『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の公開を記念して、6月23日(水)にスタッフトークイベントが実施されました。
本イベントには演出の原英和、撮影監督の脇顯太朗、制作デスクの岩下成美、そして司会を務める本作のプロデューサー仲寿和が登壇。3人が本作の『絵作り・演出』を中心に、映像ができあがるまでの過程に込められた、思いや技術を語り合いました。
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まずはじめに、プロデューサーの仲が、前回の音楽スタッフトークイベント時の小形同様、本作の冒頭にも出てくるハイジャック犯のカボチャマスクをかぶって登場し、会場を沸かせてスタート。
始めに、原は「こんなに間近に作品を観てくれる人がいるのが、初めてなので感動です。」、脇は「最近は、ひたすらオンラインでのイベント続きだったので、目の前にお客さんがいる状態で話すのが楽しみです。」と感激の様子で挨拶を述べた。
すると、司会の仲は本イベントの来場者たちに、挙手制で、本作の鑑賞回数アンケートを行った。
結果はなんと、ほとんどの人が3回目以上という回答に手を挙げたのだ。会場は称賛の雰囲気に包まれ、そんな何度も観たくなる本作の制作裏話をたっぷりと語ってもらった。
まず、村瀬修功監督と一緒に仕事をした感想を聞かれ、原は「村瀬監督は、孤高のクリエーターという印象です。目を見て話してくれるのに2か月かかりました(笑)。根が優しいので、仲良くなると沢山話してくれます。自然に要求がエスカレートしていくこともありましたが(笑)。キャラクターの心情など細かいものまで、懇切丁寧に教えてくれます。」と述べ、脇は「自分は村瀬監督と初めての仕事でした。昔、村瀬監督と一緒に仕事をした先輩撮影監督さんの話を聞き、自分も同じように仕事ができるか不安でした。打ち合わせを重ねるごとに口数が増えて、打ち解けていきましたが、手ごわいなと思いました(笑)」それに続き岩下は 「非常にマイペースな方なので、答えを出すのに時間がかかって、お2人に迷惑をかけた気がするんですけど、その結果できあがったものは、皆さんご覧になったもので…そういった意味では良かったのかなと…画面作りに対するこだわりが強いので、そういうところが、監督の特徴ですね。」それに重ねるように、脇が来場者に感想を煽ると、満場一致の傑作と言っていいほどの盛大な拍手が起こった。
話は、村瀬監督の画面作りに対する要求などの話題に移り、脇は「作業にとりかかる上で、前に村瀬監督と一緒に仕事をしていた撮影監督の先輩方に話を聞くと、村瀬監督の作品は基本的に暗いのでそれをいかに見やすくするかが重要だと聞いて、過去作をいくつか観ましたが、正直暗くて戸惑いました。プロデューサーの小形さんには、あまり暗いとガンダムなのでちょっと…と言われて、それで言うとメカデザインの玄馬さんにはメカのシーンは大事なのに、何故こんなに暗いのかと、意見が食い違う場面もありました。」と、岩下は「村瀬監督はガンダムであることは意識して取り組んでくれたんですけど、玄馬さん含め、今までガンダムをやってきたクリエーターたちとはすり合わせの時間がかかりましたね。」と、制作当初を振り返った。
原は「本スタッフ陣は歴戦のプロ集団ということもあり、いろいろな意見が飛び交うので話がまとまらない期間がありました。アイデアを出すトップがキングギドラのようにそれぞれ、やりたい放題でしたね(笑)」と思い出を語った。
本作のモビルスーツの戦闘シーンは画面が暗いシーンが印象的だが、原や脇は撮影上がりの確認の際も暗くてあまりよく見えず、スクリーンでは見えるだろうと信じて作業に取り組んでいたそうだ。原が、暗室でチェックしても、なお見えないと言うほどの暗さだったという。脇は「コンポジットで作業する際も見えないので、2段階くらい明るくしてからチェックしていました。」と制作時の工夫を語り、一同賛同した。
