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メゾン・ド・アームズ バシレイオン【第5回】
前回のあらすじ
巨大なバシレイオンの体内を巡り、真世が10年ぶりに降り立った町は、機動隊と自衛隊の各部隊が物々しく展開し、バシレイオンを遠巻きに監視する緊張と混乱の世界だった! ⇒ 第4回へ
「娘さんが熱を出したとか知りませんよ、あなたの事情でしょ? そんなのと店とどっちが大事だと思っているんですか?」
草永はバックヤードを兼ねた事務所で受話器を握りつつ、机の脇のゴミ箱にゴミが溜まったままなのに気付いた。
「そういうんだからご主人も愛想尽かしたんじゃありませんか? ――そんなことあり得ませんよ、もし私だったら絶対にあなたの所になんて戻ったりしませんし――わかりました、お一人で生活大変なんじゃないかと思って良かれとお願いしたんですが、私の代わりにシフト入れないならもう来なくていいですから、アルバイトならいくらでもいますし――ですから、いらっしゃってもあなたのロッカーもうありませんから」
受話器の向こうで懇願する声に構わず電話を切ると、草永は目前のホワイトボードのシフト表からマグネット式の名札を1枚剥ぎ取るとゴミ箱に捨て、シルバーフレームの眼鏡の奥から薄い目で暫し見つめた。ペッと唾を吐きかける。小さな泡をたてるそれが、捨てられゴミにまみれた名札にべったりと滴った。
防犯カメラの映像を映すモニターに目線をやる。客のいないコンビニエンスストアの店内で、不惑を過ぎた頃合いの中年男性のアルバイト店員がひとり、賞味期限切れの弁当や総菜などをせっせと陳列棚から引き上げている。
「ちょっと田島さん!」
いつもの不機嫌声に、モニターのなかの男性店員がハッと事務所の方を向く。草永はゴミ箱を鷲掴むと店内へ向かった。
「私の机のゴミ箱のゴミ、こまめに捨て下さいって言いませんでした?」
棚の前で、期限切れのチーズポテトサラダを掴んだまま緊張の面持ちで直立している男性店員の正面に、ようやくと20歳を過ぎたばかりの草永が、鼻先が当たる距離で立った。
「言いましたよね?」
「ですが、他の作業はいいから賞味期限チェックを『優先』しろと、店長が……」
「私のゴミ箱のゴミ捨ては『最・優先』でしょう? そんな事にも気が回らないんですか? このバイト始めてもう1週間ですよね? 何から何まで全部教えてあげないと自分じゃなんにも出来ないとか? そういう宗教か何かにでも入ってんの? 馬鹿なんですか? 馬鹿なんでしょ? だから前の会社リストラされたんですよね?」
草永は、心打ちひしがれ身を小さくしている相手の頭上から、当たり前のようにゴミ箱の中身をぶちまけた。食べ残しや空きクズや丸めたティッシュなどが床に散らばる中、さきほど捨てたシフト表の名札が、まだ泡が残る粘度の高い唾まみれとなって、寂しくなりかけている中年店員の髪に張りついた。
「あ、長野さん辞めたんで明日のこの時間までオールお願いしますね。――あなたの都合なんて知りませんよ、アルバイトの落度はバイト同士で責任取り合って貰わないと。――なに言ってんの、迷惑してるのはこっちですよ。なんならまたリストラされます?」
来店チャイムが聞こえ、たまに見る年配の女性客が一人入って来た。草永はぶちまけたゴミを掃除しておくよう顎で指示すると事務所に戻ろうとして、ふと、夜のガラス壁に自分が映っているのに気付き、魅入るようにエプロン姿のその細身長身を足先から頭まで眺め、前髪をひとつ指で整えた。
