サンライズワールド

特集

SPECIAL

  • インタビュー
2023.01.25

サンライズワールドクリエイターインタビュー第14回
エルドランシリーズ監督 川瀬敏文<後編>

サンライズ作品のキーパーソンとなったスタッフに、自身が関わった作品の思い出を伺うクリエイターインタビュー。第14回のゲストは、『絶対無敵ライジンオー』、『元気爆発ガンバルガー』、『熱血最強ゴウザウラー』の3部作で構成される「エルドランシリーズ」を手掛けた、川瀬敏文さん。後編では、エルドランシリーズ3部作がどのように企画され、どのような思いが込められたのか語ってもらった。
 

――『絶対無敵ライジンオー(以下、ライジンオー)』は、小学校が舞台で、学校がロボットに変形するというのが大きなポイントになるわけですが、これはどのように決まっていったのでしょうか?

川瀬 プロデューサーの内田健二さんが制作進行をやっていた『無敵ロボ トライダーG7(以下、トライダーG7)』という作品では、街の中枢企業の社長で小学生という主人公が乗り込むお助けロボットは、公園から出て行くという設定だったんです。もっと遡ると、『マジンガーZ』はプールから出てくるというのもありましたね。そういう部分から、企画を進める中で『トライダーG7』みたいなものがやりたいという話になったんです。当時は、『機動戦士ガンダム』から始まった、大人向けの作品がどんどん出ていて、マニア化しているような時代で。「古き良き時代の子ども向けアニメって減っちゃったよね」という話が出て来て、そこから子ども向けの昔のパワーがあった頃の巨大ロボットアニメをちょっとマジで作りましょうとなっていったんです。そこで、『トライダーG7』のようなちょっと身近なところから発進していくようなイメージで話を進める中で、「じゃあ、小学校が発進基地になるのはどうか?」という形でまとまりました。ただ、小学校だと、クラスのひとりやふたりが巨大ロボを操縦するだけで終わってしまうと面白くないので、「じゃあ、クラス全員でロボットを操縦して、宇宙から来た侵略者を倒すというのにしましょう」と。その結果、子どもたちが主人公も話になっていったんです。

――クラス内の群像劇としての空気感が素晴らしかったですね。

川瀬 小学校を舞台にするなら、それをやらなきゃ嘘でしょうと。ロボットも3人で操縦するという形ではあったけど、3人が色濃く主人公ですという形ではなくしたかったんです。企画段階から大事にしていたのは、1クラス=劇中で言う「地球防衛組」という形で推していこうと。3人が主人公とかになった場合、今までの作品と何ら差別化できないので、クラス全員が地球防衛組で、みんながロボットの操縦に何らかの形で携わっているという形にして。それによって、差別化できたところはありましたね。

――エルドランという、ずっと地球を守ってきた謎の存在がキーになり、現在は「エルドランシリーズ」と言われていますが、当初からシリーズ化は考えていたのでしょうか?

川瀬 当時は、まずは1本ちゃんと成立させないといけないと考えていたので、シリーズ化は後からです。それから、ちゃんとトミーさんに商売をすることができて、つまり玩具メーカーが儲かることで次があるという形ですから、なんとか売れるような作品にしようというのが当時の考えでしたね。もちろん、2年目、3年目と続けたいけど、そんなところまで考えている余裕はないですよね。もちろん、僕も監督が続けられるかどうかクビがかかっている状態ですから、ずっと監督を続けるためにも必死な思いでしたね。

――結果、反応は良かったと思いますが、やはりクラスものとしたところが上手くいったポイントだったのでしょうか?

川瀬 やっぱり、「地球防衛組」というクラスものにしたことによって、他のロボットものとはかっちりと差別化できたというのが大きいと思います。子どもが元気に、昔ながらの巨大ロボットに乗って暴れられる。そういうアニメが良かったというところもあると思いますね。

――学校がロボットになるという部分で、ターゲットとなる小学生にも想像が膨らませやすいところもあったんでしょうね。

川瀬 玩具のメインターゲットは小学生の子どもたちで、そこにストレートにインパクトのある形で持って行きたいという思いもあったので、自ずとああいう形になったというか。子どもにとって一番身近な社会となると学校で、学校こそがひとつの世界なんですよね。そこが舞台になるのが良かったし、そこに誰ひとりスーパーな人間がいないというのも現実的で感情移入しやすかったんじゃないかと思いますね。

