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2022.03.25

サムライハート 〜2022~ 配信記念スペシャル対談<前編>


30周年を経てなお人気の伝説のアニメ『鎧伝サムライトルーパー』。第二部でOPを飾っていた、森口博子さんによる『サムライハート』は今でもアニソンの代表曲だ。その『サムライハート』が令和の今、新たな音でよみがえった。森口博子さんによるセルフカバー『サムライハート 〜2022~』、そして『鎧伝サムライトルーパー』で主人公の真田遼/烈火のリョウを演じた声優・草尾毅さんによるカバー『サムライハート 〜烈火〜』。この2曲が1月30日より全世界配信スタートしている。

森口博子さんによるセルフカバー『サムライハート 〜2022〜』は、十川ともじさんによるアレンジ。オリジナルの良さを活かしながらも現代的になった経緯を語るべく、作曲者の茂村泰彦さんのもとに森口博子さんがやってきた。茂村さんをホストに、森口博子さんと草尾毅さんが『サムライハート』への思いを熱く語る、前後編の対談企画がスタート!

 

茂村 森口博子さんとお会いするのは、ものすごく久しぶりですよね?

森口 そうなんですよね。最後にお会いしたのは……。

茂村 多分、僕が楽曲提供をした『君を見つめて -The time I’m seeing you-』のレコーディング以来じゃないかな。

森口 その節は本当にありがとうございました。

茂村 こちらこそ、『君を見つめて』も、そして『サムライハート』も蘇らせてくださってありがとうございます。

森口 今回『サムライハート』をセルフカバーするというお話をいただいて、私の中では「よし来た!」っていう思いだったんですよ。というのは、ライブで時々『サムライハート』を歌うと、イントロからもうファンのみんなが喜んでくれて、「待ってました!」のエネルギーがすごいんですね。歌うと必ず盛り上がるし、必ずみんなが熱くなれる名曲なんです。そんな大好きな楽曲を再びレコーディングさせていただける。私も、ファンのみんなも熱くなる企画だなって思いました。

茂村 嬉しいなぁ。今でも愛してくださっているんですね。

森口 大人気ですよ。『サムライハート』って、ここで決めてほしいっていうところでちゃんと決めのフレーズが来るし、歌っていても気持ちがガシッとハマるんです。私はいつも、大地を踏みしめるような気持ちで歌わせていただいてますね。

茂村 森口さんがこの曲を最初に歌うことになったときのことって、覚えてますか?

森口 当時私はなかなか売れなくて、「あの子は才能がないから九州に返した方がいい」って言われるほどの瀬戸際の頃だったんです。私も「大人は私のことを全然見てない!」って思いつつ、「どんなお仕事でも頑張りますから」って言っていた頃に出会ったのが、『サムライハート』だったんですよね。私の曲ってそれまではバラードやミディアムテンポのものなど、柔らかかったりしっとりとした曲が多かったんです。だけど『サムライハート』はアニメの主題歌で、しかもハードめな曲。私にとっては挑戦とも言える楽曲でした。

茂村 そうだったんですね。

森口 当時、アニメのイベントに出演すると、私は無名なんだけれど、『サムライハート』のイントロが流れた瞬間、客席から「キャー!」っていう声がすごくて。『鎧伝サムライトルーパー』がすでに大ヒットしていたので、私が歌うときに会場のみなさんがウェルカムで拍手をしてくださったんですよね。「剣をかざして~」と歌い出すと、よし行くぞっていう気持ちになれた。辛い時代だったけど、この曲を歌ってる時には、アニメファンや『サムライトルーパー』ファン、そして当時いたわずかな森口博子ファンが温かい空気にしてくれた。そういう思い出の曲でもあるんですよね。

茂村 当時の僕はというと、まず自分の音楽活動をやりつつ、作家としてアイドルの方などに楽曲提供をしていて、アニメソングも書き始めた時だったんですね。それで『鎧伝サムライトルーパー』の曲をお願いしますという話が来て。僕にとっては、アニソンで初めてのヒット曲なんです。

森口 そうだったんですか! 茂村さんにとっても思い出深い曲なんですね。

茂村 そうなんです。その後、アニメのお仕事が増えましたしね。実を言うと、それまではアニメソングというものに少し偏見がありました。でもやってみると、色んな音楽性を試せるので、面白い。そう思えるきっかけにもなった曲なんですよね。草尾毅くんも、『鎧伝サムライトルーパー』が初めてのTVアニメの主人公だったそうですから、それぞれに思い出のある曲なんですね。

森口 そうですね。初めてレコーディングしたときは、とにかく力強く、かっこよく歌おうって、気合いが入ってたと思います。ロックな曲はあまり歌ったことがなかったんですよね。その気合いの表れとして、最後の「勇気だけの素肌で」のところで、ちょこちょこ西城秀樹さん節が出るんですよね(笑)。