20歳にして店長を任されている自分の事を、大学を2浪し就職活動にもことごとく失敗した息子を、店のオーナーである両親が見かね、仕方なく店を譲り、その椅子に座らせた、などと噂する者も多くいる(というか、事実だったが)。しかしそれは、自分の才能や能力をやっかむ族、もしくは本当の力を理解できない愚か者どもの戯れ言だ。それどころか本来なら、自分はこの程度の椅子に座らせとどめておくべきではない逸材。いつかは大企業を率い、末には指導者としてこの世界を導いていく稀代の存在だ。しかし――と、ここまで満足げな自信で満ちていた彼の表情に、なにやら憂いの影が落ちた――それを善しとしない者たちが存在する。人々の目には決して触れない闇なる強大な力。
その名はネオイリュミナティ。
18世紀後半、アダム・ヴァイスハウプトによって設立されたバイエルン=インゴルシュタット幻想教団を源流とするその政治的秘密結社の末裔が、いまなお世界を、宇宙を、己の私物とすべく陰謀を企て暗躍している。この世の出来事のすべての背後には彼らの影がある。『ルーズベルト暗殺』『第一次・二次世界大戦』『ナチス』『原爆投下』『キューバ危機』『ベトナム戦争』『ケネディ暗殺』『ジョンレノン暗殺』『ライ麦畑』『冷戦』『湾岸戦争』『温暖化』『東日本大震災』『宗教原理主義の台頭』、そして無論、自分が大学に2度落ちたのも、就活にことごとく失敗したのも、今月に入って5人もバイトが辞めたのも、ウチの店に無能なアルバイトしか集まらないのも、賞味期限切れの弁当や総菜を撤去したというのにその補充の商品を積んだルート配送のトラックがいっこうにやって来ないのも、すべて……。草永はがらんと空になってしまった陳列棚を睨みつけた。
「だから女の配送ドライバーなど信用できないんだ。しかも10歳で体の成長が止まってしまった奴など」
無論それも暗躍する力の陰謀に違いない。いつか必ずこの手で全ての真実を暴いてやる、きっとそれこそが、私に与えられた使命なのだ。決意を新たにしながら草永はふと、道路を挟んだ向こう、集う野次馬や自衛隊の一群越しの遠く、夜空の中に浮かび上がっている巨人の姿を見据えた。
「そう、あのロボットが現れたのも、もちろん……」
そして、あれだけ見物客がいるのに、みな、自分の店ではなく、なぜか少し離れたイレブン・ストアに流れてしまうのも、何もかも……思い耽った草永は「ちょっとどういうこと」と問いただす声に我を戻した。来店していた女性客が、弁当や総菜の商品棚がすっからかんな事に立腹の様子だった。
「ただでさえいつもなんだかピントのずれたお弁当とかお総菜とかばっかりで、欲しいものないってのに。3丁目のイレブン・ストア見習いなさいよ、品揃えいいし、おいしいし。ホントはあっちに行きたいけど、足が弱ってきたから仕方なく、家の近くにあるあんたの店に来てあげてんのに」
客は言いたいことを一通り言い終えようやくスッキリすると、今度はもう一つの方もスッキリさせようとトイレへと消えた。
もちろんこれもすべて暗躍する力の陰謀、全部お見通しだ……草永は心の中でそう呟きつつ、クレーム対応用の割引券を準備しようとした。
店先から突然、切り裂くようなトラックの急ブレーキ音が聞こえたのは、その時だった。
* * *
その頃の真世は、今からは想像がつかないほどプックリと肥えていた。典型的なあんこ型の肥満児だった。
蝉の声が容赦なかった。夏の炎天に陽炎のごとくわしゃわしゃと沸き上がる騒々しさが、ただでさえ鈍く重い体にずっしりとのしかかり、足取りはすでに2本の重石を引きずるようだった。
夏休み明けの初日にマラソン大会を行うのが、真世が入学した中学校の伝統行事だった。東京湾沿いの潮風の中を3年生は10キロ、2年生は7キロ、そして初めて挑む真世たち1年生は5キロの苦行。生徒らを夏休みボケから一気に目覚めさせるのが目的だった。