――『ライジンオー』の成功から、シリーズものとして続くことになるわけですね。

川瀬 『ライジンオー』の玩具がヒットしたので、第二弾をトミーさんも作りたいということで、『元気爆発ガンバルガー(以下、ガンバルガー)』に繋がっていきました。


――『ガンバルガー』では、玩具としてのプロットが「動物が変形する」という形でより明確になっていきます。これは、トミーさんからの提案があったのでしょうか?
川瀬 前作がうまくいったということもあって、トミーさんとは信頼関係ができたので、こちら側で考えていることをかなり汲んでいただける状態になっていました。もちろん、『ライジンオー』の頃から一方的に振られる形では無かったのですが、より距離が近くなったということですね。『ライジンオー』の時には、トミーさんも久々に合体ロボット物をやるということで、どういう方向で玩具を作っていくべきか確信を持てないでやっていたところがあったんです。一方、その頃のサンライズはロボットアニメの会社でしたから、ノウハウもあるので、こちらの意見をわりと素直に聞いていただけたところはあります。

――一方で、『ガンバルガー』は作品のテイストはガラっと変わって、コメディ色が強い作品になりました。これは、変えようという意識が強かった結果でしょうか?

川瀬 変えなければいけないだろうなというところはありましたね。企画を練る段階で、学校が舞台で新しいクラスにするのか、あるいは地球防衛組が6年生になった状態を描く、メンバーを変えるとか、そういう議論もありましたね。でも、そうなると新番組としてはいかがなものかということで、じゃあ、ガラッと変える流れになりましたね。

――主人公は変わるけれども、背景の世界観は繋がっていく形ではありましたね。

川瀬 そうですね。エルドランの存在はもちろん、サブキャラに関しては世界観が地続きでやっているという立て前はありました。それこそ、防衛隊の武田長官なんかは同じ役割なので、同じキャラクターでいいだろうというのもちょっとあって。そういう意味では、エルドランも同じような考えで、謎多き存在で子どもたちにロボットを与える役目というのは便利なので、そのまま登場させています。

――新しい要素としては、変身ヒーロー的な要素が入りましたが、これはどんな経緯があったのでしょうか?

川瀬 小学生が主人公であることは変わらないんですが、色合いを変えるということでスーパーヒーロー要素を足していったという形ですね。力を持った結果、それが枷にもなると。クラスが舞台にならないという形になると、やはり作品として結構色合いを変える必要があって。ただ単に3人だけがロボットを操ることができるヒーローで、その力を行使できるだけだと弱いということで、いろいろ要素を足していったという形ではありますね。『ライジンオー』は小学校のクラスを舞台にした話を毎話数作っていたのに対して、『ガンバルガー』は子ども世代ということで、ご近所さん=町内会レベルのところに話を広げていけたらいいなと考えていました。その結果、子ども以外は、いろんなキャラクターを出すことができましたね。

――2作目として『ガンバルガー』の反応はいかがでしたか?

川瀬 正直、やっぱり前作の地球防衛組というのが、かなりのハマり方をしてしまったので、なかなか厳しかったですね。比較される部分もあったし、『ライジンオー』ほどの爆発力が無かった。どういう風に持っていったらいいかというところで、いろんなことをやりた過ぎてしまったし、悪く言うと小手先のことをやりすぎてしまったというところもありますね。そういう意味では苦戦しましたね。

――そして、3作目の『熱血最強ゴウザウラー(以下、ゴウザウラー)』になるわけですが、『ライジンオー』で描いた要素を整理して、より精度を上げたという印象があります。


川瀬 そうですね。流れとしては必然的にそういう形になりました。とは言え、一発目ほどのインパクトが出せたかというとなかなか難しいですね。

――『ゴウザウラー』では、年齢感が上がっていますが、これは意識的にやったのでしょうか?

川瀬 そうですね。『ライジンオー』の時は5年生のクラスだったのを、『ゴウザウラー』では6年生にしたんです。やはり、1話完結でお話を作ると、同じ5年生だと同じような話になってしまうところがあったので。だから気持ち大人に近づいたところでのエピソードを作りたかったというのはあります。なかなか難しくて。キャラクターに関しても整理したので、よく言うとバランスが整っているんですが、悪く言うとちょっと大人しくなってしまったところがあって。そういう意味では、『ライジンオー』に比べると後先を考えながら作ったので、最初の頃の勢いが出せなかったところはあります。

――『ゴウザウラー』では脚本やシリーズ構成も手掛けられていますね。

川瀬 単純にシナリオもやってみたいという気持ちが、演出になる前からあったんです。やっぱり、演出とシナリオは表裏一体のところがあり、同じような仕事じゃないと思っていたところもあったので。だから、シナリオも書いてみようと思ったんですね。

――監督をやりながら脚本を書くのは、結構負担が大きいんじゃないでしょうか?

