんですが、時期的に今現在は難しいなと。私自身も、あの頃に比べると体力もないですから。とは言え、総監督だけやって誰かに現場を任せることもできないタイプなので、アニメ化はなかなか困難ですね。『覇界王』は重たい作品でもあって、自分で細部まで監督すると時間も足りなくなってしまう。技術革新が進んで、本当に優秀なスタッフが奇跡的に集まって「やりましょう!」って言ってくれれば実現するかも…という感じですかね。最初の『ガオガイガー』の頃は、世間的にアニメの制作本数がすごく減った時期で、他所のスタジオのスタッフも手が空いていることが多くて。ヘルプを頼むと、皆さんが集まって手伝ってくれました。それが本当に感動的でしたね。それこそ、アニメの中の話みたいに精鋭部隊がピンチの時に助けにきてくれた。「俺たちの勇気はまだまだ死なないぜ!」って感動して、鳥肌が立った。そういう意味では、運が良かった監督人生だと思います。人材不足が深刻な昨今なので、今後そういう奇跡的なことがあれば、もしかしたらまた作れるかもしれないなという感じですね。

――では最後に、サンライズワールドを読まれている方にメッセージをお願いします。

米たに 1月19日にTVの勇者シリーズで流れた全ての歌を収録したCD-BOX『DX BRAVEST』が発売されます。コンセプトアドバイザーとして関わり、遠藤正明さんが歌う新曲「ぜんぶ勇者が教えてくれた」等、PVでも映像編集の演出担当をさせてもらいまいた。現在、ショートバージョンがYoutubeで流れているんですが、BOXにはフルバージョンのPVも収録されています。歴代勇者シリーズの中から、高画質化できるオープニングやエンディング、バンクシーンを繋げ合わせて、熱い仕上がりになっているので、ファンの方にはぜひフルバージョンの方も観てもらいたいですね。足りない素材も多く、いろいろ制約はありましたが、あとは勇気で補って、可能な限りの魂を込めました。これを観た人が自分の勇気を奮い立たせる起爆剤にしてもらえたら…。大人になった今の自分を励まして元気にする、日々生きていく糧にしてもらえればと思いますね。それによって、作っているこちら側も嬉しく励みにもなるので。また、『超勇者展2』も1月22日から開催されます。そちらの会場でも映像が流れますので、ぜひ見入ってもらって、熱き思いをたぎらせて、現実世界の寒さなんか吹っ飛ばしていただけると嬉しいです。
君よ、勇気とともにあれ!!
勇気よ、君とともにあれ!!


米たに ヨシトモ(よねたに ヨシトモ)1963年5月12日生まれ、東京都出身。アニメーション監督、演出。
『笑ゥせぇるすまん』(1989)にて初監督を努める。サンライズ作品には演出・絵コンテで『鎧伝サムライトルーパー』等に参加。勇者シリーズ8作目となる『勇者王ガオガイガー』を監督。『ベターマン』、『BRIGADOON まりんとメラン』で独自の世界観を構築する。

 

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