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2018.09.25

【第16回】サン娘 ~Girl's Battle Bootlog セカンドシーズン

三章④

 一二三の背後に、誰かが降り立った。
 ツインテールの髪をなびかせた少女が、二つのエッグから鉄腕を出現させる。両手に三叉の刀が握られており、その切っ先を――
 一二三の背中に突き刺した。

「バイバイ……ちびみ」

 一二三の胸元から切っ先が突き出る。
 最後の力で背後の少女を振り返り、その名を呟いた。

「楓……ちん……?」

 楓がザンボットグラップを引き抜くと、一二三の体が力なく倒れた。
 途端に一二三の手足が光となって霧散し、その光が楓に吸い込まれていく。

「これがあんたの力なのね……」

 全身に充溢する力を確かめるように、楓が拳を握る。

「は……はははっ! 桁違いじゃない! 生徒会長はいらないけど、こいつはもらっていくわね! ちびみ! ははははははっ!」

 楓が笑う。
 その姿をまあちは呆然と眺めていた。
 どうしてここに楓ちゃんがいるんだろう。それに今、一二三先輩を――

「ワケが分からないって顔してるわね、まあち。でも、私は初めからこうするつもりだった。そのためにあんたたちと別行動を取ってたの。この、最大で唯一のチャンスを掴むために」
「な、なんのためにこんな……」
「決まってるでしょ? 私が勝利者になるためよ。勝って、全てを手に入れるためよ。……そうよね、LAY!」
「え……?」

 楓の呼び声に応えるように、空間が湾曲し、宙に穴が穿たれた。
 その穴の中から現れる人影――黒いレイ。

「っ!」

 黒レイは艶然と微笑み、

「ええ。そうよ、楓。勝者こそが全てを手に入れる。それがSUN-DRIVE。……でも」

 黒レイが、まあちと静流、気絶した栞を見て、

「まだ三人、残ってるわ」
「……ええ。分かってる」

 楓が倒れた栞へと近づいていく。
 その言葉の通りなら――栞のSUN-DRIVEを奪うために。

「……前からヒドイ性格だとは思ってたけど、とことん見下げた人ね」

 楓の前に静流が立ち塞がった。
 ヘビィマシンガン改の銃口を楓に向け、

「躊躇なく知り合いを手に掛けたばかりか、私たちに手を出そうとするなんて最低ね。貴方にどんな事情があるかなんて知らないし、興味もないけど……一つ確かなことは、貴方は人づきあいの才能が皆無な『ボッチキャラ』ってこと」
「私は、自分で『友達』を選んでるだけよ。誰にでも心を開くような、安っぽい奴らとは違うの」
「ボッチキャラの言い訳の常套句ね」
「『元ボッチ』が言ってると思うと重みが違うわね。聞いたわよ。中学時代にまあちと出会うまでは、友達いなかったんでしょ?」
「ええ。そうよ。私は一人だった。……でも、今は違う。私にはまあちゃんがいる。栞がいる。大事な……友達がいる」
「…………」
「妥協に妥協を重ねて、時には貴方もそう思ってあげてもいいかもと考えたけど……やっぱり却下ね。貴方は友人にするには余りにも愚かで……不器用すぎる」
「っ……」
「前とは立場が逆ね。あの時は、貴方が私を殴り飛ばそうと勝負を挑んできた。今度は私が、この拳で、貴方の横っ面を殴り飛ばしてやるわ……!」

 静流がヘビィマシンガン改を――思い切り投げつけた。
 予想外に投擲された銃を、けれどザンボットのDアームが事も無げに弾く。
 静流は、その間にローラーダッシュで間合いを詰め、アームパンチを放った。

「……馬鹿ね。ちびみを食らったあたしのパワーはあいつと同等よ。あいつにさえ効かなかった技が、あたしに効くわけないでしょ」

 アームパンチを放ったスコープドッグのDアームの拳に切れ目が入る。切れ目はそのまま上腕部を通って肩まで伸び、Dアームが真っ二つに引き裂かされた。
 Dアームを切断した楓のザンボットグラップの切っ先が翻り、そのまま静流の胸を突き刺す。