光の工夫で言うと、原は「ペーネロペーの黄色いパーツが光るシーンがあるんですけど、我々はゼットン処理とよんでいて、あれは、村瀬監督の案を参考にブラッシュアップして作ったもので、とても綺麗に光っていて良かったなと思います。」と絶賛した。脇は、「発光処理自体の元々の素材は明るかったのですが、ペーネロペーが下りてくるシーンのミノフスキー・フライトはレイヤーを重ねると、アンナチュナルだった(違和感があった)のでカット用に調整しています。」と自身の制作に対する工夫を語り、これは本編を確認しなければならないと感じさせられた。
また、本作は3DCGのシーンや空中戦のシーンなど特徴的なところが多々ありますが、それぞれのシーンの演出について感想を聞かれると、原は「背景の2Dをどういう風に加工してなじませるか、この作品はリアリティを土台にそれをアニメに落とし込む作業でしたね。ダバオ空港のラウンジのシーンなんか背景がすごすぎて、キャラが浮いてしまうのではないかと心配しましたが、撮影さんが上手くなじませてくれました。」と美術背景の緻密さと撮影作業の重要さを語った。
脇は「処理決めや、どういう画面にするか、村瀬さんの意向と本来のガンダムの雰囲気のバランスが難しかった。コントラストなどのこだわりを何度もキャッチボールをして作成しました。」と重要なシーンへの慎重な姿勢を見せた。
トーク後半では本作の見どころの一つである、グスタフ・カール00型がメッサ―F01型に止めを刺した際に飛び散る、まるで花火のように鮮やかで緻密な火花の話に。
原は「あのシーン、本来は火花ではなく粒子が飛ぶ予定だったのが、玄馬さんが火花にしたいと言いまして…なので、中国の花火大会を参考に、どうしたら再現できるのか試行錯誤しながら作業を重ねました。そこで、村瀬監督に許可をもらって、エフェクト作画監督の金子秀一さんに相談し、迫力のあるカットに仕上げてもらいました」とのことで、このシーンは是非、注目してご覧いただきたい。
そんな中で、岩下は「こだわりの強いスタッフが多いので、いろいろな人の意見を汲み込むがため、ギリギリまで粘って完成した作品ですね。」と制作スタッフ陣の熱意と共に作り上げた熱い作品だと語った。
イベントは終盤に差し掛かり、ここで原さんが率直な感想を述べた。「正直、皆さん期待されていたと思うんですけど、評判が良いことにビックリしました。ガンダムを観たことがない人が観たいと言っていて…知識がなくても観られますかと聞いてくるんです。そこは、優しいガンダム好きの人が教えてくれるといいなと思いますが。」それに対し脇は「僕も、(観る人がわかりやすいように)わかりやすいところにディテールを集めようと画面作りに取り組んでいましたが、村瀬監督はその視線誘導を気にしていて、どちらかと言うと、舞台になる場所のリアルな光源を意識して欲しいと要望がありました。」と村瀬監督の画面作りに対するこだわりと丁寧さを語った。
と、もっとトークを聞いていたいほど盛り上がっている中、ここで時間が来てしまった。
最後の挨拶で、原は「皆様、次作も期待されていると思います。真摯に向き合って作りますので、気長に待ってもらえると嬉しいです。ありがとうございました。」と。脇は「次はいつになるのか、果たして自分の体力が続くのか…今日はありがとうございました。いやあ、話足りない…紆余曲折あった…ひとまず、本作は新しい発見があると思うので、何度も観てください。ありがとうございました。」と話し足りない様子で挨拶をし、岩下は「脇さんの言うように、観るたびに、新しい発見があると思うので、次回作まで何度も観て、お待ちいただけたらなと思います。ありがとうございました。」と、3人とも次回の制作に意気込みイベントを締めくくった。