既に全校生徒がゴールし、走り続けているのは真世一人となっていた。前の生徒が走り終えてからかれこれ1時間、ようやく終着点のある校庭への入口が見えてきた。待ち構える教師や大勢の生徒の姿も見える。
しかし限界はとっくに超えていた。もはや歩いた方が速いかもしれない。いっそ止まってしまえばある意味さらに早く終えられる。きっと皆も、自分が諦め投げ出すのを心待ちにしているだろう、きっとそうに違いない。真世はギブアップの手を挙げようとした。
その時だった。
「頑張って! 露島君!」
誰かが心を込めて叫んだ。
穢れのない、真っ直ぐな声だった。
そして同時にそれは、地獄のショーの始まりを告げる鐘でもあった、その声援が呼び水となった。「露島頑張れ!」「もう少しだ!」「行けるぞ露島!」「頑張って!」生徒たちが感動のゴールを共有しようと校庭から溢れ、声援を送りつつ真世の周囲に集まりはじめた。
引くに引けなくなった。
「がんばーれ!」「がんばーれ!」「がんばーれ!」「がんばーれ!」「がんばーれ!」「がんばーれ!」「がんばーれ!」「がんばーれ!」「がんばーれ!」「がんばーれ!」
いつしか全校生徒320名—1名の声援はひとつとなっていた。衆人環視の大合唱。かつてイエスは周りから石を投げつけられながら自ら磔にされる十字架を背負い、這うようにゴルゴタの丘を登ったと聞く。そしてついに真世は丘の頂上に辿り着いた。
「おめでとう!」「頑張ったね!」「すごいよ露島くん!」
労いの声を聞きつつ思い出していたのは、前日の下校前に聞いた、担任教師の忠告だった。
『マラソンの直前は、お腹いっぱいにゴハンを食べないようにしましょうね』
言う通りにしておけば良かったと痛感した。
真世が学校というものに通ったのは、その日が最後となった。
* * *
「大丈夫ですか!」
必死の様子で呼び掛ける声に、真世は、横断歩道の真ん中で大の字に横たわりながら「!」と意識を戻した。目の前の視界に星空が広がっている、それを遮って、何やら少女の心配そうな表情が、飛び込むように彼の顔を覗き込んで来た。
「気がつきましたか!?」
穢れのないつぶらな瞳が潤みながらホッと見つめている。まるで小さく柔らかく可憐な和菓子を思わせる清らかな愛らしさに、真世は思わず半身を起こした。
「え、えっと……」
戸惑い辺りを見回した真世は、傍らにトラックが停車しているのにようやく気づき、そして、自分が目指していたコンビニエンスストアへと急ぐ途中の、店前の横断歩道ではねられかけた事を思い出した。はねられ『かけた』――そう、静香の運転していた3トン冷蔵車は、彼の寸前でなんとかぎりぎり停車した。驚き転んだ拍子に頭を地面に打ち、しばらく気を失っていたらしい。
真世が身を起こしたことに、静香は大きく安堵したのち、慌てて、「横になったままの方がいい」と、促した。
「大丈夫……」
真世は気丈を繕って立ち上がろうとしたが、足元がおぼつかずに腰砕け、思わず尻餅をついた。慌てて辺りをうかがう。こんなみっともない姿、誰にも見られたくなかった。幸い辺りにいる人々は皆、バシレイオンとその対処に慌ただしく集っている自衛隊部隊の見物に夢中で、誰もコンビニ前の騒動になど意識を向けていなかった。よくよく聞けばトラックが急ブレーキを掛ける際に鳴らすのと同様のスキール音が、あちらこちらの自衛隊車両からあがっている。真世は潜めていた息をホッと吐き出そうとした、そのとき、
「どういうつもりなの!」
驚き、声の方を向けば、静香が打って変わって鬼にも迫る形相で真世を睨みつけている。
「横断歩道の信号赤だったでしょ! そんな中に飛び出してきたらはねられそうになるのなんて当たり前じゃない!」
