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サムライハート 〜2022~ 配信記念スペシャル対談<後編>
30周年を経てなお人気の伝説のアニメ『鎧伝サムライトルーパー』。第二部でOPを飾っていた、森口博子さんによる『サムライハート』は今でもアニソンの代表曲だ。その『サムライハート』が令和の今、新たな音でよみがえった。森口博子さんによるセルフカバー、そして『鎧伝サムライトルーパー』で主人公の真田遼/烈火のリョウを演じた声優・草尾毅さんによるカバー『サムライハート 〜烈火〜』。この2曲が1月30日より全世界配信スタートしている。
草尾毅さんによる『サムライハート 〜烈火〜』は、作曲者である茂村泰彦さんがアレンジを担当している。奇跡のようなコラボレーションとなったこのカバーは、一体どのようにして生まれたのだろうか。『サムライハート』対談企画の後編は、作曲者の茂村泰彦さんと草尾毅さんのトーク。どうやら草尾さん、このアレンジの発案者だそうで?
茂村 レコーディング以来、初めて草尾くんと『サムライハート 〜烈火〜』について話せる機会をもらえて、嬉しいです。
草尾 こちらこそ! ありがとうございます。
茂村 もともと草尾くんから、僕にアレンジをしてほしい、ロックバージョンでというご指名だったんだよね。
草尾 昨年「声優紅白サンライズONLINE LIVE」というイベントがあって、タイトル通りサンライズ作品の歌を出演声優が歌うというもので、僕は『サムライハート』を歌ってほしいっていうオファーをいただいたんですが、一度お断りしたんですね。なぜかというと、僕が歌うとなると、オリジナルのキーを変えないといけない。キーを変えたオケが、どんなクオリティか全く分からないし、その作業はとても大変な事が想像できる。なので、僕は責任を持てないのでお断りしたのですが、まぁ、紆余曲折を経て。
茂村 それはすごい(笑)。
草尾 そのとき、「じゃあ作曲者の茂村さんにアレンジをお願いできるなら」って提案しました。今も『サムライハート』を聞いて喜んでくれるのは、当時の『鎧伝サムライトルーパー』を知っている方達でしょうし、その方達に向けて、そもそもどんな風にリメイクしたらいいのかも分からないし、それなら、オリジナルの作曲者で、面識もある茂村さんにお願いできないだろうかと。僕の中で選択肢は、それしか思いつきませんでした。残念ながら『声優紅白サンライズ』では、実現しませんでしたが、今回の『サムライハート ~烈火~』では紆余曲折を経て(笑)、茂村さんアレンジにたどりついたわけです。
茂村 僕も「声優紅白サンライズ」での草尾くんの歌唱は観させてもらいました。
草尾 今回は、本当にご縁が重なった企画になりました。イラストレーターの、みずき健さんがイラストを描いてくださった『鎧伝サムライトルーパー』の『君を眠らせない』というアルバムのジャケットが、凄くステキで、当時、大好評だったんです。それで、茂村さん同様、言うだけならタダくらいのダメもとのノリで、みずき先生に、ジャケットイラストをお願いしますと。茂村さん、みずきさん、がご一緒してくだされば、森口博子さんのお隣に、草尾 毅の名前があっても大丈夫と思えるかなと(笑)。
茂村 そんな、恐縮しすぎですよ(笑)。
草尾 それから、サンライズミュージックの担当の女性が、まるで、ドラマの敏腕刑事の捜査みたいな仕事ぶりで、ゼロから、みずき先生までたどり着けたんです。が、先生は絵のお仕事をしばらくなさっていなかったそうで、もう執念でOKをいただいたみたいです(笑)。そうやって万全の布陣ができてしまったので、僕としても「やるしかない」と腹をくくりました。
茂村 そんな経緯があったんですね。今回の企画は、僕の中では草尾くんのエネルギーに引っ張られたなと思っていて。草尾くんから、「ジャケットはみずき先生で、アレンジャーは茂村さんで」ということだった。どうして僕なんだろうと思ったら、ハードめのロックテイストにしたいんだと。その後お会いして打ち合わせしたんだけど、もう熱いのなんのって(笑)。その熱さが「懐かしいな、嬉しいな」と思って、喜んでやらせてもらいますとお返事しました。あまりのパワーに圧倒されちゃったところもあったけどね(笑)。草尾くんとは93年に、草尾くんのソロアルバム『Beginning Breeze』でご一緒しているんだよね。そのときからもう歌がうまいのは知っていたから、今回も心配なかった。草尾くんにとって、『鎧伝サムライトルーパー』は初めての主役だったんだよね?