「……っ!」
「前とは立場だけじゃなく、結果も逆になったわね。さよなら……静流」

 静流は胸を突き刺されながらも、最後まで不敵な笑みを浮かべ、光となって消えていった。
 その光もまた楓に吸収されていく。

「しずちゃんッ!」

 まあちの悲痛な叫び声を背に、楓が栞へと歩み寄る。
 倒れた栞へとザンボットグラップの切っ先を向けると、

「楓……さん……」

 栞がゆっくりと目を開いた。

「起きてたのね」
「ええ……お話は聞いていましたわ。私のSUN-DRIVEが……欲しいのですね」
「そうよ」
「一つだけ……約束して欲しいことがありますわ……」
「……いいわ」

 しゃがみ込み、栞の口元に耳を近づける。
 栞が楓に何かを囁くと、ニコリと微笑み、

「必ずですわよ……?」
「……分かったわ」

 頷くと同時に、ザンボットグラップで栞の胸を突き刺した。
 光となり、楓へと吸収されていく栞。

「最後は、あんたよ……まあち」

 楓は立ち上がると、まあちを見て、

「あたしは勝って、全てを手に入れる」
「全てって……」

 かつて黒レイが言っていた。最後に残ったSUN-DRIVERには『素敵なモノ』が贈られると。

「まあち……SUN-DRIVEのシステムを構築してるのは、ERINUSSよ。私たちはこうしてる今もERINUSSと繋がってる。SUN-DRIVEの勝負というのはね……つまるところ、ERINUSSとの接続権を賭けた戦いなの」
「ERINUSSとの接続権……?」
「相手に勝利し、その接続権を奪うことで、より多くのデータをERINUSSから取得できる。そして、全てのSUN-DRIVEを倒した者だけが、ERINUSSを独占的に使用することができるわ。ERINUSSはただの管理用ソフトじゃない。PDを通して、人体にまで影響を及ぼす」
「もしかして……」

 瀬里華から聞いた言葉が蘇る。
 ERINUSS内に存在する『学習プログラム』。それを用いれば、あらゆる分野での『才能』が手に入ると。
 そして、楓は一度それを不正に入手しようとして、失敗した。

「もし、神月さんがもう一度同じことをしようとしているなら、貴方が彼女を止めてあげて」

 それが……今なのか。

「それが楓ちゃんの『どうしても叶えたいこと』なんだね……?」
「ええ……そうよ。あたしは、あたしの目的を叶えるわ。まあち……あんたを倒してでもね!」

 楓が疾走し、ザンボットグラップを突き出す。
 その切っ先が胸を貫く間も、まあちは動こうとしなかった。
 楓は困惑と悲痛の表情を浮かべ、

「どうして……どうしてそんな顔が出来るのよ、あんたは……」

 まあちは微笑わらっていた。

「だって……楓ちゃんは友達だから」
「そんなの……理由になってないわよ……」

 楓の絞り出すような声に、

「そう……そうかもね……でも、これが私だから」

 まあちは困ったような笑みを浮かべ、、光となって消えていった。 霧散した光が楓に吸い込まれていく。

「……終わったみたいね。おめでとう、楓。これで貴方が勝者よ」

 祝いの言葉を述べながら、黒レイが楓の前に立つ。

「貴方の望むものを与えましょう。あらゆる才能を」

 人の欲望を叶える神の如き笑みを浮かべ、片手を差し出した。
 楓がその手を取ると、繋がり合った掌を通して、黒レイから黒い光が流れ込んでくる。
 楓は全身に黒い光を纏いながら、

「一つ言っておくわ……。最初にあんたをERINUSSから起こしたのはあたしよ……LAY」
「……え?」

 黒レイの顔に、初めて驚きの表情が浮かんだ。

(つづく)

著者:金田一秋良

イラスト:射尾卓弥

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