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- コラム
2022.09.15
【第40回】高橋良輔監督旅行記「飛行機雲に誘われて」
飛行機雲に誘われて……その40
毎年のことだが、夏の終わりは妙に寂しい。
夏の終わりと言うが、暦の上ではもうとっくに秋なのだ。でもあたしらの夏の終わりは今日この頃、つまり8月の終わりから9月の始まり辺りを言う。
友にそんなことを漏らすと、ジジイが言うことじゃないと鼻で笑われる。まあそうかもしれない、人生においては朱夏はとうの昔に、白秋だって終わって玄冬に入ったあたしらなんであるから。
まあしかしこの季節そこはかとなく寂しいのは寂しいんだから仕方がない。そういえばこの写真を見てくんなまし、
小さいころヤンマは憧れだった。今でも悠然と滑空する姿を見ると心が躍る。昆虫にして威厳を感じる。そんじょそこらの人間よりはどこから見ても立派に見える。欲しかったなあ! 竿やら網やらで一日中追っかけていた記憶がある。
シャツに止まらせたヤンマだが家に持ち帰ってテラスの手擦りにとまらせていたらいつの間にかいなくなっていた。周囲を見回したがそこらには見当たらなかった。翅が渇いて最後の力を振り絞って飛んで行ったのだろうか、そうだといいのだが。
そうテラスと言えばこれがあたしらのうちのテラスだ。二人暮らしには分不相応の炉がある。炉で何をやるかと言うとバーベキューなのだがむろん二人だけでやるわけではない、二人だけのバーベキューは侘しいし寂しいハハ。
散歩に出た。こんな林を行く最近クマの目撃談が多い。一人だと結構緊張する。