草尾 そうですね、TVアニメでは初めての主人公役でした。それまでOVAの主人公はやったことがあったんですけど、TVシリーズとして、1年もやるような作品での主役は初めてのことでした。
茂村 僕もそれまで、アーティストへの楽曲提供やアレンジはしていて、アニメ関係の楽曲も少しやっていたんですけど、TVアニメのOP曲として自分の曲が毎週流れるっていうのは、『サムライハート』が初めてだったんです。アニメが大ヒットして、『サムライハート』もたくさん聞いてもらえて。僕の中で、アニメの曲を作ることを楽しめるようになったのは、『サムライハート』がきっかけだったんですよね。
草尾 今回、茂村さんとは数十年ぶりの再会でしたが、楽曲制作のイメージを伝える作業は楽しかったし、真剣になりました。まず打ち合わせの段階で、「放送当時のテイストや雰囲気を現代風にアレンジするか。30年前にやってたものを今やるならどうすればよいのか…」みたいな相談をしましたよね。僕はあまり洋楽に詳しくないんですが、90年代のボン・ジョヴィやジャーニーみたいなものをイメージしていますってお伝えして
茂村 あと、タッキー&翼の曲も教えてもらったよね。
草尾 方向性の1つとして、タッキー&翼の『SAMURAI』という曲がすごいサムライとロックの融合みたいなイメージのアレンジだったで、それも出しましたね。昔カラオケに行ったときに、一緒に行った奴がこの曲を歌って、カッコいいなと思って覚えていたんです。『侍』というイメージを尖ったゴリゴリのロックでやってください、みたいなニュアンスをどう伝えるか、色々試行錯誤の中で、参考までに出させていただきました。
茂村 そういったヒントをいただいて、すぐに「じゃあこのテイストでいこう」って固まりました。80年代から90年代にかけての、『鎧伝サムライトルーパー』が始まった頃に流行っていたハードロック。でも80年代、90年代風そのままでやったら、多分どこかに古くささが入ってしまうと思うんです。レトロな感じになるのならいいけど、単に古くさいものにはしたくない。エッジ感がほしいなと思い、ブラスの音を足したりしています。ブラスを入れると現代っぽくなるんですよね。
草尾 僕のつたない説明をちゃんと受け止めてくださって、思っていた通りのアレンジにしてくださいました。感動しました。オリジナルや森口さんのカバーとも全く異なる感じで。
茂村 森口さんのほうはオリジナルからそんなに変えないだろうっていう気もしていたんだよね。最初の打ち合わせの時に、キーはもちろん変えなきゃいけないけど、テンポを変えていいのかどうか、構成を変えていいのかと確認したら、全部OKだと。森口さんバージョンと違いを出しつつも、『サムライハート』らしさはちゃんと残さなきゃいけないなと思ったんですけど、結果的にうまくいきましたね。自画自賛ですが(笑)。
草尾 サビから始まる構成にしてくださったのも最高でした。あれは茂村さんの素晴らしいアイデア!
茂村 テンポを上げてロック感を強くしたら、イントロが自分の中で盛り上がっちゃって(笑)。盛り上がったところにAメロを入れて落ち着いちゃうのはもったいないなと思って、それならもう、いきなりサビから入っちゃえと。そしてコーラスをガツンと入れたら完璧ですよね。先にオケをレコーディングしたとき、草尾くんは他の仕事が終わってから駆けつけてくれて。
草尾 声優の仕事でもそうですけど、僕はすごく事前の準備をして、頭でっかちにして本番に臨むタイプなんです。『鎧伝サムライトルーパー』をやっていた頃は、夜通しセリフの事を考えて、寝れずにスタジオに行って、途中でガス欠になったりした事も(笑)。今はだいぶ余裕を持ってやれるようになりましたけど、それでもやっぱり情報がないと不安なんですね。だからオケの収録も見て、雰囲気から知ることができて、すごく贅沢な体験でした。
茂村 オケのミュージシャンは草尾くんからのリクエストで、当時のハードロックを体験している人。となるとだいぶ年齢層も高くなりましたね(笑)。今回、エレキギターは二人にしています。ステレオの左右から聞こえるギターを別々にしたかったんだけど、同じ人が弾き分けたとしても、手癖みたいなものがあるからどうしても同じになっちゃうんですよ。シンクロするので美しく聞こえるけれど、ハードロックのガリガリとした感じが薄くなっちゃう。違う人が弾くことで、ほんのわずかタイミングがずれたりして、それがお互いの音を引き立てる。それをやりたかったんですよね。
