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2021.09.10

クリエイターインタビュー 第4回 神志那弘志 <前編>

 

 

 

今回のクリエイターインタビューは、『魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸』の監督を務めた、スタジオ・ライブの神志那弘志さんが登場。
前編では、『銀河漂流バイファム』や『魔神英雄伝ワタル』のキャラクターデザインを担当した芦田豊雄さんとの思い出、芦田豊雄さんが立ち上げたスタジオ・ライブとサンライズの関わり、『魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸』の企画スタート当時の話などを伺った。


――神志那さんがサンライズの作品に関わるようになったのはいつ頃からでしょうか?

神志那 僕がスタジオ・ライブで原画の仕事を始めてちょうど1年目、1983年に放送が始まった『銀河漂流バイファム(以下、バイファム)』からですね。サンライズは、外のスタジオから見ると、オリジナルのロボットものを多く手掛ける制作会社というイメージが強かったですね。芦田豊雄さんは、それ以前にサンライズ制作では『サイボーグ009』でキャラクターデザインとして関わっていましたが、作品として深く関わったのは『バイファム』からだと思います。当時は、『バイファム』では、芦田さんとわたなべひろしさんが作画監督として立つ形で、2班体勢で回していたと思います。

――当時のサンライズはどのような雰囲気でしたか?

神志那 サンライズは、いくつかのスタジオがあったんですが、スタジオごとにカラーがあったという印象ですね。『バイファム』は第3スタジオで、植田益朗プロデューサーを中心にいろんな面白い方がいらして。制作進行の方ともお話をする機会があったんですが、演出を目指している方、プロデューサーを目指している方など、バラエティに富んだ方がたくさんいたのが印象的です。ボンズの社長となった南雅彦さんをはじめ、その後、みなさん有名になった方がいっぱいいました。当然ながら制作進行の方は若手で、みんな僕と同じ20代ということもあって、お会いして話をするのがとにかく楽しかった。当時、サンライズさんは海の家を千葉の方に持っていて、夏になると僕たちも当時はよくそこを借りて遊んだりと交流がありました。とにかく、サンライズさんはみんなでクリエイティブなものを楽しく作ってくれる雰囲気、社風というのが昔からありましたね。

――そうした形でサンライズ作品に関わる中で、その後『魔神英雄伝ワタル(以下、ワタル)』へと繋がっていったわけですね。

神志那 そうです。『バイファム』の後には、『超力ロボ ガラット』をやって、サンライズ作品では、わりとロボットものやギャグものが続いていましたね。当時の80年代は、OVAが大流行していて、作品もハイターゲットなものが多かったんですが、芦田さんはずっと「子供向けの作品をやりたい」と言っていて。その中で生まれたのが『ワタル』ですね。

――芦田さんが代表をなされていたスタジオ・ライブは、どのようなスタンスでお仕事をされていたのでしょうか?

神志那 芦田さん自身が、フリーの立場として自分のカラーをキャラクターデザインの名で売っていく方で。そうした中で、僕を含めて芦田さんの絵に憧れて集まった人たちで作られたのがスタジオ・ライブになります。芦田さんのもとに集まったフリーの作画の集団という感じでした。芦田さん自身にカリスマ性があるんですが、「俺について来い!」というタイプでは無く、のらりくらりとしていて、表向きには一生懸命仕事をしている姿を見せない。そういう美学を持った方でした。だから僕らにも仕事のチャンスをできるだけ与えてくれて。それこそ、『バイファム』、『ワタル』では、各話のゲストキャラクターをスタジオ・ライブのメンバーに任せてくれて、『魔動王グランゾート』ではメインキャラクターの何人かを担当させている。とにかく、できるだけ若手にチャンスをくれる方でした。「ここは任せた!」と仕事をみんなに振って、自分から飲みに行くような感じでした。そして、僕たちに仕事を振ったくせに「お前ら、今から飲みに来い!」と言ったりするんですよ(笑)。そういうところが格好良かったですし、変に押しつけがましくもなく。そうしたやり方でスタジオ・ライブのスタッフは伸びていったという感じですね。

――『ワタル』はそうしたスタジオ・ライブでの楽しい雰囲気が作品に影響を与えたと思いますか?

