装甲騎兵ボトムズ

©サンライズ

作品名

装甲騎兵ボトムズ

作品名
(ひらがな)
そうこうきへいぼとむず
Title
(英語表記)
ARMORED TROOPER VOTOMS
放送開始1983年4月1日
放送終了1984年3月23日
話数全52話
スタジオ第1スタジオ
主題歌OP「炎のさだめ」 歌/ TETSU
ED 「いつもあなたが」 歌/ TETSU
音楽配信リンク装甲騎兵ボトムズ TV版 総音楽集
関連リンクhttp://www.votoms.net/
  • キャスト

    キリコ/郷田ほづみ
    ゴウト/富田耕生
    バニラ/千葉 繁
    ココナ/川浪葉子
    フィアナ/弥永和子
    イプシロン/上恭ノ介
    ル・シャッコ/政宗一成
    ロッチナ/銀河万丈
    バッテンタイン/戸谷公次
    ワイズマン/柴田秀勝

  • スタッフ

    企画/日本サンライズ
    原案/矢立 肇
    原作/高橋良輔
    キャラクターデザイン/塩山紀生
    メカニカルデザイン/大河原邦男
    美術/東條俊寿(第1 〜28 話)
    美術設定/岡田和夫(第29 〜52 話)
         宮前光春(第29 〜52 話)
         中山益男(第29 〜52 話)
    作画監督チーフ/塩山紀生
    編集/鶴渕映画
    音響監督/浦上靖夫
    音楽/乾 裕樹
    演出チーフ/滝沢敏文
    監督/高橋良輔
    プロデューサー/長谷川 徹

ストーリー&解説

宇宙戦争を舞台にしたハードボイルドタッチのミリタリーロボットアニメ

【ストーリー】
アストラギウス銀河を真っ二つに裂いた百年戦争の末期、ギルガメス軍の兵士キリコ・キュービィーは、味方の基地を攻撃するという不可解な作戦に参加した。彼はそこでカプセルに入った素体と呼ばれる女を目撃する。ギルガメス軍の最高機密に触れてしまったキリコは、軍から追われる立場に。途中、友軍に救出されたものの裏切りの嫌疑をかけられたキリコは基地を脱出。追っ手を避けながら星から星へといくつもの戦場を放浪する。そして辿りついたウドの街で再び素体を目撃、自分の運命を狂わせた彼女の謎を探りはじめる。しかしその背後には正体不明の秘密結社が控えており、キリコを抹殺せんと様々な陰謀を張りめぐらせるのだった……。

【解説】
凝ったミリタリー描写で大人気を博した前番組『太陽の牙ダグラム』で培ったノウハウを活かし、さらに一歩押し進めた作品。ロボットをキャラクター的にではなく、徹底的に「機械」として描くことでメカファンの支持を獲得、ミリタリー系ロボットアニメの極みとの評価を得た。舞台は地下都市、熱帯のジャングル、宇宙、砂漠化した惑星など1クールごとに移り変わり、バラエティ豊かなストーリーを展開。また、主人公はそれまでのアニメでは類を見ない心に深い傷を負った青年で、作品上の大きな特徴となった。さらに人型兵器、アーマード・トルーパーに用いられた様々なアイデアは、後のロボットアニメに大きな影響を与えた。

キャラクター

平凡な兵士にすぎないはずのキリコだったが、軍の基地でカプセル内のフィアナと出会ったことから、自分の隠された秘密を知っていくことになる。キリコとフィアナ、強く結びつきながら恋人とはまだ呼べない不思議な関係が描かれる。

  • キリコ・キュービィー
  • キリコ・キュービィー

    キリコ・キュービィー

    メルキア星出身のギルガメス軍兵士だったが脱走した。自分の運命を狂わせた謎を追い求めてウドの街に辿りつく。寡黙で無表情な青年。

  • スコープドッグ
  • スコープドッグ

    スコープドッグ

    ギルガメス軍の人型兵器。既に新型が登場しているが、キリコは特にこの機種を好む。全高3,804ミリ、乾燥重量6,387キロ。

  • フィアナ(ファンタム・レディー)

