6月11日(金)に公開した『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は現在、興行収入20億円を超え大ヒット中。そして8月26日(木)に行われたスタッフトークイベントは『ハサウェイスタッフ反省会』をテーマに、メカニカルスーパーバイザーの玄馬宣彦、サンライズ設定制作の秋山李助、制作デスクの岩下成美、そして司会を務めるサンライズ第一スタジオのプロデューサー仲寿和が登壇いたしました。
以下レポート↓↓
まず、小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』でメカデザインを担当し、本作で料理作画監督を担当した森木(靖泰)さんの話から始まり、岩下「今回、料理シーンが出てきた際に、別作品で森木さんが料理作監の経験があるということで依頼しました。」ときっかけを話す。
ここで、スクリーンに映し出された、特殊効果処理前と後の画像を見ながら、岩下は「制作的に特効処理は、素材を優先したりといった苦労する点が多いんです。」と吐露。ここで、来場者にもう一度見てもらいたいシーンを、ギギがステーキを食べているシーンと語る。岩下「お題として、ギギはステーキを食べ初めて離席するまでに全て完食する必要があったのですが、尺的にはとても短いんです。なので、ギギが背面しか映らないシーンにも音響効果の笠松(広司)さんに効果音でフォローいただいて、食べているように繋ぎました。そういう細かい芝居も注意してみてもらうと嬉しいです。」と、工夫を述べ、見どころをアピール。
続けて玄馬は「シーン内で原画を担当する人が何人かいる場合、誰かがコントロールしないと料理が減る量の調整は難しいんですよね。」と作画面からの意見を話す。続いて岩下は「特効処理はチーム・タニグチさんに依頼して、焦げ具合などの細かい部分までこだわって仕上げてもらいました。」と裏話を明かす。
ここで渡辺信一郎さん参加の話に移り、岩下「村瀬(修功)監督と何回か仕事をしたことがあるということで、コンテの作業を頼むことができました。食堂のシーンや、ケネスとガウマンの尋問シーンなどのシーンを担当していただきました。」と、制作当初を振り返る。ギギが肉を食べるシーンは渡辺のアイデアだそう。「参考のために村瀬監督と渡辺さんで、サンライズの近所に、実際にステーキを食べに行ったりしてました。」と、思い出話が明かされた。
続いて、話は本作に出てくるエンドロールには載っていないキャラクター「ウェーブ」の誕生の経緯について。このキャラクターデザインは秋山がモデルになっているとのことで、秋山「キャラデ発注の際には、コンテで書かれているものから変えていいと恩田(尚之)さんに話したのですが、そのまま上がってきて監督チェックもOKになりました。恩田さんに自分を描いてもらったみたいで、ただ嬉しかったです(笑)。しかも、下級兵士なので、村瀬監督も使いやすかったみたいで、意外に本編内でも登場シーンがある。この流れで第二部にも登場すると嬉しいなと思ってます」と、次回作に期待を込め、「ちなみに、ウェーブという名前は女性兵士の総称なんです。諸々の経緯で男性設定になりましたが、ニケライ・ファラナーゼさんが声をあててくれたのもあり、中性的なキャラクターになりましたね」と、思わぬ小ネタが飛び出した。気になった人は是非、劇場に足を運んでいただきたい。
トーク後半では、ミノフスキー粒子の話に…
玄馬「基本的に電波妨害するものです。ガンダムが作られた1979年ごろは冷戦の影響などもあり、長距離誘導兵器を使用することがリアルになっていました。その時代に巨大ロボットを出すことがリアルにつながらなかったんです。ガンダム以前までのアニメ作品は異世界からよくわからない敵がやって来るのを、何とかできるのはロボットしかいない、という状態だったものを富野由悠季監督がリアルに近づけたいということで、架空のミノフスキー粒子があることを前提とした世界観を作り、これがあるせいで電波障害が起こる。そうなるとロボットに乗って接近戦を行わないといけなくなり、そのためロボットが生まれたという設定が大元にあるんです。」と丁寧に語る。
玄馬「誘導兵器が使えなくなった世界で、そのミノフスキー粒子を利用し、意思を伝播させて、子機に戦いをさせたものがファンネルです。これにより長距離戦ができる世界観になりました。ここで『閃光のハサウェイ』の世界では、何故ファンネルがあるのにファンネル・ミサイルを作ったのか? と気になると思うんですけど、メタ的な話をすると、誘導兵器はおもしろいけど、現在の通常戦闘と同じなので、世界観が戻ってしまうんです。大変さを面白くするために作ったのに、ファンネルで処理できてしまうと富野監督自身が気づいたので、あえて封印している時期があったほどです。ここで、ファンネル・ミサイルの話に戻りますが、基本的にファンネルは地上だと使えないんです。宇宙で使っているときは浮かせていて、意思を伝えて動かしているんです。浮いているからできているということで、地上では使えないという解釈です。仮に地上でファンネルに意思を伝えたとしても、機動力がないので使い物にならない。それに対してファンネル・ミサイルは、ミサイルにミノフスキー粒子を利用して方向転換の指示を出す誘導兵器というイメージです。つまり、地上で使うために生み出されたのが、ファンネル・ミサイルだと思ってください。」と丁寧に説明した。この設定構造の上で今回の作品も動いているそうだ。
最後に、岩下「村瀬監督と玄馬さんのアイデアが積み重なってできたんだなと実感しました。」と感動の様子で述べ、秋山「次回はウェーブも気にして観て頂けると幸いです」とアピール。玄馬「映像を観ていただくのもそうですが…帰りは気をつけて帰ってくださいね。ありがとうございました」と来場者に気遣いを見せ、イベントを締めくくった。