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- コラム
【第01回】高橋良輔監督旅行記「飛行機雲に誘われて」
飛行機雲に誘われて……その1
今年からは、旅行記を連載と言うことであるが、正直ずいぶん安請け合いしたものだと後悔している。それと言うのも、
「さてとぉ……」
と机の前に座ったはいいが、どこからどう手を付けていいやら迷うこと迷うこと! いついつ何処へ何しに行った、それでこんなことがあった、あんなものを食べた、なんてことを並べてみたのだがてんでモノにならないのだ。日記の書き写しのような、メモを整理したような、そんなものしかモニターには打ち出されない。
「ええっ!? これじゃしょうがないでしょう!」
てなわけで頬杖ついて2、3日考えこんじゃいました。ま、考え込んだからって結果何にも出てこなかったのだが、ある発見があった。その発見とは、洋の東西を問わず旅行記・紀行文のようなものの中に共通してあるのは“あこがれ”であった。あこがれ…何へのあこがれか。それは、まあそのぉ、まあ言えば…旅へのあこがれなんだなあ。
「だから旅の何にぃ!」
色々なんです色々、人によって求めるものは違うんですが、天才が書いたものも偉大な人が書いたものも秀才が書いたものも凡人が書いたものも、その核には全てあこがれが巣食っているんですねえ。旅に求めるものの重さも軽さも必死さも、得たものも傷ついたものも失ったものも千差万別なんだけれど、出発には、旅立ちの根っこには、あたしらには何かへの“あこがれ”が見て取れたのである。
私の旅の根っこにも、いえいえごく表面的、浅い、分かりやすいところに“あこがれ”がうろうろしていることに気が付いたのであります。これからそれらのあれやこれやを、様々な出来事をまぶしながら、思い出し思い出し書いてみようと思います。
私に旅心を起こさせる一番は蒼穹を横切る一筋の飛行機雲です。ふと見上げた空にこれを見つけると激しく心が揺さぶられます。で今回の連載のタイトルは、
『飛行機雲に誘われて』
です。