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【第20回】高橋良輔監督旅行記「飛行機雲に誘われて」
飛行機雲に誘われて……その20
「またかい!?」
と言われちまうが、アラスカに行ってきた。
今回のテーマは"シロクマ"。前に一度経験しているのだが、歳も歳なので今回が最後のつもりで現在の地球上、厳密には地上を歩く最大の捕食獣に会ってきた。シロクマは白熊とも北極熊ともポーラベアーとも言うが、オスの成獣では最大700キロから750キロにもなると言われている純粋肉食の猛獣だ。見てくれはオスもメスも子供も可愛いんだが、生肉一番の完全肉食である。昔はネイチブも北極圏で一番怖い存在だったそうだが、今は人間には銃がある、まあクマに言わせりゃ人間の方がよっぽど怖い。
で、今回はアラスカ旅の一回目。
成田からANAでシアトルへ行きアラスカ航空に乗り換えてフェアバンクスへ。慣れた旅なので何の不安も感じず、
(ほんとアラスカ航空に乗ると空気が変わるよなぁ)
なんて辺りを見回す。何が変わるかというと、まず服装、それから体形。成田からシアトルまでの乗客はなんだかんだ言ってよそ行きの格好をしている。ビジネスマンはビジネスマンらしく、旅行客は旅行客らしく。それがアラスカ航空の乗客はまず全員が普段着っぽい、中に少し迷彩服のハンターらしき人が混じるが、表情もゆったり穏やかで構えずなにかと普段着っぽい。体形がまたそれを助長する。やけに大きいかばかに太いか、まずダイエットとかフィットネス、シェープアップなどという単語とは付き合いのない方々ばかりだ。で、そんな方々の中に身を置いてこちとらもゆったりと、窓の外を眺めていると、
(ん、フェアバンクスって内陸だよなあ?)
と頭の中に???が、下の景色は進行方向右側に海、陸側には所々氷河が、この景色が延々と続く。いつもと飛行ルートが違うのかなと思いつつ飛行機が降下を始めたらそんなことも忘れてしまった。やがて着陸。何やら機内アナウンスがあったが英語のカッラキシダメなあたしらは気にもせずほかの乗客の後について飛行機を降りた。飛行機が着けば早めに通関、そして預けた荷物の無事到着を一刻も早く確かめたい。何につけスローモーなアラスカンを追い抜きバゲッジ・クレームへ一直線。……ところがですね、荷物も出てこなければ人も出てこない。あれれれれ! なにかヘン!? あたしらしかいないがらんとした空港ロビーを見回して怪しい胸騒ぎ。それにしても人っ子一人ロビーにいない!? まあこの辺で何かが起こったことを知るよね普通。で、
(ここは何処?)
と念のために建物の外に出て、まあ看板というか表札というか、ここはここですよと書いてある文字に目を通したら[Ju・・au International Airport]と読める。Juの後ろの・・は文字が剥落している。
(えっ、えっ、えっ? Ju・・au…いずれにしてもフェアバンクスじゃないよな……あっJune Au、ジュノーだ?)
そう、目的地のフェアバンクスでなくはるか手前、ここはジュノーだったのです!
事の真相は飛行機の部品が脱落し、ずいぶん手前の空港に不時着したらしいんだなこれが。そのアナウンスはあったらしいのだが英語カラッキシのあたしらは理解せず外に出てしまった次第。しかし周りのアラスカンはあわてず騒がず文句も言わない、いたって冷静というか和やかというか『ま、よくある事さ』てな感じ、いやあ感心してしまいました。てなことなのだが、英語のカラッキシのあたしらにこの辺のことがどうしてわかったかというと、今はケータイという便利なものがあるんですよね。目的地のガイドに電話をかけて、空港職員と代わってもらい、事情を聴いてからまた改めてガイドと代わり、事情を理解したということで、こんな手間を掛けなくたって小さな辞書一つあればなんとかなったんだけど、まあここには何度も来ているという慣れが、辞書一つ持たないというもの事をナメた行動に走らせたんだね。物事をナメルって諸悪の根源だよね。
とそんなこんなのアラスカ話、少し続きます。
スーパーで出会った、ごくごく普通のアラスカンの方々、ことほど左様にアラスカンは体形などほとんど気にしません。あたしらもこうありたいのですが、日本人は体質的に太ると何らかの病気を呼びやすいらしいですね。