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2022.09.15

【第07回】高橋良輔監督旅行記「飛行機雲に誘われて」

 

飛行機雲に誘われて……その7『キューバの1』

 えっ、急にキューバって!? アラスカはおしまい? とおっしゃるのは重々承知、ごもっとも至極。あたしらとしてもこの後ビックリの白熊ばなし、迫力の氷河探検、意外にのどかなヤナギランの群生などなど書きたいと思っていたのだが、


「監督はもっと色々のところに行ってるんですよね。アラスカばかりでなくちょっとばかり先を急いでくれますぅ」

 てな矢立文庫編集からの要望もあり、このあいだ行ってきたばかりのキューバのさわりを少々、という訳であります。
 キューバというと何をイメージするか、葉巻かカストロ&ゲバラの革命か、はたまたヘミングウエイか? あたしらはタバコを吸わないし政治や革命という話には距離を置いてきたノンポリなので、断然ヘミングウエイであります。もちろんヘミングウエイが政治や革命に興味がなかったとは言いませんが、まああたしらにとっては飲んだくれの行動派のジャーナリスト上がりの文学者で、挙句に62歳で自殺、というそのあたりに惹かれるんであります。ちなみにあたしらが惹かれる人物群は60歳前後であちらの世界へ行ってしまう人が多くて、例えば師の手塚治虫をはじめとして開高健、小津安二郎、石ノ森章太郎、藤子不二雄F氏などなど、極論するといずれも為すことを成したらさっさとあちらへという感じがいたします。それはさておき……。
 今回のキューバ行きはただの思い付きで飛行機にはやたら長く乗っていたのだが滞在は3泊2日ハバナのみという短いもの、そんなこんなで旅のテーマはヘミングウエイに限定である。およそ60年の変転の人生で一番長く住んだのがキューバ、といううことで自身、

「ここキューバには私が持っているすべてがある」

 と書いている。よほど相性が良かったのだろう。ハバナでのヘミングウエイ観光であれば行くべきところはそう多くはない。まずはハバナ郊外にあるかつてのヘミングウエイ邸『フィンカ・ビヒア』現在はヘミングウエイ博物館になっている。あとはそこから車で10分か15分の“老人と海”の舞台となった漁村『コヒマル』とよく通ったというレストラン『ラ・テラサ』そこからまた車で2、30分ハバナ市街に戻って“誰がために鐘が鳴る”の第一章を書いたというホテル『アンボス・ムンドス501号室』ここも今は小さな博物館になっている。そのホテルがある通りがハバナ一番の繁華街“オビスポ通り”で、東へ3ブロックほど行き右へ曲がって少し行けばヘミングウエイがモヒートをよく飲んだというレストランバー『ラ・ボデギータ・デル・メディオ』があり、曲がらずまっすぐ東に進んで通りが尽きる寸前左側に、これまた砂糖抜きのフローズンダイキリをよく飲んだというレストランバー『フロリデータ』がある。こう書けばオチはもう見えたであろう。目的は陽気なキューバの音楽に揺られながら両レストランで、

「パパダブルを、むろん砂糖抜きで」

 というだけである。
 やりましたとも。ハハ、パパスペシャルは効くねえ!!

 

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