神志那 芦田さんがやりたかったことであり、その意図を汲んでシリーズ構成の小山高生さん、監督の井内秀治さんを含めて、子どもたちに楽しんでもらう作品作りを目指したのが大きいと思います。作画監督をしていたスタジオのメンバーも、やっぱり面白おかしくするにはどうしたらいいのかと常に考えていました。やはり、芦田さんのやりたかったことの集大成であることは間違いないと思います。芦田さんは、「子どもたちに楽しんでもらうことで、その子たちが成長して、将来アニメーターになっていくんだ」ということをおっしゃっていたので。それはこの30年間で結果が実際に出ているんです。「『ワタル』を見てこの業界に来ました」という話は、たくさん聞いています。アニメーターだけでなく、音響周りなどにも影響を受けたスタッフがいます。当時小学生で観ていた人は、現在は40代くらいになっていますが、実際にこの業界に『ワタル』を観ていて好きだったという方が入ってくるのが、芦田さんの最初の目指したやり方で、それは間違いではなかったなと思います。

――当時、一緒にお仕事をされる中で、芦田さんがこだわられていたことなどありますか?

神志那 芦田さんは「常に周りにアンテナを張っている」と言っていたんです。アニメ好きが仕事をしている現場ですが、アニメに集中してしまうと世間で何が流行っているのか見失ってしまう。それは時事ネタも、ファッションにも当てはまるので「アニメだけにこだわってはいけない」と常に仰っていました。そうしたこだわりが、キャラクターデザインの服装や表情、髪型に反映されているんですよね。

――『ワタル』では、当時主流となっていたロールプレイングゲーム的な要素もしっかりと取り入れていましたね。

 

神志那 その辺りの感覚は、ゲーム制作をしていて原作の広井王子さんの会社であるレッドカンパニー(現:レッド・エンタテインメント)から来た流れでもあるんですが、芦田さんの感覚とうまく噛み合っていますよね。ゲーム的な要素と、監督の井内さんの王道ヒーローもの、そこに芦田さんのちょっと変なキャラクターがうまく混ざり合うことで、良い作品になったんだと思います。


――神志那さんご自身は、サンライズとは久しぶりのお仕事という感じですか?

神志那 そうですね。僕が監督になってからは、残念ながらサンライズさんと一緒にお仕事をする機会が無く。僕も常々サンライズさんとお仕事をしたいなと思っていたんですが、なかなか実現しないで時間が経ってしまい。そんな中で、今回の『魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸』の話をいただいたという感じです。

――どのような形で企画はスタートしたのでしょうか?

神志那 BANDAI SPIRITSさんが7体の龍神丸の商品を展開するので、そのPVを作りたいということから、またキャラクターをお願いしたいとプロデューサーから依頼を受けました。そのお誘いも嬉しかったんですが、その後にまさか、僕に監督として参加して欲しいと話が来るとは思ってもいなかったです。僕自身、何本か監督作はありますが、サンライズさんの監督作品をやることはまずないだろうと思っていたので。だから、最初はお断りしたんです。テレビシリーズの監督を担当された井内さんのお弟子さんなど、僕の他にも適役な方もいらっしゃいますし。その後にもう一度、改めて僕にお願いしたいと、サンライズの池谷浩臣プロデューサーから言われまして。そこまで言われて二度目を断る理由はないので、監督を引き受けさせていただきました。

――久しぶりに『ワタル』の続編となるわけですが、作品制作のポイントはどのようなところにありましたか?

神志那 『ワタル』のファンは本当に根強くて、30年経ってもスタジオ・ライブに年賀状やお手紙をいただいたりしているんです。間に新作なども作られていないのに、本当に好きな方が根強くずっと応援してくれて。『七魂の龍神丸』は、そんな中で出て来た作品なので、これはファンを裏切るわけにはいかないというのも、まず僕が1度監督をお断りした理由でもあるんです。それに応えることが僕にできるだろうかと。だけど、引き受けることを決めたわけですから、まずはファンを裏切らないというのが自分の中での第一条件としてありましたね。

――エッセンスを残した現代風の『ワタル』として作り直される可能性もあったかと思いますが、本編を観ると、思っていた以上にテレビシリーズの頃の雰囲気が残っている作風になっていましたね。

神志那 ファンを裏切らないという形でやった結果です。企画の当初は、7人のワタルが登場するというものもありました。7人全員を田中真弓さんが演じるのか? 7人の声色を作れるのか? 「ワタルだ」と言いながら見た目が変わってしまうと、それは『ワタル』と違うのではないか? と色んな検証を重ねた結果、その企画は止めることになりました。その後、龍神丸の魂を分解して、それを探すという話にすることで話が進められました。当初は、PVだったんですが、どうせならちゃんとストーリーとして楽しめるものを作りましょうということで、配信された形になっていきました。

後編に続く


神志那弘志(こうじなひろし)
1963年6月4日生まれ、熊本県出身。アニメーション監督、演出家、キャラクターデザイナー、作画監督。1982年にスタジオ・ライブに入社、現在は代表取締役社長を務めながら、アニメーションクリエイターとして活躍している。
自身が監督を務める特別編集版『魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸 -再会-』の作業中。

 


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