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2022.12.26

サンライズワールド クリエイターインタビュー 第13回
『疾風! アイアンリーガー』監督 アミノテツロ(後編)

サンライズ作品のキーパーソンとなったスタッフに関わった作品の思い出を伺うクリエイターインタビュー。第13回のゲストは、来年で30周年を迎える『疾風! アイアンリーガー』の監督を務めたアミノテツロさん。後編では『疾風!アイアンリーガー』の制作裏バナシにスポットを当てて、作品に込めた思いやキャラクターメイキング、ストーリー構成のこだわりなどを伺った。


――ストーリーもバラエティ豊かで、それこそサッカーから始まって、野球を経て、いろんなスポーツに挑んでいく。その面白さもありましたね。

アミノ わりと最初から割り切って、やっていった感じですね。メインメンバーもはみ出しもので、いわゆる『七人の侍』とか『荒野の七人』とかいろいろあるんですが、それってドロップアウトした人たちが集まって、一丸になってやるみたいなところにカタルシスがあるのかなと思っていて。だから、全員がサッカーの格好をしていないほうが絶対にいいわけなんです。だから、そういう意味でもちょうどいい味わいを出せたなと思いますね。

――各リーガーの話なども幅広く掘り下げられていますね。

アミノ 空手リーガーであることに気付かなかったリュウケンが頑張るというような、変な話を平気でやれるところが、この作品の良さだという気がします。

――物語は前半が仲間集め、中盤はリーグ優勝編という流れになっていますね。

アミノ それも、王道ではあるんですが、それをちょっと変なキャラで極めてみたかった感じですよね。ギャグものにはするつもりは無かったんですが、結構コミカルな展開にはしていて。だけど、それ以上に熱を持てるシーンが多くて。さらに実生活だったら「これは絶対におかしいよね」ということも平気でやるし、内容もわりと明るい感じにはできたんじゃないかと思っています。

――展開としても、敵だったゴールド3兄弟が、シルバーキャッスルと戦ううちにフェアプレーに目覚めて、「きちんと戦った方が熱くなれる」という流れも盛り上がるポイントでしたが、そういう部分を描きたかったということでしょうか?

アミノ 「心」とか「魂」という部分なんですが、その辺りのテーマにこだわりがありまして。あと、もうひとつはギロチという敵の大ボスですよね。悪徳業者として登場した悪い奴なんですが、彼が最終的に改心するという流れも、僕は最初から決めていたんです。脚本の打ち合わせをする中で、ちょこちょことそういう展開の話をしていて、シリーズ構成を担当した五武冬史さんから「最終的に悪の親玉が改心するなんていうのは見たことがない」と褒め言葉として言われて。だから良かったと思いますね。

――熱い試合を見せることで、ギロチもラフプレーで得る自分たちの利益よりも、フェアプレーの試合を見る方が楽しめるというのを理解していく。そこに、勝負での勝ち負けとは違うカタルシスがありました。

アミノ 僕が避けたかったのは「悪い奴をやっつけて、終わり」という展開だったんです。そういう作品はいっぱいあると思いますし、それはそれで王道だと思いますが、僕自身はそれを見てもあまりスッキリしないんです。それはなぜかと言えば、例えば映画だと悪役を立てるのにこれでもかというくらい、悪い奴を悪く描く。これは、映画の作法としては当たり前なんですが、それだけ悪くしておいてやっつけたからいいだろうという手には、僕は騙されない。だから、そこは目指したくないというのが最初からありましたね。行動に影響されて考え方が変わるというか、性根が変わるみたいなところをやりたいという思いを持っていました。

――結果的に、未来が変わって、フェアプレーを楽しむ新しいリーグの世界が広がって行くといいよねという終わり方にはそういう思いがあったわけですね。

アミノ 物語としては、ツッコミ所としては、戦場ではまだロボットたちが戦い続けているから、全部が解決したわけではないんですが、「今、このくくりの中では上手くいったでしょ?」と、そういうところにはしたかったんです。「こういう道もあるでしょ」というものを示したかったんです。

――リーガーたちのデザインに関してはどのような感想を持たれていますか?

アミノ 大河原邦男さんの描かれたデザインをキャクラーデザインの二宮常雄さんがキャラクター的な方向でリライトしているんですよね。その結果、表情が出るようになったし、お芝居もできるようになった。二宮さんは当時から大ベテランの方でしたから、発想がアニメ的で、表情の崩し方とかが出来上がっていて。それがすごく良かったと思います。例えば、ゴールド三兄弟のゴールドフットの頬傷は、最初のデザインでは無いんですが、「こいつは悪役です」とオファーすると、「悪役は傷だよ」みたいな、そういう発想で表現してくれる。それがむしろ効果的に働いた感じはしますね。

――あと、やはりリーガーの大きさが結構大きいのは、最初見た時は驚きました。あの大きさはどのように決まったのでしょうか?