圧倒されつつ真世は、ふと違和感を感じた。容姿はどう見ても小学生かそこら、なのに、着ている服はトラックの配達員の制服、それに……。
そんな真世の様子も目に映らない勢いで、静香は、それまで押さえ込んでいた憤りを叱りつけるようにぶつける。
「横断歩道を渡る時は左右をよく見てからって、そんなの子供の頃に散々教わったでしょ!」
もし大事故になって運転免許証に傷でもついたら、明日からのこっちの食いっ扶持どうなってたと思ってるのよ! あなたが私と両親を養ってくれるとでも言うの! 問い詰めようとした静香は、真世が訝しげにじっと見つめている事にようやく気付き、ハッと言葉を呑み込んだ。
「ねぇ、キミ……」
「!」
静香は暫し固まった後、ゲンナリとうなだれた。近所の人間なら私の事は知っている筈だ、ならきっと、あの大きなロボットを見に来た野次馬……またあの質問をされるのか、また説明しなければならないのか、口にする度に鉛の味が胸の奥に広がる、10歳で身体の成長が止まってしまった、あの話を……。生花がいきなり萎れるように、みるみるうちに静香は精気を失った。
そんな彼女に真世は、なにやらモヤモヤと問うた。
「その声……」
「…………?」
「どっかで会った事、ある?」
「……え?」
静香は俯いていた顔をポカンと上げた。
二人は互いに互いを不思議そうに見つめた。
「何やってんだよ!」
突然二人の間に怒鳴り声が割込んできた。真世と静香は同時に声の方を向いた。コンビニのエプロンをした男がやってくる、店長の草永だ。
真世は思わず言葉を飲み込みがちに無意識に謝っていた。
「……す、すみません……」
反射的に立ち上がった真世を、その胸ほども身長のない静香が慌てて支える。
「あなたに言ったんじゃありませんよ」
草永は真世に告げると、その視線を静香に向けて睨みつけた。
「おまえだよ!」
「配達遅れてすみませんでした、店長」
真世は隣にいる彼女を「!?」と見た。草永に向かって深々と頭を下げている。
「すみませんでしたじゃないだろ! あんたがぐずぐずしてる間に、こっちは悪くもないのに客に謝らなきゃなんないハメになってるんですよ!」
「申し訳ありません」
「クレーム対処用のクーポンの損害、当然そっち持ちですから」
「会社の方に報告させて頂きます」
隣で健気に頭を下げたままでいる静香の姿に、真世は混乱した。どういうことだよ、どう見ても小学生だろ? なのにトラック運転して配送なんてやってるのか?
「ですがその前に」彼女が頭をあげた。「救急車を呼んでいただけませんか、念のため、この人を病院に」
草永の前に促そうと、静香は真世に手を添えた。拍子に指が真世の手の甲に触れた。その冷たさに真世はハッとなる。静香は草永と真っ直ぐに向き合っている。
「私、携帯電話を持っていなくて」
「そんなのいいから早く搬入してください」
「ですが」
「あと品出しもお願いしますよ」
静香はただでさえパッチリとした目を「え?」と一層大きくした。
「このお店のあとまだ4店舗も――」
「知りませんよそんなの」草永は当然の様に言い放った。「これから私、大事な用事があるんですよ。なのに来るはずだったバイトがいきなり辞めて、店が新人ひとりきりになるんです。さすがに不安ですから手伝ってって下さい」
「それと私が遅れたのとは関係が――」
「なんですか? 迷惑掛けたくせに聞けないんですか? ちょっと可愛いからって調子に乗ってんですか?」
「そんなこと!」否定しようと一歩詰め寄った静香は、草永の目がシルバーフレームの下で醜く歪むのを見て「!」と身を硬直させた。
「10歳で身体の成長止まったとか……」
草永の表情に侮蔑が露骨に浮かぶ。
