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空からの手紙②
「え!? なに!? どうしたの? 三人とも!」
隠しても隠し切れない笑顔で美緒が迎えてくれる。
乃真子の方はぼんやり部室の片隅で読書中のようす。
先頭のマッツンが頭を掻きながら、
「えっと……ちょっと興味がある的な、ない的な……含め含めで見学できればうれしいかうれしくないかよくわからない感じで」
この娘、致命的にウソがダメだ……。
ところが美緒の方はそんなことは全然お構いなし。
「そう! じゃあ、ちょっと座ってよ! お茶飲む? お菓子……買ってこようかしら」
「ああ、お気遣いなく」
ユッコに言われて美緒もその場に座るが、
「………ふふ……ふふ」
人が来たのがうれしくて仕方ないのか、うきうきが止まらない様子。
この娘、おもってたよりずっといい娘かも?
最初のちょっと高圧的な印象は、もしかしたら緊張していただけなのかもしれない。
さっきのマッツンのどうしようもない口上なんて、全然ノープロブレムなテンションである。
問題は乃真子の方。
先ほどから本の上辺から目だけだしてこっちを見ている。
すごく怪しまれているのではないかと、変な汗が出る。
ここは早めにやるべきことをやって撤退すべきだろう。
そう思いスタニャに視線で合図を送る。
彼女もこくりとうなずき返して、スピーカーの方へ集中を向けた。
実験開始だ。
ガガガ……ギギギ……。
突然スピーカーから漏れ出した音に、美緒と乃真子はぎょっとした。
「え? なになに?」
「うーん……」
「ちょっと、あなたたち来ると、絶対何か起こるわよね!」
言ってる言葉とは正反対にすごくうれしそう。
このまえのことは、突然だったからあのような態度だったのか?
やはり美緒はけっこうこういう展開がお好きの様子。
するとすぐにスピーカーから言葉が漏れ出した。
「%(……)“%P………#0‘7*………he‘?-¥#」
「「しゃべった!!」」
乃真子も美緒も飛び上がりそうになる。
間髪置かずにスタニャとユッコも、同じ反応をして見せる。
もちろん怪しまれないためである。
マッツンだけが、
「あ、そうか」
うっかりしていたらしく、ユッコたちを見て思い出したらしい。
とりあえず気まずそうに笑ってごまかそうとしていた。
さて美緒の方はというと、興奮気味にスピーカーの前まで来て、
「ちょっと何よこれ! すごい! もしかして、宇宙から怪電波とかひろちゃってるんじゃない?」
まさに大正解!
と言ってあげたいくらいの勘の良さである。
でも今それをしたら大変な事になるので決して言わない。
それよりもユッコが気になったのは、幽美さんと鬼神さんの反応である。
二人の方に目を向けると、
「「………」」
無言で首を横に振るだけだった。
どうやらそちら側の世界の言語とかでもなさそうである。
ユッコすぐに結果のみをジェスチャーで、二人に伝える。
――作戦失敗。
二人も肩を落としてがっかり。
マッツンが早々に引き上げの言葉を口にした。
「いやぁ、お邪魔しました。帰るね」
言い方が急だなぁ。
まあ端的でいいのかもしれないけど。
突然のマッツンの帰宅発言に美緒が気色ばむ。
「ええ! もう! 早くない?」
「そんなことないよ」
「お茶飲んでってよ!」
「え? え?」
「お願いだから! 面白くなってきたし! ねっ! いいでしょ!」
泣きつく勢いでスカートをつかまれ、結局お茶をごちそうになることになった。
美緒も乃真子も想像以上の接待で迎えてくれた。
なんだか申し訳なくなる次第のユッコだった。
(つづく)
著者:内堀優一