川瀬 きつかったですね。もう二度とやるもんじゃないなと思いました(笑)。やっぱり、テレビシリーズだと、大変ですね。

――当然ながら、脚本打ち合わせもあるわけですよね。

川瀬 ありますね。監督である限り、他のライターさんと本読みは必ずやらなくちゃいけないですし、自分の本読みもしなくちゃいけない。あと、自分で描いたシナリオを自分でコンテを切らなければならないところもあって。その辺りのバランスの取り方ややり方はとても勉強になりましたね。悪いところが出ちゃうというか、コンテを描くつもりでシナリオを書いているところもあって、「字コンテ」のようなシナリオになっちゃう。今にして思うと、やっぱり良くなかったですね。

――シナリオの段階ではもっと伸び伸びと書いて、そこから精査してコンテに落とすみたいな方向が理想的ではあるということですか?

川瀬 その通りです。シナリオライターさんは実際に絵コンテを描く方というのは少ないですよね。そこで書かれたことが、演出が絵コンテにする段階で、シナリオからプラスアルファして広げていく部分というのが当然あるんです。それをひとりでやると、字コンテみたいにしちゃう。それは絵コンテは描きやすいです。それではやっぱり膨らみがないんですよね。人が書いたシナリオをどう絵に落とすか考える段階で膨らませていく作業があるので、やはりその方が内容は良くなりますよね。そういう意味では監督がシリーズ構成や脚本をやることの欠点も理解してやらないと、泥沼にはまってしまう。わかりやすく言うと楽しめないということがわかったので、それは勉強になりましたね。

――『ゴウザウラー』はメカの変形・合体も複雑化した印象があります。

川瀬 玩具に関しては、トミーさんの技術がかなり凄かったというか、すごく上手に作ってくれて。そこに映像が追いつこうとすると、映像的にも緻密になっていったというところはありますね。僕もサンプルとして玩具を渡されても、説明書を読んでやっと合体させられるという感じで。よく出来ているんだけど、作り込み過ぎていて。アニメーションから出てくるイメージそのままの復元力があって、そこの技術は凄かったですね。

――シリーズを3年やってみた感想はいかがでしたか?

川瀬 大変でしたね。もうこれ以上続けられないなと思いました。同じような感覚で作るとなると3年が限度だなと。後先考えずにやってしまったというのはありますが、楽しかったですね。

――エルドランシリーズを手掛けたことは、やはりその後のご自身の仕事には大きな影響を与えましたか?

川瀬 それは大きいですね。原点といえば原点ですから。エルドランシリーズをやらせてもらったおかげで今でも演出をできているようなものですから。いろんなことを勉強させてもらったし、監督としても勢いをつけさせていただいた。そういう意味では、今を作ってくれた作品ですよね。

――シリーズも30周年を迎えて、今でも関連商品が商品化もされたりしていますが、そうした状況に関しては、やっぱり感慨深いですか?

川瀬 やっぱり感慨はありますね。それだけのパワーがあった作品だったんだなと。もともとそんなに尖った方ではありませんが、今は僕自身が角も取れて丸くなってしまいましたが、当時は演出としてパワーは結構あった方だと思うので。あの頃にくらべるとパワーが落ちてしまったなと。いろんなことがわかっていけばいくほど、無茶苦茶ができなくなっていったとういか。あの頃は、やっぱり初めてのテレビシリーズの監督作品ということで、とにかく思い付いたことは面白ければなんでもやってしまおうというところが確かにありました。今はブレーキをかけちゃうから。そういう意味では、初めてやる作品というのはパワーがありますね。そういう意味では、いい思い出になっています。

――では最後に、シリーズを愛し続けているファンにメッセージをお願いします。

川瀬 やっぱり、後先考えても、あれだけ自分なりにパワーを込めた作品というのは無いですし、自分の作品の中でもナンバーワンなんじゃないかという自覚もあります。一番パワーをつぎ込めた作品なので、今見ても多分面白く見ることができると思うので、また見直していただけたらと思いますね。そして、あと何年演出家としてやっていけるかわかりませんが、今も僕自身が作っている作品もありますので、合わせてそちらも見ていただけると嬉しいです。


←<前編>

川瀬敏文(かわせとしふみ)
1958年生まれ。アニメーション監督、演出、脚本家。
制作進行、設定制作を経て『聖戦士ダンバイン』で演出デビュー。『DEAD HEAT』で監督デビュー。『絶対無敵ライジンオー』、『元気爆発ガンバルガー』、『熱血最強ゴウザウラー』、『覇王大系リューナイト』、『超者ライディーン』、『銀河漂流バイファム13』などの監督を務める。

 

インタビュー掲載記念でサイン色紙をプレゼントいたします。
詳しくはプレゼントページでご確認ください。

 

 

クリエイターインタビュー掲載記念サイン色紙プレゼント!>>