    フィアナ(ファンタム・レディー)

    ギルガメス軍が開発したパーフェクトソルジャー(PS)で、秘密結社に奪われてしまう。覚醒前にキリコを目撃したために彼を愛するようになり、組織を離れる。

  • 仲間たち

    仲間たち

    ココナ(左)は孤児、バニラ(中央)は元兵士のノミ屋、ゴウト(右)はマッチメーカーとしてウドに住んでいた。後にキリコの仲間となる。

  • ジャン・ポール・ロッチナ

    ジャン・ポール・ロッチナ

    PSの秘密を握るキリコを追うメルキア軍情報部の将校。実は銀河を裏から支配する謎の存在ワイズマンの"目"であり、後に敵であるバララントに亡命する。

  • アーマード・トルーパー

    アーマード・トルーパー

    略してATとも。メルキア軍が最初に開発した人型兵器。安価で大量生産しやすいが、防御力が低く、乗り手ともども最低野郎「ボトムズ」と呼ばれる。

  • イプシロン
  • イプシロン

    イプシロン

    秘密結社が開発した、二人目のPS。フィアナを愛しており、キリコには一人の男としての対抗心を抱いている。クメン編で登場し、キリコと幾度となく死闘を繰り広げた。

  • スナッピングタートル

    スナッピングタートル

    イプシロンが搭乗する、スタンディングトータスを原型とするPS専用機。神聖クメン王国軍の戦力としてクメン内戦に参加した。全高4,022ミリ、乾燥重量8,196キロ。

  • 秘密結社

    秘密結社

    ワイズマンを崇拝する謎の組織。組織の主だった幹部は元軍人で、終戦間際に何らかの目的に基づき、素体を奪った。

シーン

自分の運命を変えた素体の謎を追うキリコの前に、正体不明の秘密結社が立ち塞がる。彼らは完全なる兵士、パーフェクトソルジャー(PS)を造り出して、いったい何をしようというのか? 戦争を司る神の仕組んだ最も危険な遊戯がキリコを玩ぶ。絶え間ない闘争の果てにキリコを待ち受けるのは……。

  • 終戦直前、キリコは突然の転属の後、味方の基地を攻撃する作戦に参加。カプセルに入った素体と呼ばれる女を目撃する。

  • キリコは味方に捕らえられ拷問を受ける。素体は軍の最重要機密で、キリコのいた部隊が奪って姿をくらませたのだ。

アストラギウス銀河を揺るがす“神”の罠……

  • キリコは軍を脱走、自分の運命を狂わせた素体を追ってウドの街へ辿りつく。ここで彼はマッチメークを営むゴウトやバニラ、ココナと出会う。一方、軍はキリコと素体強奪犯には何らかのつながりがあると見て秘かに発信器を仕掛けて監視を続けていた。

  • キリコはゴウトの誘いでATを使った賭け試合、バトリングに参加。自分を裏切った上官と戦い、事件の真相を知ろうとする。

  • ウドの街を牛耳る治安警察の背後に潜む秘密結社こそ、素体強奪の真犯人だった。そんなときキリコはついに素体と再会する。

  • 素体——フィアナをめぐりキリコと治安警察は衝突。キリコは重武装を施したATで、群がる治安警察部隊を蹴散らしていく。

  • 秘密結社の幹部セルジュ・ボローたちは、キリコの背後には軍が隠れているのでは?と疑い、事態は悪化の一途を辿る。

  • やがて軍が本格的に介入、ウドの街は崩壊する。その後キリコはすべてを忘れるため、内戦の国クメンへと流れ着くのだが……。

  • クメンにも秘密結社の魔手は伸びていた。政府側の傭兵となったキリコは、結社が作った第2 のPSイプシロンと出会う。

  • ボローたちはカンジェルマン(右)の反政府軍に加わっていた。彼らは内戦をイプシロンの実戦データ収集に利用していたのだ。

  • キリコとフィアナは内戦の中で再会。互いの想いを確認しあった二人は、クエント人傭兵シャッコの協力で宇宙へ脱出する。

  • しかし宇宙にも安息の場はなかった。二人は素体の謎の虜となり、キリコは過去のトラウマをえぐり出され、苦しみ悶える。

  • キリコたちを追う秘密結社の科学者の一人アロン(手前)。いったい彼らの目的は何なのか、彼らを操る存在の正体は……?

