サンライズワールド

2017.08.28
サンライズフェスティバル2017翔雲 8月19日開催『聖戦士ダンバイン』レポート(氷川竜介)

 

『聖戦士ダンバイン』TVシリーズ全49話を三部作(各1時間)に再編集したバージョンと、新作OVA『New Story of Aura Battler DUNBINE』三部作(各30分)を一挙上映するオールナイトイベントがテアトル新宿で開催された。Blu-ray BOXのパッケージイラストを担当したキャラクターデザインの湖川友謙さん、メカニカルデザインの出渕 裕さんが来場し、上映前約1時間にわたり、たっぷりと当時の様子をディープに掘り下げていった。

 

 

意外なことに当時お二人が顔を合わせて打ち合わせる機会はそれほど多くなかったという。それぞれ富野由悠季総監督にデザインを提示し、設定制作を仲介したやりとりで詰めていく進め方だったのだ。キャラクターに関しては富野由悠季総監督から名前や性格が提示され、人間関係を示した図をベースに湖川さんが考える。衣装や色彩もふくめて自由度は高く、当時の意図は「アニメファンの人気を全部持っていこう」ということだったというから、驚きだ。


一方、メカ担当の出渕さんは、当初メインで入っていた宮武一貴さんに事情があって降板したため、引き継ぐかたちで参加した。その時点で上がっていたオーラバトラー3体とオーラシップ1機をベースに世界観を合わせてデザインを進めたが、出渕さんは映画『ダーククリスタル』でも知られるブライアン・フラウドのファンタジー感覚が好きということで、その影響があるという。


そして中盤から登場したビルバインには湖川案も用意されたが、残念ながら採用されていない。玩具メーカーの意向を優先して現在のデザインとしたのに、残念ながら放送中に倒産した等、多面的なエピソードが披露された。会場には作曲を担当した坪能さんも来られていたため、音楽に関する話題も交えながらトークは楽しく進んでいく。

 

後半は湖川さんの「ライブドローイング」が始まり、大きな模造紙いっぱいに墨汁と筆が軽やかに走り、キャラクターが次々と現れていく。ダンバインのキャラかと思いきや……という一幕もあって、湖川さんの絶妙な解説に満場爆笑となった。これぞその場だけの「ライブ感覚」の産物と言えよう。

 

 

並行して出渕さんからOVA版の秘話も語られた。当時、バンダイの雑誌「B-CLUB」で出渕さんは「オーラ・ファンタズム」という連載をもっていた。イラスト的な質感とディテールでバイストン・ウェル世界とオーラバトラーを描くものだ。OVAを監督した滝沢敏文さんは、そのイラストのイメージを中心に物語世界を構築し、質感のあるハーモニー技法でオーラバトラーを描くことになった。動きがスライドだけになるなど制約はあるが、挑戦的な映像は、こうして誕生した。

 

仕上がったドローイングは、その場でプレゼント。大きな盛り上がりの中で、トークショーはバイストン・ウェル世界へと観客をいざなうオーラロードとなったのである。
(レポート・司会:氷川竜介)

 

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