茂村 「っひゅうきだけの~」って歌ってますよね(笑)。

森口 歌ってます!(笑) あれは私の気合いの表れ。後になってみなさんに「ヒデキみたい」って言われて赤面しました。ライブだとテンションが上がっているので、特にヒデキさんが出ちゃいますね。ちなみに今回の『サムライハート 〜2022〜』も入れちゃっています。私の中で情熱=秀樹さんなので、きっとそれが染みついてたんだと思います。

茂村 僕は、当時『サムライハート』のレコーディングは行けなくて、『君を見つめて』の時は行った気がします。ただはっきり覚えているのは、そのときに森口さんがすごいミニのスカートを履いてらして。自分の前を通り過ぎるときに、ドキドキしたんです(笑)。

森口 (爆笑)

茂村 綺麗なおみ足で、見たいんだけど見ちゃいけないよな……とドギマギするというね。

森口 おかしい~! そんなことがあったんですね(笑)。

茂村 先日、草尾毅くんと対談したんですけど、今回草尾くんも『サムライハート』をカバーすることになったものの、森口さんの歌唱力と人気あっての曲だからと、最初は躊躇したらしいんですよね。

森口 とんでもない、草尾さんもカバーされると聞いて、私はとても嬉しかったですし、曲を聞いて感動したんですよ。真っ直ぐで熱い歌声に。草尾さんのカバーも私のセルフカバーもファンのみんなも大喜びで。

茂村 今回のセルフカバーは、どういう方向性にしようと考えたんですか?

森口 私がいつもアニソンをカバーする時にディレクターさんにお伝えしているのは、印象的なオリジナルのフレーズは必ず残すということです!アニソンは映像と物語と音楽が三位一体の感動がありますよね。当時のその感動が、見た人の細胞にまで染み込んでいるので。作品との繋がりは絶対に壊したくない。茂村さんが作曲してくださったこのメロディーは、盛り上がるところでちゃんと気持ちがよくなる。決めのフレーズも完璧。オリジナルの良さを、リスペクトの意味でも残したいんですとお伝えしました。でもせっかく2022年にセルフカバーするんだから、何か新しいことも吹き込みたいじゃないですか。だからイントロの前に、さらに新しいイントロを少しつけてほしいですって私からリクエストしました。

茂村 ああ、あれはそういうことだったんだ!

森口 はい。新しい何かが始まるぞ、と思わせて、だけどいつものイントロが始まって、ああ『サムライハート』だって思ってもらえるようにって。

茂村 イントロの前に2小節、今風の別のイントロが入っていて、そこがかっこいいんですよ。そして聞き覚えのあるいつものテーマに入る。これはすごいなと思ったんですよね。

森口 草尾さんの『サムライハート 〜烈火〜』は茂村さんがアレンジされているんですよね。

茂村 草尾くんと話し合って、なるべくオリジナルの形は壊さないけども、でも新しくしようと。例えばサビから始めたり。ブレイクするところは一緒なんだけど、その後のフレーズはあえて変えたりと、ところどころで変化をつけたんです。きっと森口さんの方は、かなり原曲のイメージはキープされつつやられると思ったんですが、できたものを聞くとどちらも面白かったですね。あのイントロの2小節は、めちゃくちゃかっこいい!

森口 嬉しい! 私も、サビから始まる、茂村さんの新しいアレンジを聞いた時に、「うわっ、こうきたか、かっこいい!」と思いました。新しくもあり、でもサビをめちゃめちゃ崩してるわけでもないのに、サビから始まるっていうのはすごいインパクト。私もライブでやっちゃおうかな(笑)。

茂村 お二人にはライブでぜひこれを歌ってほしいんですよね。僕はお金払ってでも見に行きますよ。

森口 茂村さんも一緒にやりましょうよ! 私も草尾さんバージョンを一緒に歌ってみたくなりました。やっぱり名曲だから、どんなアレンジをしてもかっこいいんですよね。普通にキーボードだけで弾いても、メロディがすごくよくできてるので、素敵になるんです。シンプルにスローにしてやってもグッと来ますよ。今回私のリアレンジは十川ともじさんが担当してくださったんですが、ギターが印象的なロック色の強い仕上がりになっています。そしてオリジナルに忠実だけど、十川さんなりの、シャララ〜ンというストリングスのカウンターメロが入っているのが、すごくカッコイイんですよ!!(笑)。

茂村 十川さんのアレンジは、ストリングスのメロディもすごくいいですね。

森口 ですよね! 勇ましさと洗練さが感じられて私も好きです!

茂村 僕は十川さんにお会いしたことはないんですが、勝手にご縁を感じていて。僕は髙橋真梨子さんの曲を何曲か書いているんですが、その大半のアレンジが十川さんなんです。自分のデモテープを渡してから、十川さんがどうアレンジをしてくださるのか、それも楽しみなんですよね。

森口 髙橋真梨子さん、私の小学校、中学校の先輩なんですよ。

茂村 それはすごい! ご縁といえば、僕もエンジニアをお願いしたことがある高桑心くんは、『君を見つめて』でもやってもらっているんだよね。

森口 『GUNDAM SONG COVER』シリーズ全てと、私の35周年記念アルバム『蒼い生命』のエンジニアは全部、高桑さんにお願いしています。いろんなところが繋がっていたんですね。

茂村 『サムライハート 〜2022〜』のレコーディングはどうでしたか?