草尾 今回、ひとりずつ別に録るんじゃなく、全員一緒にスタジオに入って、せーので録っているんですよね。だからライブ感がすごくある。
茂村 今ってほとんど打ち込みで、ギターも他の楽器も全部ひとりでやることが多いから、こうやって大きなスタジオで収録することももう珍しいんですよね。ドラムの藤井修くんは、草尾くんも古くからの知り合いで。
草尾 そうなんですよ。スタジオに行ったら、「このドラムの人……。あっ、オサムちゃんだ!」って驚きました(笑)。昔、コンサートツアーをしていた時のドラムが、藤井さんだったんです。全然変わっていなくて、タイムマシンで当時に戻ったような気分になりましたよ(笑)。
茂村 オケの収録のときに草尾くんに試しに歌ってもらったら、すごくよくて。僕らは「これでいいぐらいだよね」って言っていたんだけど、草尾くんは納得できなかったみたいで(笑)。後日、ボーカルのレコーディングのときは僕がディレクションさせていただきましたが、何の苦労もなかったです。ちょっと力みすぎてるかなと感じたから、リラックスしてもらったぐらいでしたね。
草尾 レコーディングの日は、喉が完璧な状態ではなかったんです。大体、そういうときに限って大事な仕事がある。今回もそうだったけど、もう関係ねぇと割り切って思い切り歌いました(笑)。今回『サムライハート』をリメイクする意味を考え、茂村さんたちに自らお願いして、素晴らしいミュージシャンの方たちが集まってくれている。がっかりさせたくないし、下手なりにベストを尽くさないと本当に失礼に当たるなと。平静を装っていたんですが、やっぱり力んでしまいましたね(笑)。
茂村 今回新たに『サムライハート 〜烈火〜』を作って、我ながら「いい曲だなぁ」と思いましたよ(笑)。30年前に曲を作ったときのデモテープはもうないですし、その時の細かい気持ちは覚えてない。だけど今回レコーディング前にオケのデモを作って、仮歌を歌った時に、自分で歌いながら「いい曲じゃん」って素直に思ったんですよね。30年経ってもいい曲は残るんだな、とも思いました。
草尾 『サムライハート』はアニメの主題歌という大きなもので、歌詞も曲も、なにより『森口博子さん』の歌唱が素晴らしいですよね。その曲を今回カバーするにあたって、たくさんのご縁を感じさせてもらえた。自分の仕事に真剣に向き合ってきた人たちとモノづくりをすることってこんなに楽しいんだ、こんなにいいものができるんだということが、再確認できました。この曲が作ってくれたご縁は、僕のこれからの仕事にも生きると思う。何よりまたこういう企画があったときに、自分の考えを臆せずちゃんと伝えて、めんどくさがらずにちゃんと説明しないと、いいものは生まれないんだと実感しました。本当に勉強させていただきました。
茂村 『サムライハート 〜烈火〜』の聞きどころは、なんといっても草尾くんの熱い思い。声優さんってちゃんと言葉が伝わる歌い方をされるんだなと、当然のことながら感じましたね。だんだん気持ちが上がっていったのか、Dメロのリズムとキーが変わるところで、すごいレベルのボーカルを聴かせてくれているんですよ。「愛…」や「心の剣」というところの、言葉のちょっとしたしゃくり方とかもすごい。草尾くん、もう歌うことはないの?
草尾 需要があればどこでも行くし、いつでも歌いますよ!(笑)
茂村 声優さんとしてはもちろん、もう皆さんご存じだろうけど、ボーカリストとしても素晴らしい。また一緒に何かやりたいね!
(取材・構成 大曲智子)
スペシャル対談<前編>はこちらから
【配信情報】
■「サムライハート ~2022~」各音楽サービスにて全世界配信中!
URL:https://lnk.to/SamuraiHeart_2022
<収録曲>
1. サムライハート ~2022~ 歌:森口博子
作詞:三浦徳子 作曲:茂村泰彦 編曲:十川ともじ
2. サムライハート ~烈火~ 歌:草尾 毅
作詞:三浦徳子 作・編曲:茂村泰彦
イラスト:みずき健
■「サムライハート ~2022~」森口博子 アニメーションMV
URL:https://youtu.be/g8VPgDqKbQU
■オリジナルサウンドトラックほか関連アルバムも好評配信中!
URL:https://lit.link/SUNRISEMusic