アミノ あれも二宮さんですね。二宮さんが子どもたちとロボットのスケッチを描いてきたんです。ロボットが子どもを肩に乗せていたんですが、それを見て「これだな」という気がして。いわゆるあこがれの存在というか、頼りになる存在という感じにした方がいいんじゃないかということで、決めました。それまではあまり大きさのことは考えてなかったんじゃないかな。もし、身長が小さい感じだったら、また作風が違っていたと思いますね。当時、フジテレビで『ウゴウゴ・ルーガ』という作品がやっていて、そこに頭の大きいトマトさんというキャラが出ていたんです。最初にあの大きさを見せたらみんな驚いていたので、まずキャラは掴めたのかなと。ただ、それまでずっとサンライズのメカものを見てきた人には衝撃だったと思いますが(笑)

――名前が何度か出ていますが、ゴールド三兄弟は、人気がすごく出ましたね。

アミノ ロボットで三兄弟というのは冷静に考えるとおかしいんですが、ロボットだけど何かこう血の結束みたいなものがあって、他のチームメンバーとは違うよと。そういうことができたのかなと思いますね。人気に関しては、52本をやっていく中で、自然にそうなっていったんです。「こういうキャラクターが受けるのかな?」と気が向く感じはありましたね。

――その辺りは狙ってというよりは、長いストーリーだからこそ、だんだん育ったという感じでしょうか?

アミノ ある程度の流れは考えていたと思うけど、最初からぎっちりやろうとは思っていなかったですね。やっぱり、敵として描き始めて、だけど人情が出てきてみたいな感じには、やはり52本やる中で育っていったという。決して計画どおりということでもないです。

――一方で、主人公キャラに関してはどのように考えていたのでしょうか?

アミノ 表現的にはマグナムエースとマッハウインディのダブルヒーローだと思うんです。最初にもらったデザインは野球をベースにしたものがメインだったので、マッハウインディは二番目なんでしょうけど、物語はサッカーから始まりますからね。当時はJリーグも始まった頃で、「今はサッカーがいいんじゃない」という話をしていて。あの頃、野球の盛り上がりはよくわかってなくて。僕自身、あまりスポーツには詳しくないので。ただ、この作品をやる前に『あしたへフリーキック』という青春サッカーものをやっていたんです。そうした流れもあって「サッカーならできるよ」と始まった感じはありましたね。

――作品人気としては、女性ファンも多いですが、制作当時はその辺りは意識されていますたか?

アミノ 当時の実感としては、そんなに無かったんですが、女性が見ているというのは何となくスタジオにも届いてきたのはあります。でも、僕としては小学生くらいにもっと見て欲しいという思いがあったので。でも、小学生からはそういうリアクションは来ないじゃないですか。だから、「見ているに違いない」と自分で硬く信じてやっていましたね。子どもの反応に関しては、コンテをかなりの本数描いてくれた西村純二さんという方に小学生くらいのお子さんがいて、「子どもが喜んでみている」とかいう情報を得る程度でしたね。劇中で、トップジョイというキャラクターが実は裏切り者だったけど、逆に敵を裏切って帰ってくるというエピソードがあったんですが、「それを見て、うちの息子が泣いたんですよ。泣かせないでください」みたいな話を聞いていたので、彼も喜んでやってくれていたんだと思います。

――物語は中盤で「はぐれリーガー編」になって、世界の各地を回ったりしますが、あの展開はどのような意図があったんでしょうか?

アミノ それまで、わりと王道的なことをやっていたので、はぐれリーガー編はなるべく自由にやりたいと思っていたんです。52話作る中で、変遷というのがあって、僕としては「旅をしたい」というのがありまして。いろんなところにいって、いろんなリーガーと出会う話をやって、最後は戻ってきてもう1回大きな大試合を作っていくストーリーにすればいいんじゃないかという思いもあって。あのまま試合をつづけるのではないという流れも「スポ根ものではない」というところなんです。

――あのまま試合が続くと、敵のインフレが続く感じになりそうですよね。

アミノ そうですね。だから、新しく敵も出すけど、基本は先にでているキャラクターを大事にしたいという思いがあったんです。

――アイアンリーガーも30周年を迎えますが、『アイアンリーガー』はアミノさんにとってどんな作品でしたか?

アミノ 作品は作りながらいろんな思いを持っているんですが、自分の中にある「やりたいこと」、「作りたいこと」、自分の中にある、言葉にできない「こんな作品を作りたいな」ということが、多分出来た作品なのかなという気がしています。いろんなところで、うまく嵌まったなと。だから思い出深いですね。スポーツに対しても興味が無くて、スポーツ観戦なんかもしない人間が作ったスポーツものですから。そんな中でも、自分の中で「これはなかなかいい作品じゃん」というものが完成してよかったなという感じはありますね。それなりに味が出た作品だと思っています。

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アミノテツロ(あみのてつろ)
1955年10月10日生まれ。千葉県出身。アニメーション監督、演出、脚本家。
銀河漂流バイファム』『超力ロボガラット』などの演出を経て、『バツ&テリー』で監督デビュー。『SDガンダム』『疾風!アイアンリーガー』『DTエイトロン』『クラッシュギアNitro』などの監督を務める。


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