森口 80年代に生まれた楽曲が、昭和、平成、令和と3つの年号を経てここに生かされているんだと思ったら、喜びが一番大きかったですね。『サムライハート』での私の声って、まだ子どもっぽいと思うんです。だけどアニメファンの方たちには、当時のまま歌ってほしいという思いもあるかもしれない。一方で今の私の声はライブを積み重ねてきて力強くなっていて、中低音域もすごく太くなっている。だから『サムライハート 〜2022〜』を初めて聞いてもらうときはドキドキだったんですが、今の私の声で歌っているのがかっこいいっていう感想を毎日のSNSのエゴサで見て、今の歌声も受け止めてもらえたんだと思えて嬉しかったですね。

茂村 僕は森口さんの歌のファンなんですよ。昔ってアイドルの方はそんなに歌がうまくないというイメージがあったけれど、森口さんの歌を初めてレコーディングで聞いた時に、「うわぁ、上手な人なんだなぁ!」と驚いたんですよね。ちょっと冷たい透明感というのかな。凛とした感じ。それは当時も今も変わらないですよね。

森口 嬉しい! でも凛としているとしたら、それは本当に曲のおかげなんです。私、子どもの頃から音人間なんですね。音が鳴るとスイッチが入ってゾクゾクしちゃう。凛とした歌声だとしたら、それはメロディの力を私の細胞が喜んでるんだと思います。私、茂村さんに伺いたいことがあって。『サムライハート』はDメロでしっとりとしたメロディになって、そこからまたサビに戻りますよね。あの展開はどうやって生まれたんですか?

茂村 僕は昔も今もその傾向があるんですけども、とにかくかっこいい転調を見つけたいんです。

森口 なるほど!

茂村 僕が作曲をするとき目指すものは2つあって、まずはかっこいいイントロを作りたい。そして、かっこいい転調を探したい。自然に繋がるかっこいい転調ね。いいメロディは当たり前だし、さらにかっこいいイントロと転調がほしい。洋楽でも、イントロだけでかっこいい曲って、絶対的にいい曲じゃないですか。

森口 わかります。

茂村 『サムライハート』を作った当時は、日本の音楽では転調のある曲って少なかったんですよ。僕は意識的に洋楽風な転調を一生懸命探していて、いい転調ができたときは自慢しちゃうぐらい(笑)。『サムライハート』の転調はインパクトがありつつ、自然にサビに戻れる。自分の中でもよくできた転調だと思います。『君を見つめて』でも、結構すごい転調をやっているんだよね。

森口 『君を見つめて』のサビからの転調もすごいですよ! 私はまずBメロでせつなくなって泣きそうになるんです。そこから「行くぞー!」って気持ちになって、サビで転調する。ライブで盛り上がるポイントです。

茂村 嬉しいなぁ。転調の話って普段、あまりピンと来てもらえないから(笑)。

森口 いやいや!重要!今回はお伝えすることの中に、忘れないようにってメモに“転調”って書いてあるので、今すごく興奮しています。私は転調って、仕掛けてもらってるっていう安心感を感じるんです。そこに乗っかって、自信を持って歌っていますね。素敵な転調をありがとうございます!

茂村 『サムライハート』が生まれてから約30年、この曲をずっと支えてくださっている森口さん、草尾さん、スタッフの皆さん、そしてファンのみなさんの大きさをすごく感じますね。作品をこうやって丁寧に作れば何十年も残るんだなっていう証が、目の前にあるので。今日森口さんとお話しして、この気持ちを忘れずに、またこれからも頑張っていきたいと思いましたね。

森口 当時からイベントやライブで歌うとすごく盛り上がる、本当にかっこいい楽曲だなという印象だった『サムライハート』。何年経ってもファンの皆さんに愛される曲だからこそ、こうしてまたスタッフの皆さんの手によって蘇らせることができました。すべてに感謝です。茂村さんに書いていただいたこの名曲を、これからもずっと大切に熱く歌い続けていきたい。ライブでみなさんと一緒に歌える日を楽しみにしています!

(取材・構成 大曲智子)


スペシャル対談<後編>はこちらから
 

【配信情報】
■「サムライハート ~2022~」各音楽サービスにて全世界配信中!

URL:https://lnk.to/SamuraiHeart_2022
<収録曲>
1. サムライハート ~2022~ 歌:森口博子
作詞:三浦徳子 作曲:茂村泰彦 編曲:十川ともじ
2. サムライハート ~烈火~ 歌:草尾 毅
作詞:三浦徳子 作・編曲:茂村泰彦

イラスト:みずき健

 

 

 

■「サムライハート ~2022~」森口博子 アニメーションMV
URL:https://youtu.be/g8VPgDqKbQU

■オリジナルサウンドトラックほか関連アルバムも好評配信中!
URL:https://lit.link/SUNRISEMusic