  • 惑星サンサでキリコは蒼いATストライクドッグを駆るイプシロンを倒す。そのときキリコもPSだという疑惑が生じる。

  • キリコはPS以上の存在「異能者」だった。彼は秘密結社の支配者ワイズマンの後継者に選ばれる。すべては彼が仕組んだことだった。

  • しかしキリコは後継者指名を拒否しワイズマンを倒す。自由となった彼はフィアナとともに、平和を求めて人工冬眠に入った。

戦争のない世界へ……、キリコとフィアナは旅立つ

WORLD

本作はほぼ1クールごとに舞台を変更するという趣向が採られた。退廃感漂う地下都市、東南アジアを思わせる熱帯地域、壊滅した惑星都市など、こうしたバラエティ豊かな舞台装置はこの作品の特徴とも言える。

  • ウドの街。近代的なビルや建物、不似合いとしか言いようがない屋台が建ち並ぶ。このごった煮感こそウドの街の持ち味だ。

  • クメン王国は東南アジアを参考にしている。本作の製作当時、ベトナム戦争はまだ記憶に新しく、その世界観が色濃く反映されている。

  • 熱帯の次は宇宙、そして大気が破壊された廃墟の惑星サンサが舞台となった。常に赤い空と、生命が生きられない死の砂漠が特徴的だ。

  • ワイズマンの中枢に設置されている伝達装置。古代クエント文明は生物的なラインを加えた、独特なデザインを建造物の特徴としている。

  • 不可侵宙域に浮かぶ、ワイズマンの人工天体。キリコはここで後継者指名の託宣を受けた。周囲の柱はフローターベルトと呼ばれる、敵の攻撃から人工天体を守る防御装置。

リアル系ロボットの究極形態

本作の特徴の一つに、登場する人型マシンをあくまで「機械」として描いていることが挙げられる。主人公メカというべきマシンは存在せず、壊れれば修理するがそれも不可能となるとすぐに別の機体に乗り換えてしまう。寡黙な主人公にも機種に思い入れや愛着はあるが、それは「好み」という以上のものではない。あくまでも「使い慣れた機種だから好む」という程度だ。 このようなリアリスティックな描写は大きな話題を呼び、メカファンたちから大きな支持を得た。マシンをここまでリアルに描いた作品はほとんど存在せず、ゆえに本作は「極み」と評されるのである。

メカデザインの新たな潮流を導いたAT

『装甲騎兵ボトムズ』は様々な新機軸を打ち出した作品だが、メカデザインについても同様だった。当時『機動戦士ガンダム』から始まったリアルロボットのムーブメントはアニメプラモデルのブームを引き起こし、多くのファンがプラモ作りに熱中した。 しかしここで問題が生じた。アニメのスタイルのままでは股関節の可動域が狭すぎ、作中のポーズを再現することが難しかったのだ。この後、可動域の確保は大きな課題となり、多くのモデラーやデザイナーの頭を悩ませることになる。この問題を解決したのが、ATによって提示された分割式アーマーだった。これは、従来パンツのような形状で大腿部の可動を抑えていた腰部の一体型の装甲デザインを鎧の草摺(くさずり)のように腿とともに動くよう胴装甲本体から分割したもの。まさにコロンブスの卵的な発想だった。この分割式アーマーは大きな衝撃を持って迎え入れられ、その後は当然のように様々なロボットアニメに用いられていくことになった。