「お前、気持ち悪いんだけど」
暫し表情を失っていた静香の顔に、ギッと屈辱が刻まれる。
「それじゃ品出し、お願いしますよ」
草永は嘲笑を滲ませ言い渡し、店内に戻ろうとした。
その肩を、強く掴む手が引き留めた。
「あぁ?」と草永が振り返る。
「ちょ……!」驚き言葉に戸惑ったのは、静香だった。
草永の肩を掴んでいる真世は、自分でも何が起こったのかわからない様子で、しばらく相手に目を据えていたが、「……あ、いや……その……」と、ようやくその手を離そうとした。
草永が掴み返した。
真世が「!」と緊張する。
「……なんなんです、あんた」
顔半分ほどの身長差から、草永は真世を見下ろした。
真世は「あ、いえ……」と、必死に手をほどこうとしたが、相手はまがりなりにもコンビニエンスストア店長の仕事をこなしている青年、こっちは10年来VRヘッドセットより重い物を持っていなかった23歳だ。
それでも傍らでは、何やら曰く付きらしいとは言え、『いろシチュ』No.1 人気のバーチャルアイドルすら嫉妬を憶えるに違いない絶世の美少女が、事の成り行きを固唾を呑んで見守っている。
「ぼ、ぼ、ぼ、ボクは……」
真世は一世一代の力を振り絞ると、
「あんたの店の客だよ!」
と、客商売の相手に対する伝家の宝刀を抜き、草永の手をふりほどいた。
チラと静香を見る。複雑な表情をしている。
草永に目を戻した。
彼は暫く無言で真世を見据え、そして、静かに告げた。
「……いらっしゃいませ」口調が小馬鹿にしている「何をお求めに?」
「え? あ、いや、その……」
真世は思わず、悪いことをしようとしている子供のように、おどおどと視線をさまよわせ、そしてふと「そう言えば……」と思い浮かべた。自分は18禁のあれやこれやを、ネットで閲覧したりダウンロードした事しかないが、現場主義の強者たちは成人雑誌を買う際、通常の本と本の間にソレを挟んでレジに出すという逸話を聞く。アダルトのレンタルディスクも普通の映画と映画の間にさりげなくしのばせたり……という事は、『アレ』を購入する場合も同様なのだろうか? 弁当と弁当の間に挟んだり? なかなかにシュールな光景とも思えるけれど……いや、別に『アレ』は隠さなければならないような恥ずかしいアイテムではないんじゃないか? むしろリアルが充実している証とも言えるし、正しい身嗜みなのだから紳士らしく堂々と……いやいや、自分の場合、使用目的に多少なりとも難がある可能性も……なら、せめて同じ箱モノの、例えばチョコとチョコの間に挟んで……。
ハッと我に返り、慌てて静香を見た。不審げに真世を見つめている。どうやら8畳半の自分の世界にひとりでいるいつもの癖で、心の中に収めておくべき気持ちを、独り言にして赤裸々にぶちまけていたらしい。「あ! いや! 別に怪しい人間じゃ……!」必死にあたふた繕おうとすればするほど、かえって怪しさが増す。一歩近づけば、等間隔をキープしつつ彼女が一歩退く。真世は今更ながら人間同士のコミュニケーションの難しさに頭を抱えた。
と、代わりに草永が、何やら真世に一歩近づいた。
「高校生、大学生、専業主婦、リストラサラリーマン、フリーター、家出、ホームレス、再出発……こう見えてアルバイトの面接でいろいろな人間と会ってるんですよ、私」
草永は、先程まで掴んでいた真世の腕の感触を分析するように、掌をしげと見つめ、
「だから、なんとなくわかるんですよね、その人の素性が」
と、べっとり臭い汁でもついて汚れたかのごとく、その手を腰もとでぬぐった。「……あんた……」草永の目が穢らわしい物を見る様に真世を見定めた。
「ひきこもりだろ?」
著者:ジョージ クープマン
キャライラスト:中村嘉宏
メカイラスト:鈴木雅久